工大生のメモ帳

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【ゲーム】マルコと銀河竜 感想

※ネタバレをしないように書いています。

母親を探して

情報

CERO:A(全年齢対象)

ジャンル:カートゥーンアドベンチャー

ざっくりあらすじ

幼い頃に奴隷として売られた地球人マルコは、トレジャーハンターとして生計を立てていた。そんなある時、写真でしか知らない母親を探すために、トレジャーハンターとしての仕事に一区切り付けた彼女は、地球に足を運ぶが――。

感想などなど

本作のジャンルはカートゥーンアドベンチャーというらしい。カートゥーンとは、所謂アメリカの子供向けアニメっぽい作風のアニメーションであり、それが至る所に挿入されているのが本作の特徴である。ただこの説明だけでも、これまでプレイしてきたどのゲームとも一線を画す挑戦的な作品だったと個人的に思う。

「何言ってるか分かんないです」という方はTOKYOTOONの公式YouTubeチャンネルで公開されているOP映像を見てみて欲しい。アニメらしい等身の画と、デフォルメされたカートゥーンらしい画が入り乱れたアニメーションを見ることができる。このアニメーションはOP映像だけではなく、随所で幾度となく見ることができ、目で見てとても楽しめる内容となっている。

また、OPの曲にもなっている『飢餓と宝玉』は名曲だ。プレイした後に聞くと、ひと味違った感動があるため、何度もリピートすることになるため、是非ともサブスクで出して欲しい(お願いしますTOKYOTOON様)。

ゲームのシステムとしては、良くあるテキストを読み進めるタイプのアドベンチャーゲームだ。ただし背景にキャラクターの立ち絵を貼り付けただけではなく、綺麗なイラストやイベントCGはかなり膨大な数描かれており、力の入れよう、手の込みようには驚かれる。

もしも初アドベンチャーゲームに本作を選んでしまったならば、他の同種ゲームはできなくなってしまうのではないだろうか……そんな危機感さえ覚えてしまう。そんな本作の欠点を一つあげるとするならば、ストーリーが完全に一本道ということだろう。ボリュームとしても、それほど多くない。

唯一ある選択肢は、水着のシーンか入浴シーンか選べるというとってつけたような分岐しかない。CGをコンプしないと気が済まないという方には優しい設計と言うこともできるかもしれない。当然のことながらEDは一種類である。

とはいえ、そのストーリーの出来は笑いあり、涙ありの王道を貫いており、最終章は涙腺が崩壊した。それでいて最後の最後はにっこり笑顔で終わることができる、非常に満足度の高いものとなっている。

さて、そんな『マルコと銀河竜』のストーリーについて感想を語っていこう。

 

ストーリーの解説より前に、世界観についてざっくりと説明したい。ジャンルとしては宇宙SFという位置づけになるだろうか。宇宙人による侵略、強奪、奴隷売買といった危険が蔓延る宇宙の中で、技術的にかなり劣った地球……宇宙の中でもかなり立場の弱い。そんな地球に住む人間を奴隷にするために、宇宙人が侵略しに来たシーンから本作は始まっていく。

主人公のマルコはそんな侵略によって家族と引き剥がされ、奴隷として売られてしまう少女。そんな彼女を買い取ったのは、ゴッドファーザーに出てきそうな恰幅の良い葉巻が似合うワニ男で、彼はマルコを立派なトレジャーハンターに育て上げ、(なんだかんだで)大切にしているらしかった。

他の奴隷達の末路は描かれていないが、マルコの境遇は不幸中の幸いと言わざるを得ない。なにせ彼女は生きていて、宇宙船に乗って宇宙を股にかけ、宝という宝を集めては仲間である非常食と銀河竜と仲良くしていたのだから。

そんなマルコには一つ心残りがあった。それは地球にいて離ればなれになってしまった母親の存在だ。マルコには母親との記憶はなかったため、一度で良いから会ってみたいと考えているらしかった。

そこで奪った宝を父代わりであるワニ男に渡さず奪い、売りさばいて金を稼ぐことで地球に行って母親を探す資金に充てることにしたのだ。こうして宇宙を股にかける優秀なトレジャーハンター・マルコの地球探検が始まる……!

ここまで呼んで貰えば分かる通り、物語の背景はかなーり暗く重たい。しかし、そんな暗さを感じさせないマルコの明るさと強さ、彼女を迎え入れる地球の人達の温かさが、シリアスな空気を軽くさせる。

マルコの抱える過去を聞いた人達は、一様に協力の姿勢を見せてくれる。美味しい食事を用意してくれたり、母親の情報を何とか探そうとしてくれたり、学校に通ったことのない彼女に制服を提供してくれたり(制服マルコが可愛い)……市長が幼女だったり、トラブルメーカー生徒会長だったりと、マルコを含めた周囲を振り回す迷惑者もいるが、彼女達も悪意を持っている訳ではない良い娘なのだ。

驚くことに本作における明確な悪は一人しかいない。

マルコが来てからというもの地球は危機的な状況に追い込まれるのだが、その原因は『宇宙ネットショッピングで買いすぎて料金が払えなくなったため取り立てに来た宇宙人とのいざこざ』や『地球よりも遙かに大きすぎるため地球が見えないため飲み込みそうになる』といったような感じである。ネットショッピング事件に関しては、むしろ相手方に同情する。

シリアスな空気が来たようにみせかけて、フッと笑ってしまうような展開の連続は、プレイヤーを飽きさせないような工夫なのかもしれない。

 

孤独は人を狂わせる。いや、竜さえ狂わせる。

タイトルにもなっている銀河竜というのは、銀河をその身に飲み込んでいるという最強の生命体だ。空腹状態だとその姿を保つことができないが、本来であれば宇宙を渡って銀羅をパクリと飲み込んでは命を繋いでいるはずだった。

そんな銀河竜が抱える悩み……それが孤独である。

孤独を埋めるにはどうすれば良いのだろう? 奴隷だったマルコにとって、圧倒的力を有する銀河竜にとって、それは全てを賭けてでも答えを知りたい問題だったのではないだろうか。

マルコはそんな寂しさを埋めるため、地球に母親を捜し求めた。そんな彼女にひっついている銀河竜は、何を思うだろうか。マルコと銀河竜、一人と一匹の導き出した孤独との向き合い方、その答えを是非とも見てあげて欲しい。

紛れもない名作でした。