工大生のメモ帳

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ログ・ホライズン1 異世界のはじまり 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

ゲームみたいな異世界

情報

作者:橙乃ままれ

イラスト:ハラカズヒロ

試し読み:ログ・ホライズン 1 異世界のはじまり

ざっくりあらすじ

剣と魔法の世界をモチーフにした世界最大級のオンラインゲーム〈エルダー・テイル〉。それをプレイしていた者達が、突如としてゲームの世界に酷似した異世界に転移させられてしまった。ゲームと同じくレベルの概念があるが、戦うためには自らの肉体を動かさなければならず、人々は苦戦を強いられた。

感想などなど

〈エルダー・テイル〉二十年もの歴史があるオンラインゲーム。度重なるバージョンアップによりグラフィックや内容は一新され続けたが、運営の経験の長さによる安心感や、豊富なデータにより構築された深いゲーム性は未だに根強い人気を誇っている。

しかし、そんなゲームに十二番目の拡張追加パックが当てられるという記念すべき日に事件は起きた。

転生である。

そこは見慣れた〈エルダー・テイル〉の世界に酷似しており、ステータスやアイテムはゲームでのものをそのまま引き継いでいた。最初、多くの人々がそのような状況に困惑した。何とか元の世界に戻れないかと苦心した。

しかし、例え死んでもゲーム内のリスポーンと同様に復活してしまう。眠ったとしても目覚めたときに現実に戻るということもない。つまり完全に戻る手段が分からない。

となると次にすることは、この世界で生きていくということ。しかし、それも簡単なことではなかった。

まず食事をしようにも食べ物に味がない。全てが無味に無臭であって、食べたような気がしない。生きているのに生きているような実感がないのである。さらにゲームではスキルを選択するだけでよかった戦闘も、身体を実際に動かして攻撃を避けつつ、スキルの行使も自ら動きつつ行わなければいけない。ゲーム世界の設定と現実が入り混じったかのような世界を舞台に、死んでも死ねない日常が始まっていく。

シロエという古参プレイヤーの視点を中心にして、かつて一緒に仲良くしていた直継、かつては男のフリをしてゲームをプレイしていたアカツキの三人で生きていくことになる。

 

オンラインゲームのプレイの仕方というのは人それぞれスタイルがある。どこかのギルドに所属して多くの人と繋がりながらワイワイするもよし。どこにも属さずソロでプレイするもよし。性別を偽ってプレイするもよし。悪人となってプレイヤーキルをしたっていい(褒められたことではないだろうが)。そういった自身の好きを突き詰めることができるのもゲームの良いところであろう。

ゲームで誰かに殺されたとしても、「ゲームだから」と割り切れる。なにせ実際には死んでいないのだから。ゲームの仕様上許されているのだから、警戒するというのが筋だろう。

最悪、本当にもう無理だとなればゲームを辞めればいい。

しかし、ゲームが現実になったとなると話は違う。ゲームと現実の最大の違いは、逃げられるかどうかだとこの作品を読んで感じた。レベル上げが面倒だから辞めちゃった、がこの世界では死活問題となる。プレイヤーキルされるのが嫌だから辞めたい、と思っても辞められない。

嫌なことが起きてもストレスをぶつける先がない。

そんなストレスのはけ口に選ばれたのが、ゲーム世界のNPCや新人たちだった。性の慰み者や暴力を振るう相手、金を稼ぐための売買されるアイテムとして……「ゲームだから」という感覚が抜けきれていないのだろう。人としてはやっていけない倫理という線を、やすやすと踏み抜いていく。

プレイヤーキルだってそうだ。なにせ死んでもリスポーンするのだ。殺したことによる罪悪感などない。世はまさに弱肉強食の世紀末と化していた。

 

そんな世界で人としての良心を捨てずに生きていこうとする者もいた。その一人がシロエである。鬼畜メガネとか言われ、策略がえげつないことで知られているそうだが、ただそれは敵に対して容赦ないというだけであって、自分も体を張っての闘いをする結果であって、決して嫌われて言われていることではない。

酷い世界であろうとも、人として、この世界の冒険者として生きていこうとする姿勢は好感が持てる。ゲームの設定などとても多く盛り込まれた文章は読みにくいと感じる人も多いかもしれないが、登場人物達の魅力で先を読ませてくれる。そういう作品だと自分は感じた。

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