※ネタバレをしないように書いています。
夏はただでは終わらない
情報
作者:秋山瑞人
イラスト:駒都えーじ
ざっくりあらすじ
知り合いのお姉さんに騙されて、夏休みに小さな島で過ごすことになった武田正時。その孤島はどこか奇妙であった。
感想などなど
本作は一応第一巻と銘打ってある。出版されたのは2005年で、最後には第二巻へと続くと書かれている。
しかし、このブログが投稿される2020年4月になってもなお第二巻が投稿されていない。悲しいが、本作を他人にお勧めすることはできないだろう。なにせ完結することはおよそないと思われるからだ。作者ももう書く気はないのだろう。
というか、今更こうして作品の感想を書いている時点で間違っている気がする。もしかすると、この記事が更新されたことで「もしや二巻が出るのか!」と興奮してしまう方がいるかもしれないが、そのような事実はないということだけは言っておく。
岬島という小さな島で夏の短い間だけ過ごすことになった男子中学生・武田正時。その島というのが、これまた奇妙なのだ。
奇妙ポイントそのイチ。皆が互いを『あだ名』で呼び合う。小太りの中学生はデブマンと呼ばれ、何か強いおっさんは天誅やカンフーと呼ばれ、一見するとただの悪口も混じっているように思うが、皆が皆そういう風に呼び合っているのだから、それはそういうものなのだろう。郷には入れば郷に従え、住民達は正時のあだ名を決めかねているようだが。
奇妙ポイントその二。どうにも『蟹』というものに対して過剰に反応する。すぐ近くの島――といっても船で数時間かかるようだが――そこでは蟹喰島と呼ばれ、どこか恐れられているように感じる。もう怪しさ満点である。
奇妙ポイントそのサン。正時が島に行くことになった元凶である姉は、彼に対して変わり物の首輪を与えた。それを見た時の島民達の反応が、驚きの表情を浮かべるのだ。姉よ、一体何を渡したというのだ。面倒事を増やすのが得意な身内を持つと、苦労するということを教えてくれる。
奇妙ポイントそのヨン。古代の文字や遺跡のようなものがある。
奇妙ポイントそのゴ。住まわせていただく家のお姉さんが、部屋に拳銃を所持している。
というように奇妙なポイントは挙げていくときりがない。
島の子供達は、基本的に本州のことなどを知らない。修学旅行では一応、本州の方に行くようではあるが、その程度で本州を知ったことにはならないだろう。それに島の人口はお世辞にも多くない。
だからこそ、少年がやって来たということはすぐさま島民達に知れ渡るし、あまり知ることのない話を聞こうと興味津々な顔で話しかけてくる。
本作は一応、ボーイ・ミーツ・ガールであるとうこともあり、少年と少女の関係性というものに重きが置かれている。夏休みに島で出会った少女と少しずつ仲良くなりつつ、島にある秘密というものに図らずも近づいてしまう……それを見せつけられるシーンは幻想的であり、『イリヤの空、UFOの夏』の冒頭で描かれたプールでのイリヤとの出会いを彷彿とさせる。
……まぁ、残念なことに第二巻が出てこないので、秘密というものが分かっているようで全く分かっていないのだが。あぁ、第二巻が出てこないということがあまりに悲しい。書いてくれよ、頼むから。