工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

【映画】スタンド・バイ・ミー 感想

※ネタバレをしないように書いています。

死体

情報

監督:ロブ・ライナー

脚本:レイノルド・ギデオン

   ブルース・A・エヴァンス

原作:スティーブン・キング

ざっくりあらすじ

12才の仲良し四人組は、行方不明になったとされる少年の死体を探すために、線路を遡っていく二日間の旅に出る。

感想などなど

死体を見たことはあるだろうか。幸いと言うべきか、ブログ主は葬式にて死化粧に死装束を身につけた死体しか見たことがない。人の生き死に関わるような仕事に携わっている訳ではないので、死を身近に感じるという経験もないと言って良いだろう。

本映画は死体を探しに行くだけの話である。その死体に関して、複雑怪奇なミステリ的展開がある訳ではなく、奇想天外なコペルニクス的展開がある訳でもなく、心神喪失なりかけのトラウマ的恐怖シーンがてんこ盛りということもない。

映画を見てから本記事を書くまで数日が経過している。ふと印象深いシーンを思い浮かべてみると、なんということか綺麗さっぱり死体に関する情報が脳から抜けている。悲しきかな、死体を探しに行ったはずなのに。

おそらくだが本映画においては死体が重要なのではなく、死体を探すという過程が重要なのだろう。死体を見つけたという時点で少年達の目的は達せられた。死体を見つけたからといって一攫千金を手に入れるということもないため、その後の人生が特別素晴らしいものになるということだってないのだ。

しかしながら旅の過程は心躍る冒険譚ということではない。もしも四人の少年が犬に追いかけられるシーンと、薄暗い洞窟で巨大な岩石に追いかけられるシーンを同等に楽しめる感性の持ち主であるならば、この作品は大変お勧めである。

だとすると、何を楽しんで見るべきだろう。

 

旅の道中にて、四人の考え方の差や家庭環境というものが、様々なシーンを通して描かれていく。例えば語り部である主人公のゴードンは、つい最近、超絶優秀な兄が死んだ。両親の関係性はそれが原因で劣悪となり、兄と比較してあまり優秀ではない弟……つまりは主人公であるゴードンを邪険に扱っていた。言葉の端々に棘があり、「兄ではなく弟が死ぬべきだった」という考えが台詞の端々から感じられる。これは決して行き過ぎた被害妄想ではないだろう。

ゴードンの親友であるクリストファーは、それはそれは酷い劣悪な家庭環境で過ごしているようだ。父親の酒癖の悪さに始まり、机を漁れば銃弾や拳銃が手に入る。もしかしてアメリカのご家庭には子供の触れる場所に拳銃を置いておくことが普通なのだろうか? これがカルチャーショックという奴なのかもしれない。

さらにメガネをかけたテディは、戦争に行って戦った父を尊敬している戦争狂いだ。戦争狂いというのは、どうにも命というものを賭けたがったり、会話の端々に軍隊用語が登場することを勝手にブログ主がそう呼んでいる。ある意味、四人の中で一番劣悪な環境だと言えるかもしれない。

そして四人目は少し太った少年・バーン。何を隠そう、彼が死体探しの提案者である。どうやら彼の兄は行方不明の少年の死を目撃したが、自分達が車泥棒をしたことがバレるのを恐れて通報をせずにいたらしく、そのことを話す会話を影で聞いてしまったようだ。

これで分かって貰えるかもしれないが、バーンの家庭環境もそれなりに酷い。なにせ兄は車泥棒である。映画を見ていくと、その他余罪もたんまりとありそうな御様子であった。

散々列挙してみたが、みんな酷い家庭環境だ。自身の家庭環境を省みてみると、なんと素晴らしいことかと涙ぐむ次第である。しかし、家庭環境というものは子供にとっての世界そのもので、変えようと思って変えられるものではない。子供は家庭環境を写した鏡であるかのように、少年達の思考回路を組み替えてしまう。

大人になってもその影響というものは色濃く受け続けているものだ。子供の頃の経験はいつまでも根強く残り続けるように。死体を探すというショッキングな旅を経て、何かが変わるのだろうか? 四人は本当は何を求めていたのだろうか?

四人の少年が死体を見つけるまでの過程でどのように変わっていくのか。そこが見所なのではないだろうか。

そして子供の頃のかけがえのない経験は、良いか悪いかは置いておいて、人生を決定づけてしまう。ブログ主の人生も、意識しないような幼少期の体験が元になっているのだろう。そう考えて思いを馳せるも、何一つこれといったことが思い返せないのは、あまりに空虚だ。

皆さんはどうだろう。あなたの歩む人生は、一体どんな幼少期の思い出で構成されているのだろうか。たまには考えて見てはいかがだろう。

映画を見るなら