※ネタバレをしないように書いています。
過ごした時間は愛おしくて
情報
作者:佐野徹夜
イラスト:loundraw
ざっくりあらすじ
どこか冷めた高校生 ”岡田卓也” は不治の病《発光病》で入院している ”渡良瀬まみず” の病院にクラスメイトの寄せ書きを届けるように、クラスメイト ”香山彰” に頼まれて、仕方なく学校帰り病室へと向かう。
そんなある日、彼女の大切にしているというスノードームをうっかり壊してしまう。
そして、卓也はその罪滅ぼしのために、彼女が死ぬ前にしたいことを代わりにやり遂げるという約束を交わす。
感想などなど
これは所謂難病系の作品というやつだ。不治の病に男と女。しかし、そう単純な話ではない。
主人公はどこか冷めた男子高校生だ。何か達観したような、はたまた諦めたかのような。クラスでもどちらかと言えば目立たない人間である。
そんな彼の背景には、数年前、車に轢かれて死んだ姉の影がちらつく。そして、彼の恩人であるという香山彰。彼の過去には何かがあることが常につきまとう。
そんな何かしらの過去を抱えた彼が、《発光病》にかかっている渡良瀬まみず、ただ一人のために奮闘する。その理由は彼女が大切にしているというスノードームを壊してしまったことに対するただの罪滅ぼし……最初はそれだけだったはずなのだろう。
彼女と会話を重ねていく内に、ただ達観しているだけの彼の心情が激しく揺れ動く。その揺れ動きには家族や過去が深く関わってくる。何故自分は達観しているのか? その理由と向き合っていく。
彼が彼女に抱く感情の正体は、一言で説明できる物ではない。ただの恋愛感情だけでは、この物語の結末にたどり着かないだろう。
複雑な心情を抱いているのは彼だけではない。外に出ることも叶わない渡良瀬まみずだって、同様にいろいろなことを考えている。
彼女は余命宣告を受けている、いつ死んでもおかしくない。そんな彼女が本当に望んでいるものとは何なのか。
その答えは最期に描かれる。彼と彼女の最期の会話から結末で、一気に感動の波が押し寄せてくる。あまりにも美しい最期だった。
悲しいはずなのに、愛おしい。そんな物語です。映画化も決定したそうです。どうなるか分かりませんが、最期の会話シーンの雰囲気をきっちり出してくれることを期待しています。