※ネタバレをしないように書いています。
壮大な格闘ファンタジーの幕開け
情報
作者:安井健太郎
イラスト:TASA
ざっくりあらすじ
傭兵ギルドを抜けた変わり者、リロイ・シュヴァルツァーと信頼すべき相棒である喋る剣・ラグナロク。二人の行くところでは、奇怪な武器を操る暗殺者から、桁違いの力を振りかざすモンスターなど、あらゆるモンスターが襲いかかってくる。
感想などなど
ラグナロク。自分としては北欧神話の神々の戦いを思い浮かべますが、本作では喋る剣の名前です。
「喋る剣……あぁ、この世界では普通なんだな」と思われるかも知れませんが、そんなことはなく、会う人には驚かれたり、気持ち悪がられたりしていますので、この世界でも珍しい存在のようです。
そして、しっかりと意思を持っているご様子。なんせ、この作品はそんな喋る剣・ラグナロク視点で描かれているのですから。
剣を振りかざし実際に闘うリロイ・シュヴァルツァーが軽く苦戦していても、「おいおい、しっかりしてくれよ」、投げ飛ばされれば「ちゃんと持ってくれ」とまるで他人事(それでもしっかりと信頼している)。
三人称……と言っていいのでしょうか。時折「神の視点」と例えられる三人称ですが、この作品は「意思を持った神の視点」といったところでしょうか。
書くのは結構難しいと思うのですが、読む限り何も違和感なく、スルスルと読む進めることができるので、そこはご安心を。
本作の魅力は「迫力ある戦闘シーン」と「二転三転するストーリー」でしょう。
まずは「迫力ある戦闘シーン」から。作品の人称がかなり独特なのは、上記でも説明した通り。そして、格闘ファンタジーと銘打つだけあって、基本戦闘ばかりしています。冒頭《闇の種族》と戦い、街に行き飯を食っていれば暗殺者に絡まれ、風俗に行けばまた暗殺者に襲われ……。
適当に開いてみれば、大抵何かと闘っています。その戦闘シーンは決してワンパターンではなく、苦労あり、ドラマありの展開の数々。主人公は基本剣を使って闘いますが、相手は多種多様な武器を使ってきます。
例えば冒頭の《闇の種族》は剣を持った大勢の人のような存在(まぁ、モンスターと思って貰って良いかと)。風俗では糸使いが相手であり、もう少し進めば《闇の種族》の一種であるヴァンパイアまで登場します。
いやぁ、楽しい。最近はこういった戦闘に重きを置いた作品が少ないので、かなり新鮮に感じました。
次は「二転三転するストーリー」。
本作の主人公は脅威の回復力、人知を越えた身体能力などと言ったチート級の能力を持っています。
ラノベなどでチートを持った主人公は特段珍しくないですが、「チート能力をどうやって手に入れたのか」という点で、「如何に他では見られないアイデアを出せるか」で作品の評価は大きく左右されます。
本作の主人公・リロイはどうしてチート級の能力を持っているのか?
ここで理由を説明するのは止めておきましょう。この作品における重要な要素になっているのですから。
そしてそんな主人公が持っている喋る剣。どう考えても普通の剣ではありません。
何故、剣・ラグナロクは喋るのか?
この理由も説明するのは止めておきましょう。彼(性別不詳)の存在理由は、この作品の雰囲気を確定付ける大切な情報なのですから。
戦闘シーンばかりと言いましたが、その背景には人類の歴史と、これまで苦しんできた人ならざる者達のドラマがあるのです。そういった話や伏線が一気に回収されていく後半は、一気読み必死。
最近は見られない格闘ファンタジー。一巻とは思えない内容の濃さでした。