※ネタバレをしないように書いています。
暗黒ライトノベルの始祖にして最終作
情報
作者:浅井ラボ
イラスト:宮城
ざっくりあらすじ
咒式を使う攻性咒式士であるギギナとガユスの二人は、巨大咒式企業ラズエル社から、反政府組織の人質となったレメディウス博士と巨額の身代金の交換立ち会いを依頼される。一方エルダナの街では〈禍つ式〉による連続殺人事件が発生していた。
感想などなど
自分の部下の命も、〈竜〉の恨みですら利用するモルディーンの狂気とも思える作戦に巻き込まれたギギナとガユス。世界を自身の頭脳だけを駆使して変えようとする様は圧巻でした。
結局の所、モルディーンの勝ち逃げと言っていいでしょう。最初から最後まで、ほぼモルディーンの計画通りに進んでいき、ギギナとガユスも駒の一つに過ぎなかったのですから。
そして迎える第二巻。
相も変わらず文章の複雑さはライトノベルの中でも群を抜いています。第三階位とか第二階位とか色々な単語が飛び交う戦闘シーンは、まだ慣れるのに時間がかかりそうです。
今回は『レメディウス博士の誘拐事件』と『街に頻繁に現れるようになった〈禍つ式〉による殺人事件』の二つが交錯していく物語になっています。第一巻同様、ストーリーとしてはあまり複雑ではありません。簡単に紐解くためのヒントをまとめておきましょう。
まずは『レメディウス博士の誘拐事件』です。誘拐された博士は、巨大咒式企業ラズエル社にて働き、数多くの咒式武具を制作し続けた天才です。どれくらい天才かと言えば、チェルス将棋と呼ばれる将棋のようなボードゲームの盤面を全て記憶できるかもしれないと言われる程です。
……例えが下手過ぎる? いえいえ、『され竜』の世界ではこのような例えで驚愕すののですから、われわれ読者の理解力の問題でしょう。
そんな天才は大企業に数多くの貢献をしてきました。彼が誘拐されたとなれば、上層部も黙ってはいられません。交渉を重ねることで、二十億イェンと引き換えに博士が帰されることが分かりました。おそらくですが日本円と同じように考えていいと思います。
しかし、誘拐した犯人達が金だけ奪って逃げていくことも考えられます。誰か護衛を付ける必要があるでしょう。そこで白羽の矢が立ったのが、ギギナとガユスだった訳です。普通に引き渡しが行われれば楽な仕事だったのですが、残念なことに誘拐犯達は最初から皆殺しにする気満々で、引き渡し場所にやって来たのです。
そこで初顔合わせな強敵の名は、〈砂礫の人食い竜〉ズ・オルーであった。悲しきかな、あまりにも強すぎる。こいつとは今後のシリーズでも殺り合うことになるだろう。
続いて説明すべきは『街に頻繁に現れるようになった〈禍つ式〉による殺人事件』であろう。〈禍つ式〉とは竜とは違う悪魔のようなものだ。姿形は様々、最初に現れたのは人体を取り込んでいくことで成長するスライムのような生物であった。
どうやら次元の違う場所からやって来た高位な存在であるらしい。ギギナとガユスもかなりの苦戦を強いられる。商売敵であるランゴルキン咒式士事務所と共闘を(嫌々ながら)しなければならない程に。
これまでの煽り合い合戦のメンバーが、ギギナとガユスとランゴルキンの三人に増えてしまった。煽り合いの台詞も増量されてしまった。
そして、ただでさえきつい戦いを強いられている最中、〈禍つ式〉の中の上位存在が二人ほどひょっこりやって来る。これまで戦っていた〈禍つ式〉はただ生きる物を殺すという欲求で動いていたが、その上位存在は人語を操り、何かの目的意識を持って動いているようであった。
言わずもがな、戦闘力は他の追随を許さない。
さて、ガユス達は勝つことができるのだろうか。
今回もとんでもない黒幕がいる。しかし、誰が黒幕なのかは勘が良い人ならばすぐに分かるように思う。というか、作者としても隠す気すらなかったように思う。本作において一番追い詰められていく人が黒幕であるとだけ言っておこう。
黒幕に感づいた人は、同時に最悪な展開というものも同時に想像してしまうはずだ。その想像を遙かに超えるような悲劇が待っている。