工大生のメモ帳

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【映画】パルプ・フィクション 感想

※ネタバレをしないように書いています。

犯罪活劇

情報

監督:クエンティン・タランティーノ

脚本:クエンティン・タランティーノ

ざっくりあらすじ

強盗カップルのパンプキンとハニー・バニー。冴えないギャングのビンセントとジュールス。八百長試合を依頼されたボクサー・ブッチ。それぞれバラバラに見える視点が交錯する。

感想などなど

ブログ主はこの映画が好きである。ただし何が好きかと言われれば、「……雰囲気?」と曖昧な答えになってしまう。

ストーリーが良いかと聞かれれば、初見で全てを理解することは難しい気がする。少なくとも自分は三回見たし、時間軸に沿って流れを理解できたのは二回目だ。怒濤の伏線回収がある作品ではないし、ハッピーエンドと両手を挙げて喜ぶことができない視聴者もいたと思う(どの人物が好きかによる)。

ただ一度見たというだけで印象に残るシーンや台詞がたくさんある。これだけは見た人全員に共通しているのではないだろうか。

まず冒頭。

出所したての強盗カップルのパンプキンとハニー・バニーが、レストランで料理に舌鼓を打ちつつ、今後の犯罪計画を話し合っているシーンから始まる。「俺は足を洗う」と宣った口で、強盗するには狙い目の場所を語っている。彼には彼なりの哲学があり、それに従って犯罪を犯すのだろう。

「殺しはしたくない」なので殺さなくても済むような、楽に金を奪える穴場を探す。その中でも銀行は特に狙い目だ。保険をかけているから無駄な抵抗はしないのだという。一方、酒屋は外国人経営者が多く英語が通じないことが多い。また無駄に抵抗してくるため殺さざるを得なくなる。

となるとどこを狙うか。今、彼と彼女はレストランにいる。レストラン……良いのでは? というように手元にあった拳銃に手をかけた。

そんなそれぞれの登場人物が掲げる犯罪に対する向き合い方、いわば彼らなりの犯罪哲学。それが本作の肝なのではないだろうか。見た人は自分が、強いて言えば共感できる哲学に酔い、その人物の動向を見守る。そして自分の思い人たる犯罪屋は、時に死に、時に足を洗い、はたまた犯され……それにより感情が揺さぶられていく。

あなたはどの人物に思いをはせたのだろう。ここではブログ主の一視点から語っていきたい。

 

ギャングはカッコ良く描かれることが多い。ダンディなおじさまであったり、冷血に決断を下す様は漢らしいと言えるかもしれない。ただし、本作において描かれるギャング・ビンセントとジュールスは冴えないことこの上ない。

本日の二人の仕事は、薬の運び人グループが持ち逃げしてしまったので、それを奪い返すというものだ。グループの内の一人が情報を売ったため、居場所についてはもう分かっている。後は乗り込んで殺すなりして奪い返すという訳だ。

その道中の会話はとても軽い。これから殺しに行く野郎二人の会話とは思えない。白人のヴィンセントはヨーロッパから帰ってきたばかりのようで、ヨーロッパのポテトにはケチャップではなくマヨネーズが付いてくることや、ハッパを買うのは合法といった役に立つのか立たないのか微妙なラインの雑学を教えてくれる。

ターゲットのいる建物に着けば、ショットガンにすべきだったと言いながら拳銃をズボンの腰に差し込む。そして依頼人であるマーセルスの若妻ミアの話になる。どうやらマーセルスは妻を溺愛しているらしく、ミアに足のマッサージをした男を四階から突き落としたらしい。

そんな会話の中に、これから人を殺す緊張感といったものはない。殺しはあくまで仕事の一つといった裏社会らしい格好良さがあった。仕事も実にギャングらしい画的に映えるものだった。

踏み込んだ部屋には三人の男がいて、どうやら朝食中だったらしい。ハンバーガーがテーブルの上に置かれており、ヴィンセントとジュールスの二人を前に顔はこわばり動けずにいる。

そんな彼らを前にして、当たり前のように声をかける。「調子は?」「朝食中に済まないな」「ハンバーガーか! 栄養満点の朝食だな」「食べても良いか」というように。会話の内容を列挙すれば、それは友人に話しかけるように見えるが、実際の絵面は明確な上下関係がそこにはあり、蛇と睨まれた蛙のような構図がそこにはあった。

彼らの最期は、ジュールスが語る聖書の一節を聞きながら撃たれて死ぬ。この緩急が凄まじい。この一連のシーンは是非とも見て貰いたい。

 

個人的に好きなシーンの一つとして、ヴィンセントとマーセルスの若妻ミアが、二人でダンスするシーンを語りたい。

マーセルスというのはヴィンセントも所属するギャング一味のリーダーで、血気盛んで裏切りは絶対に許さない豪胆な男である。そんな彼にはかなーり若い元女優の妻がいて、名前をミアという。

マーセルスはしばらく家を留守にするということで、ミアの身の回りの世話を、部下であるヴィンセントに任せることにした。直前に、『ミアの足のマッサージをした男が、マーセルスに四階から突き落とされた』という話を聞いていたヴィンセントは、どこかおっかなびっくりといった様子でミアとの食事に付き合う。

そんな二人が食事をするレストランは、中央に小さなステージのようなものがあり、そこで客にダンスを踊って貰うという催しが行われていた。このダンスを経て、二人の距離感が一気に縮まることになるのだが、この時の音楽、トラボルタ演じるヴィンセントの踊りが妙に記憶に残っている。

こればかりは見て貰わないと分かって貰えないと思う。是非とも見て欲しい。

この映画はとても好きだが、理由を説明するのはとても難しい。ただ好きなシーンだけはたくさんある。この映画を好きな人と何かしら語り合いたくなる……そういう映画だ。