工大生のメモ帳

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こうして彼は屋上を燃やすことにした 感想

※ネタバレをしないように書いています。

死にたいと願う

情報

作者:カミツキレイニー

イラスト:文倉十

ざっくりあらすじ

彼氏に振られた三浦加奈は、死のうと決意して向かった屋上で「カカシ」と名乗る不思議な少女、毒舌の「ブリキ」、ニコニコ顔の「ライオン」と出会う。そして、ライオンは言う。

「どうせ死ぬなら、復讐してからしにませんか?」

そうして彼女は「ドロシー」となった。

感想などなど

「オズの魔法使い」という作品を御存知だろうか。ちなみにブログ主は遠い昔に既読済みである。作中に「オズの魔法使い」の小ネタがかなり散りばめられているが、意外と覚えているものだと感慨深いものがある。「オズの魔法使い」を読んでいた方が理解が進むことは間違いないが、読んでいなくとも理解においての問題はないだろう。

「オズの魔法使い」のあらすじを超ざっくりにまとめると、大竜巻によって家ごと運ばれた「ドロシー」が着いた見知らぬ土地にて、心をなくした「ブリキ」のきこりと、勇気のない臆病な「ライオン」と、脳みそのない「かかし」に出会う。故郷カンザスに帰りたい「ドロシー」は、どんな願いも叶えてくれるというオズ大王に会うため、エメラルドの都を目指すというもの。

本作は、あらすじにて示した通り、「オズの魔法使い」のキャラクターの名前を冠した高校生達によって紡がれる青春ジュナイブルとなっている。

 

本作の主人公である「ドロシー」は大好きな恋人に振られて、学校の屋上から飛び降りようとするほどに絶望していた女子高生だ。そんな冒頭だけ聞いて、良い印象を抱くという読者は少ないだろうが、最後まで読み進めていけば彼女のことが好きになっている。不思議なものだ。

ちなみに原作における「ドロシー」は、子供特有の遠慮無いドストレートな発言や、純粋な子供らしい優しさが特徴的である。

そんな彼女が飛び降りようとしている横で、金網をガシャン、ガシャンと蹴っていた人形のように可愛らしい女子高生が「かかし」である。どこまでも脳天気に明るいながら、「私に頭が悪いの」と自虐するギャップが印象に残る。

原作における「ドロシー」は頭の中にわらが詰まっていて脳みそがない。周囲に『馬鹿』と言われるも、脳みそがないために頭を良くすることができないと嘆く。そんな状況を変えるために、「ドロシー」と共に脳みそを貰いに、エメラルドの都を目指す旅に同行するのだ。

飛び降りようとする「ドロシー」に対して、「突き落とせ、邪魔だ」と冷たく言い放ち、ミイラ男のように布を身体にまいた姿で現れるのが「ブリキ」である。口数が極端に少なく、たまに話すと思えば毒舌。「ドロシー」からの印象も最悪である。

原作では心を貰うために旅に同行する、かなり礼儀正しい男だった。長年放置され錆び付いた身体で登場するのが印象的だ。

最後に昼寝と空を眺めるのが好きな「ライオン」。勇気がなく、怒ることができない男子高校生だ。個人的に本作で一番悲惨な目に遭っていると思うのだが、怒ることも責めるシーンが一度もない。それが良いことか、悪いことは置いておいて。

原作においても百獣の王らしい外観でありながら「人間に会うのも怖い」「戦いを挑まれたら即座に逃げ出すね」と言うほどの臆病者。しかし、心優しき猛獣として描かれていた。個人的に一番好きかも知れない。

そんな高校生達が毎日のように屋上に集っていた。その理由を尋ねてみれば、どうやら「復讐のため」であるらしい。「死ぬならば、復讐してから」と言う彼らの言葉の真意とは何か? 復讐する相手とは誰か?

 

「ライオン」「かかし」「ブリキ」が抱える闇に「ドロシー」が触れて、解決していく短編形式の物語となっている。

ここで理解しないといけないのは、「死ぬならば、復讐してから」という言葉だ。あまり語り過ぎてもネタバレとなるので詳細は書かない……正直、めっちゃ語りたい。

「ライオン」と呼ばれる男子高校生は勇気を欲し、「かかし」と呼ばれる女子高生は自らを無能と自虐した。口の悪い男子高校生は「こころ」がないと孤独を選んだ。

それぞれの抱える問題を、高校生特有の青臭さとともに、綺麗に流れるように解決されていく。その物語としての構成は見事と言わざるを得ない。

原作では……いや、辞めておこう。とにかく「オズの魔法使い」で登場人物達は、怖い怖い西の魔女と戦った。脳みそがなくても、こころがなくても、勇気がなくても。

 

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