工大生のメモ帳

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【アニメ】リコリス・リコイル 感想

※ネタバレをしないように書いています。

平和の使者

情報

監督:足立慎吾

アニメーション製作:A-1 Pictures

放送時期:2022秋

ざっくりあらすじ

犯罪が起きる前に未然に防ぐ秘密組織『DA』。そこに所属する女性暗殺者『リコリス』達は、普段は女子高生の格好をして街中に紛れ込んでいた。そんなリコリスの中でも、電波塔を一人で守った伝説のリコリス・錦木千束は、表向きは喫茶店、裏の顔は『DA』の支部である「喫茶リコリコ」で働いていた。

感想などなど

平和とは絶対評価なのだろうか。平和な国とされる日本でも、少なからず犯罪は存在し、苦しんでいる人はたしかにいる。

そこから目を背けてはいけないし、背いた時点で平和とは程遠いと個人的には思う。しかし残念なことに、平和とは相対評価であり、「戦争があった頃と比べて」という対比があるからこそ、今の日本の平和は存在する。

それを絶対的評価に押し上げる組織が、『Direct Attack』通称DAである。なにせこいつらによって、日本の犯罪は0なのだから、「これ以上平和ではない状態」は存在しない。

とはいえ、その状態は仮初である。女性暗殺者『リコリス』は、今日も犯罪者を殺す。犯罪0と言うためだけに。

そのシステムに自分なりに折り合いをつけて争う物語が本作である。

 

最初の自分の説明を読んで、SFだと思って本作を観ると残念なことになる。SFとしての要素より、ガンアクションや百合要素の方が、個人的には強く感じた。

とはいえ「アラン機関のアランは、人工知能の父であるアラン・チューリングからとったんかな」とか、人工心臓とか心くすぐられる要素がない訳ではない。

それでも、やはりガンアクションや女子高生の友情や成長といった要素の方が強い。SF要素は薄い背景として見るべきだろう。

となると大事になってくるのはキャラクターだ。本作において最も評価され、多くの人にウケた要因はここだと思われる。

そんな本作の主人公は錦木千束、井上たきなの二人だ。

錦木千束については第一話において人格が完成されている。人を殺すリコリスでありながら、非殺傷弾で人を殺さず平和を守る……その信念を固く心に刻んでいる。行動に一貫した理念がある訳だ。

そして、そんなシステムに背く行為が許されるだけの実力がある。強くてかっこいい主人公。しかしルックスは可愛い。ギャップが好き。

対する井上たきなは普通に人を殺す。犯罪を0にするというシステムに沿った最善を尽くすといえば、察しの良い方は分かってもらえるかもしれない。いわゆる犯罪者絶対殺すウーマンである。

そんな彼女が錦木千束との交流を経て、喫茶リコリコでの生活を経て、どのように変化していくのか? 是非ともそこに着目してみて欲しい。

 

さて二人の魅力を語ったが、敵として立ち塞がる真島さんも人気である。システムに沿った平和を守る二人に対し、システムの破壊を目論んでいる。

この真島さんが人気なのは、どこか共感できるからなのではと推察する。見ていて少しでもシステムの理念に違和感を感じれば、彼を責めることはできない。

アニメ全般を通して、浮き彫りになったのは社会の異常性だ。最後の方の展開に「無茶だろ」と思った方も多いと思う。しかし、ここはそういう社会なのだと思えば、真島が壊そうとしたのはこういう社会だったと思えば、ある程度の溜飲が下がるのではないだろうか。

見ていて面白い作品だった。できればリアルタイムで見たかったものである。