※ネタバレをしないように書いています。
バトルジャンキー召喚士
情報
作者:迷井豆腐
イラスト:黒銀
試し読み:黒の召喚士 1 封印されし悪魔
ざっくりあらすじ
異世界への転生権を厳正な抽選で手に入れた主人公だったが、転生前に交わした契約により前世での記憶を失っていた。どうやら一目惚れした神様と一緒に転生するために、色々と無茶をして、記憶も消してしまったらしい。
感想などなど
転生作品において、すっかりテンプレートとして馴染んでしまった転生ボーナス。転生時に、神様から特別な力を授かることができるというものだ。その能力に応じて作品の個性が決まると言っても過言ではないだろう。
チート能力であれば無双系ハーレム構築、雑魚能力であれば無双系ハーレム構築……あれ、おかしいな。行き着く先は全て同じか……。
本作も例外ではない。もらう能力はかなりチートで、しかも使い勝手が良い。転生前に選ぶことができるという設定のため、そういった使い勝手を優先したのだろう。列挙すると下記のようになる。
- 召喚術(S級)
- 鑑定眼(S級)
- 成長率倍加
- スキルポイント倍加
- 経験値共有化
ゲームに慣れ親しんだ方には必要ないかもしれないが、上から説明していこう。
召喚術はその名の通り、契約したモンスターなどを召喚して使役することが可能になるジョブだ。使えば使うほどに級が上がっていき、最終的にはS級となる。つまり最初から召喚術を極めているということだ。
次に鑑定眼。相手のステータス情報を見ることができる能力であり、たとえどんなに隠匿していたとしても、それらも全て看破してしまうという後になればなるほど利便性が分かってくるスキルだ。
成長率、スキルポイント倍加も、戦闘などを通じて得られる経験値や成長率、スキルポイントの取得値を向上させることができるパッシブスキルである。これの有無によって、成長速度は雲泥の差である。そういった成長速度向上の効果は、経験値共有化により契約したモンスターにも適用される。
ただでさえ召喚術(S級)により、契約したモンスターのステータスは全て自動的に上がっている。適当に戦闘を繰り返していけば、他の人達の何十倍も成長していく。後になればなるほど周囲との差が大きくなり強くなっていくという訳だ。
こうして列挙したボーナスだけでも、十分すぎるくらいである。しかし主人公・ケルヴィンが獲得したものはそれだけではない。転生の契約を進める際、であった神様に一目惚れした主人公は、なんと転生ボーナスの一環として神様に配下になるように言ってのけたのだ。
その時の殺し文句にやられ、神様はケルヴィンの配下として転生。まだレベルやスキルが足りないため召喚することはできないが、いずれは神様も召喚できるようになるということである。
これをチートと言わざるしてなんと言おうか。
この作品における主人公の目的を挙げるならば、『神様を召喚するためのレベルアップに励む』である。魔王出現の兆候があるようだが、それは別に召喚された勇者達が何とかしてくれる……はず。
召喚士とはモンスターを仲間にして召喚し戦わせる。最初に仲間にしたモンスターは、某ゲームでも最初の敵として馴染み深いスライムである。育て方次第では進化して強力なスライムとなる辺りゲームって感じがして好きだ。その辺りの感性は、読者とケルヴィンも一致する。
そのスライムと共に強力なモンスターを仲間にしていく。ついでにレベルアップしていく。それがゲームのようで楽しい。しかも、どうやらケルヴィンは戦闘ジャンキーであるらしい。強敵との戦闘が楽しくて楽しくて仕方がないといった様子で、強敵に挑んでいく。
戦闘ジャンキーとして欲を満たすこともでき、神様召喚できるようになるまでのレベルアップもできる。これは一石二鳥ではないか。
さらについでに新人潰しをしている冒険者をボコボコにしたり、魔王出現の兆候の一つである魔族の出現にも対処していく。そこに誰かを助けたいという正義はない。ただあるのは、「強者と戦えるかもしれない」「強いモンスターと契約できるかもしれない」という欲求である。
欲に正直な者は嫌いではない。すっかり冒険者として馴染んだ男の成長スピードは、転生ボーナスも相まって周囲を驚かせる。次々と構築されていくハーレムも見所であろう。
神様が一夫多妻も認めるような寛大な女性だったことを、ケルヴィンは感謝すべきである。とにかくそういう物語であった。