工大生のメモ帳

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【漫画】カグラバチ3 感想

【前:第2巻】【第1巻】【次:第3巻】

※ネタバレをしないように書いています。

信念と責任を背負う覚悟はあるか?

情報

作者:外薗健

試し読み:カグラバチ 3

ざっくりあらすじ

妖刀「真打」を回収するため、闇のオークション楽座市の運営を担う漣家と争うことになったチヒロ達。競売を開催するために命を賭して向かってくる者達に合わせて、神奈備から妖刀を回収しようとしてくる者達も加わって……。

感想などなど

妖刀「刳雲」を理解した武器商人・双城の力と、同じく妖刀「淵天」の際限を超えたチヒロの力がぶつかり合った。互いに妖刀のことを思い、それに妖刀が応えてくれたからこそ超えた限界。

二人の実力には大きな差はないように思う。双城は神奈備の対刳雲特選部隊との戦いの後で、チヒロはそもそも直前まで左腕が動かない状況で連戦続き、シャルの能力によって動かせる状態になってなければ戦いにすらなってなかったはずだ。

互いのタメ時間などを読んで読んで読んで、1秒で全てが決まる戦い。

結果、妖刀「淵天」が妖刀「刳雲」を圧し折ることで決着がついた。

 "雫天石" を理解できたと感じていた双城だったが、結局ソレは妄想に過ぎず、最期は高密度な玄力に身体が耐えきれずに死んだ。それでも、もし妖刀を使った鍛錬をちゃんと積んでいたら、もう少し彼との戦いまで時間が空いていたら、どうなるか分からなかった底知れなさがある。

この第二巻で彼を仕留めることができてよかった、そう思える決着だった。

さて第三巻では、結局双城も毘灼に使われるコマに過ぎなかったことが分かる。まぁ、変な空間に報告しに行っているシーンなど見るに、そういうことなのだろうと思っていたが、闇のオークション楽座市に妖刀「真打」を出品したという話は、双城がただ名義を貸していただけに過ぎなかったようだ。

毘灼に近づきはしたのだろうが、その影すら拝めていない状況。あの死闘によって出た犠牲と、成果が見合っていないように感じてしまう。しかし、そんなことはなかった。

第三巻の冒頭は、双城が大技を放って街を破壊しようとした際に、チヒロがその身を盾に街を守ったシーンをすぐ目の前の喫茶店から見ていた男の視点から始まる。彼にもどうやら妖術の知識は少なからずあるらしく、詳細は分からずとも、チヒロが守ってくれたということだけは理解し、彼に憧れ、彼と同じように誰かを守ろうとした。

その守ろうとした誰かというのがシャルだったりするし、シャルの代わりに連れて行かれた先で、チヒロに出会うことになるのだが、運命というのは恐ろしい話である。

 

第一巻から話に上がっている闇のオークション楽座市にて、妖刀「真打」が出品される。これを奪取することが、当面のチヒロ達の目標となる。しかし、二百年近く続く伝統と、その伝統を守るために形作られた盤石のシステムが、彼らの前に立ち塞がった。

この楽座市のことを知れば知るほど、そのシステムの凄まじさと、楽座市の屑さが詳らかにされていく。

まず如何に屑か?

この闇のオークションでは人間も出品される。ペットショップのように、小さな檻に詰め込まれた人達の絵は、読者の心を削ってくる。どうやら彼らは親に売られたり、借金の返済が出来ずに首が回らなくなったりと、とにかくそれぞれの理由があってそこにいて、人権はなかった。

国にとっての障害となり得るものを排除する神奈備は、この屑オークションに対して何も出来ていない。今回、神奈備も妖刀「真打」の奪取のために動くのだが、その方法は順当に競り勝つしかないと言っている。神奈備も妖術師の先鋭揃いなのだが、それでも無理やり力業の奪取はできないと判断した。

その結論を出させる程の楽座市のシステムとはどういったものか?

まず楽座市は漣家という妖術師一族の血筋によって守られており、漣家に生まれた者は幼少期から妖術の訓練に励み、その屈強な能力を持って楽座市の存続を命の限り守り抜くように使命が与えられている。

また人間を初めとした大量の出品物を保管している倉庫の場所など、当主以外誰も知らないらしい。事実、漣家当主の息子であるはずの、漣伯理はその場所を知らなかった。他の子供達も何も知らなかった。

この状況で、妖刀「真打」を奪取するために、チヒロもまた多くのものを賭けることとなる。このギャンブルの連続が、端から見る読者は楽しい。こういう決断ができるチヒロが好きだ。

 

漣家当主・京羅は人身売買だって何だって請け負う屑だ。

しかし屑には屑なりの芯の通った強さがあった。楽座市を絶対に維持し続けるという意地と、妖刀を相手に(例え正面切ってじゃないにしても)やり合えるだけの実力、利用できるものは全て利用する狡さ。

敵としては申し分ない。遠慮無く殺せる。

この第三巻はいわば「楽座市襲撃」の前準備、敵の情報収集、妖刀「真打」を巡っての力関係の整理……そんな内容である。誰を倒さなければいけないか、どんな問題を解決しなければいけないか……チヒロなりに結論は出たようだ。

ここまで読んで第四巻を読まないことは無理だと思われる。期待に胸膨らむ第三巻だった。

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