工大生のメモ帳

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世界の終わり、素晴らしき日々より3 感想

【前:第二巻】【第一巻】【次:なし】

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

素晴らしき世界の行く末は

情報

作者:一二三スイ

イラスト:七葉なば

ざっくりあらすじ

コミュニティを二人でボロトラックに乗り込み去って行く。指輪をなくした家族。言葉を互いに知らない二人の男女。高国の兵士を捕まえて拷問する人々。高国に忠誠を誓った兵士達は、命を賭けて戦場に足を踏み入れる。

感想などなど

さて前回(世界の終わり、素晴らしき日々より2)は、コウが高国の王女様だったことが明かされ、チィは結婚を申し込まれ、コミュニティに残る選択もありながら修羅の道を選んだ二人。たった二人……けれど寂しさはなく、いつまでも一緒にいると互いに誓い合い、絆はさらに強く結ばれていきます。

人類が消えた世界を今日も二人は進んでいきます。今回はそんな二人と世界の行く末の物語です。

 

どこに行っても売っておらず、結局Amazonn先生に頼むことになったわけですが、そうしてでも買って良かったと思える作品でした。

基本的に、各地で出会った人達との出会いと別れを描いた短編(?)で構成されています。まず最初に「人類がいなくなる少し前に、指輪をなくしたことで喧嘩して離婚届を提出した家族」とのお話です。

離婚したとはいえ、娘も居たためにあれこれ手続きを進めている最中にやって来た、世界の終わり。三人は生き残り、何とか命を繋いできました。書類によって別れを決めたものの、一度はプロポーズして一生の愛を誓い合った同士、何とかなっているようでした。

そんな家族の暖かくもちょっぴりほろ苦いエピソードが綴られていきます。

次に出会ったのは「高国語しか話せない男と、高国語の話せない女」そんな二人が互いに協力しつつ生きている場所でした。言葉が通じなくて不便でしょうし、本来ならば互いに殺し合っていてもおかしくはありません。しかし、二人は離れることもなく一緒に生きていました。

そんな二人の思いのすれ違いと、通じ合いまでの甘い物語がそこにはありました。

最後、この物語の終着点とも言える場所は、「高国と争うコミュニティ」でした。そこで待っていたのは、高国のためならば命も惜しくないと戦い、最後には捕虜として捕まって拷問にかけられている軍人の姿でした。

そんな軍人は、コウが高国の皇女に声が似ていると言い(まぁ、実際本人ですし)、彼女に思いの丈を語ってくれました。「自分はあの皇女様のためならば、死ねる」と。

高国の軍人は彼女の演説を今でも鮮明に覚えているほどに、皇女様を愛し、国を愛し、国のために戦い死ぬことを臨んでいたのです。

そんな民の言葉を聞き、コウは何を思うのか?

 

人類は多くが消え失せ、世界は終わったかのように思われています。しかし、多くの人が生きていて、愛を語らい、誰かのために闘っています。

そんな中、高国の残された軍人達は皇女様のため、高国のために闘っていました。その闘いの先に何が待っているのか、きっと軍人である彼ら自身が、心の奥底では分かっていたはずです。

それでも彼らは銃を手に進むことをやめなかった。どれほどコウが国民に愛されていたかが分かります。

彼らをそんな戦争の呪縛から解き放つことができるのは、この世界でただ一人コウしかいないのです。

 

読み終えた後の心にぽっかりと穴が空いたような感覚。感動が一度に押し寄せてくる感覚は中々味わえるものではありません。

是非読んで貰いたい作品です。

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