工大生のメモ帳

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雨の日のアイリス 感想

※ネタバレをしないように書いています。

これは、彼女の願いの全て

情報

作者:松山剛

イラスト:ヒラサト

ざっくりあらすじ

ロボット研究者であるアンヴレラ博士のもとにいた家政婦ロボットであったアイリスの幸せな日常は、博士が巻き込まれた事故を境にして一変する。

感想などなど

ロボットとはチェコ語で『強制労働』を意味する『robota(ロボータ)』が語源であるようです。人間ができない、やりたくないような仕事を行う彼らロボットの運命は、生まれながらにして奴隷であり、人のために尽くすことこそが存在意義であるように思われます。

さて、本作の主人公であるアイリス・レイン・アンヴレラもロボットです。

是非とも表紙を見て下さい。肌は冷たい金属で覆われてはおらず、可愛らしく綺麗なメイド服を着ており、目もヌメッとしたガラスのようには見えません。澄んで綺麗な目に見えます。一見すれば、どうみても人間です。事実、彼女をすれ違い様に見かけた人々はロボットであることに気付かないほどでした。よく見れば、耳当てのような器具を付けており、これが一見すれば人にしかロボットを見分ける唯一のしかけです。

そんな彼女のご主人様は、ロボット研究者であるアンヴレラ博士です。長い黒髪に、高い身長。銀縁の眼鏡が似合う美しい女性です。広い屋敷でアイリスとアンヴレラ博士の二人で生活しています。物語の第一章では、そんな二人の幸せな日常が描かれていました。

毎日のように掃除に洗濯、炊事と家事をこなすアイリスと、そんな彼女を労りながら、楽しい会話をする二人。しがないメイドロボットであるアイリスに対して、ロボット工学者である彼女は教育を施します。「ロボットについて」ロボット工学者としてありとあらゆることを。

アンヴレラ博士からアイリスに対する感情には、明らかな愛がありました。大切に、大切に、大切に扱われているアイリスは、それに応えようと毎日、毎日、毎日……自分のできることをするのです。

髪を撫でられ至福を感じるアイリス。メンテナンスで博士が彼女の身体に触れる時、恥じらうアイリス。ちょっぴりSな博士はアイリスを言葉で弄る少し意地悪な一面もあるけれど、そのシーンも笑顔に溢れた。

幸せな日々、幸せな日常。

それが壊れるのは一瞬だった。その落差は絶望的である。

 

アンヴレラ博士が研究していたのは、ロボットの暴走についてだった。どうやら原因が分からずに人を襲ったりするロボットが、社会的に問題となっていたらしく、それの解決を目指していたようだ。

その研究の一環として、暴走したロボットの司法解剖をしようとした時のことだった。機能を停止したはずのロボットが動き出し、博士の腹部を貫いたのだ。

最期の瞬間、博士はアイリスと自身のツーショット写真は入れられたネックレスを握りしめて死んだ。そう、アイリスは最期の最期まで愛されて死んだのだ。アイリスは涙を流せない。一人きりになった屋敷で、無常に時間が過ぎていく中で座っていることしかできなかった。

そんな彼女を更に襲ってくる悲劇。所有者である博士がいなくなった……つまり法律的には国の帰属になるらしく、公的な機関であるロボット管理局に連行されるアイリス。その先で、彼女は解体されることとなった。

博士が見立ててくれたメイド服は剥がされ、男達に身体を触られ、腕や足、首までもが胴体から外される。髪を引っこ抜かれた頭部は、ベルトコンベアを他の金属の共に流されていく。

そして彼女が目を覚ました時、彼女の肌は人の外観を大きく外れた金属となり、可愛らしい容姿はロボットらしく角張ったものとなっていた。危険な工事現場にて働く奴隷ロボットとしての生活の始まりである。

 

作中、アイリスは生きるということについて度々考える。

どうして生きているのか? 何のために生きているのか?

最期の最期まで愛された彼女は、工事現場で捨てられたロボットや戦場で人を殺し続けたロボットに出会う。そのロボット達は、何のために生きているのだろう。いや、元より生きているのだろうか。

ごめんね、アイリス。人でさえ、生きている理由なんて分からない。そんなこと考えようとすらしないんだよ。

それでもアイリスは考える。彼女……いや、彼女の周りのロボット達も生きることを考え、自分なりの結論というものを出している。その答えは是非とも自分の目で確認して欲しい。

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