工大生のメモ帳

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最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

少女のゴミ拾いの旅

情報

作者:ほのぼのる500

イラスト:なま

ざっくりあらすじ

【テイマー】に転生した少女・アイビーは、スキルのランクが最低の星なしであるために村を追われる。一人で外の世界で生きていく必要があるが、唯一テイムできたのは最弱の崩れスライムのみ。どうにか多くの人の助けを得ながらサバイバルを進めていく。

感想などなど

テイマーというものを御存知だろうか。一言で簡単に説明すると、『魔物を仲間にして使役する魔物使い』のことである。つまり転生して来た少女・アイビーは、強い魔物を仲間にすることができれば、それだけ強くなるということを意味する。

しかし、世の中はそう上手く出来ていない。

この世界では一定の年齢に達するとスキルを鑑定して貰える。その際に、今後の人生を決定づけるともいえるスキルと、そのスキルのランクが分かる。そこで【テイマー】というスキルを持っていることが分かった訳だが、残念なことにランクは最低の星なしであった。

【テイマー】という将来性に満ちたスキルを持ちながら、最低ランクであるが故にテイムできないという矛盾(最低ランクとはそういった意味のようだ)。もはやスキルなしと同じである。

これまで優しかった両親も兄弟も、そんな彼女のことを蔑んだ目で見つめる。家族でありながら、家を追い出され、命さえ狙って来る始末だ。これまでの暖かな生活は一変し、村で食料など盗みながら(残念ながら村にも味方はいない)、森で一人で生きる術を身につけていく。

唯一の味方であった占い師が死んでしまったことを境に、彼女は村を離れて、ひとりぼっちで世界を旅していくことになる。その過程で、最低ランクでも何とか仲間にすることができた崩れスライムと共に。

 

この崩れスライムというのが厄介だった。

まずとても弱い。だからこそ仲間にできたのだが。移動手段は風に揺られて転がるしかない。風で飛んできた石で死ぬ。アイビーがこの生きた崩れスライムに出会うこができたのは奇蹟だったと言えよう。

さらに厄介なポイントとして、こいつはどうにもポーションを餌にしているようだ。狩猟で手に入れたネズミなどを解体し、その肉を売ることでしか金を稼げないアイビーにとって、ポーションはゴミ捨て場を漁ってたまにしか手に入れることは叶わない貴重品であった。

それにポーションはアイビーの負傷を癒やす役割だってある。そう簡単に全部を餌と差し出すことだって厳しい。しかし、ソラと名付けた唯一の仲間のためにも、ゴミ捨て場を漁りポーションを集め、節約もしながら旅を続けていく。

タイトルにある『ゴミ拾い』というのは、その言葉通りゴミ捨て場を漁りながら旅をしていることから由来しているのだろう。冒険者や近くの村の人々が、ゴミを持ち寄って捨てていく場所には、腐りかけのポーションやアイテム袋といったお世辞にも保存状態が良いとは言い難い物が積み重なり、そこから数少ない使えそうなものを選り抜いていく。

その他食事に関しては、狩猟で得た肉や草や果実を調理し――おろらく前世でそれなりに料理が得意だったのだろう――食事にはそれほど困ってはいないようだが、森で寝るという場合には、常に魔獣に襲われる危険に晒される。

時には道に人の死体が転がり、村では「オーガが出た」等の情報が語られる。死がすぐそこに転がっているという匂いがする。敵に出会えば逃げるしかない彼女の旅は、過酷な経験ばかりだった。

 

そんな旅の救いは、出会う人が皆良い人ばかりということだろう。彼女が逃げ出した村はそれはそれは酷い村だったということを、別の村に来たことで知る。まだ年端もいかない少年(彼女は自らの性別を隠しているため少年と思われている)に向けて、時には騙そうとする輩がいることも否定はできないが、周囲の人の温かい支援のお陰で旅は順調に進んでいく。

大した目的もない放浪の旅と、いつの間にか増えていた知り合いや魔物の仲間とともに、今後も彼女の旅は続いていく。例え最低ランクのテイマーだとしても、彼女の周囲はいつも助けてくれる人がいた。

人を引きつけて仲間にしてしまうような性格こそ、生きていく上ではスキルよりも大切なのかもしれない。

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