工大生のメモ帳

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スカートのなかのひみつ。 感想

※ネタバレをしないように書いています。

男の娘アイドル!?

情報

作者:宮入裕昂

イラスト:焦茶

ざっくりあらすじ

女装が趣味の天野翔は、GWの街でクラスメイト――八坂幸喜真に出会う。彼はその名の通り好奇心の塊のような男だった。

周りに隠し続けた女装趣味を、八坂は「せっかく可愛いのにもったいない」と言い、学校に女装してくるように持ちかける。「絶対に嫌だ」と言いながら、いつしか天野翔は・・・・・・。

広瀬怜は学校へ向かう途中、とある女子高生のスカートの中を目撃してしまう。そこから始まる奇妙な日常。

病院へモンスターを見に行き、時価八千万円のタイヤを盗みにひた走る。

彼も彼女もスカートの中に秘密を隠していた。

感想などなど

おしゃれな表紙に惹かれて購入しました今回の作品。ジャンルとしては学園群像劇といったところでしょうか。二人の登場人物、女装趣味の男 ”天野翔” と平凡な高校生 ”広瀬怜” の二人の視点が、交互に移りゆきながら展開されていきます。

時間軸と場面が少し分かりにくいのが難点でしょうか。しかし別にミステリーというわけでもありませんし、それほど複雑怪奇というわけでもありません。何となくの理解で作品は楽しめるかと思います。

さて、この作品を読んだ人ならば、かならず好きになってしまう登場人物がいます。

八坂幸喜真・・・・・・やさかこうきしん。名は体を表すと言わんばかりに、彼は好奇心に手足が生えたような人間でした。

例えば、彼の夢は「サンタになって空を飛ぶこと」で、留年生である彼が留年した理由は「好きになった女の子の学年が一つ下だったから」・・・・・・あれ? 好奇心の塊であるってことを説明したかったんだけど・・・・・・。

まぁ、彼は行動が読めない人間だということが分かっていただけたでしょう。普通の人であれば、絶対にやろうともしないことを平然とやってのけるわけです。

ここで注目して貰いたいのは彼が留年する原因となった好きな人の存在。彼のような熱い人間が、留年してまでもお近づきになりたいと思う女性とは一体どんな人物なのでしょうか。

そして彼はお近づきになることができたのでしょうか。

ここは作品を読んでのお楽しみと言うことで。

 

八坂幸喜真は基本的に天野翔側の視点で登場し、天野翔と共に行動していきます。八坂の行動と熱意に押され、可愛すぎる女装男子として自信と自由を手に入れていく青春物語が進んでいきます。

そんな物語とは打って変わって、広瀬怜の物語は謎があまりに多い。

学校へ向かう道中。普通ならば黙って横を通りすげて、会話なんてすることもなかっただろう相手に ”スカートの中を見てしまった” がために声をかけられます。その相手が市でたった一人選ばれる ”白蛇姫” こと丸井宴花。

白蛇姫とは市で開催される一番大きな祭りの花形的存在であって、ミス〇〇市的存在といったところでしょうか。美しさもさることながら、踊ったりする身体能力も評価の対象だったり、応募者が千人単位で来るというかなり狭き門であるようです。

そんな彼女に連れられて、向かう先は病院だったり、泥棒だったり・・・・・・。彼女の真意なんて一切分からぬまま、物語は進行していきます。

背後には怪しいストーカーの影がうごめき、街にはシャーリーという女子高生ばかり狙う痴漢が出没。慌ただしく物語は動いていきます。

 

さてそんな一見何も関係もなさそうな二つの物語が混じり合って、一つの恋愛物語が姿を見せます。誰かのために一生懸命に生きる男と、将来に希望を抱けない女。二人の物語が始まって終わっていきます。

最初に青春群像劇と書いたかも知れませんが、これは恋愛小説です。サンタは空を飛ぶのです。

群像劇特有の物語が収束していく過程は一気読み確実間違いなしでしょう。