工大生のメモ帳

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月光 感想

※ネタバレを含まないように書いています。

甘美で奇妙な恋愛模様

情報

作者:間宮夏生

イラスト:白味噌

ざっくりあらすじ

冷徹でちょっと変わった男子高校生・野々宮

ある日、クラスメイトの美人で成績優秀、ゴシップの絶えない女子高生・月森葉子のノートを拾う。そこに挟まっていたメモには、彼女には似合わない「殺しのレシピ」という見出しが踊っていた。思わず彼は持ち帰り、翌日探し物はないかを尋ねる。彼女からは「いいえ」という返答。その数日後、彼女の父親が死亡した。

感想などなど

最初に大文字で示した通り、この物語は恋愛物語である。あらすじはどっからどう見てもミステリーではあるが、物語の根幹は完璧女と変わった男子高校生の、これまた奇妙な恋愛物語となっている。

 

主人公は変人だ。物語はそんな変人である野々宮の視点で展開していく。冒頭から淡々とした、他人をどこか遠くから眺めているような語り。見た目などはいたって普通で、友達もいる。しかし彼の思考が描かれるたびに彼の異常さは際立っていく。

まぁ、彼に普通の恋愛なんて無理なのだろう。たとえ、どんなに手を差し伸べられたとしても、だ。

それこそ相手がよほどの人間でもない限り。

 

ヒロインの立場になるだろう月森葉子は完璧超人だ。成績だって、見た目だって、スタイルに至るすべてが完璧すぎる。

それは最早恐怖を覚えるほどであった。人間ではない何かを見ているようで。

そんな二人がつづる物語が普通の恋愛に発展するはずなどないわけで、背景に描かれる父親の死。

父親は一見事故死のように見え、警察もそのように処理していた。勿論家族に殺されるという可能性も考慮していただろうが、一番大切な動機がない。

主人公にしてもそうだろう。「殺しのレシピ」を見つけて、その通りに人が死んだとしても、事件自体はどうみても事故死であるし動機の見当もつかない。

それに「殺しのレシピ」を見てしまったはずの主人公に対する月森葉子の行動が何よりも謎となって立ちふさがる。秘密を知ってしまった相手を犯人が放っておくだろうか? もうすでに一人殺しているのだから、ためらいもないだろうに。

謎が謎を呼ぶ展開。それらの謎が回収されていく様が奇麗に、華麗に描かれているシーンは深く記憶に刻まれていく。

 

この物語は一つの……いや、数多くの謎によってつながった二人の恋模様をつづった物語だ。

月光 (電撃文庫)

月光 (電撃文庫)