※ネタバレをしないように書いています。
バトルジャンキー召喚士
情報
作者:迷井豆腐
イラスト:黒銀
試し読み:黒の召喚士 2 偽りの英雄
ざっくりあらすじ
強力な仲間を集めつつ、超強力な敵との戦闘を楽しむ召喚士・ケルヴィン。そんな彼の次のターゲットはまさかの勇者で――。
感想などなど
バトルジャンキーとは。
ただひたすらに強者との戦闘を望み、死ぬかもしれない危険すら笑顔で受け入れる者のことを指す。つまりケルヴィンである。初心者殺しの冒険者を返り討ちにしつつ、洞窟の奥に居た亡霊と化した騎士を仲間にし、前魔王の娘を仲間に引き入れ、購入した奴隷が超強くなって……やることなすことが全て強化に繋がっていく戦闘狂・ケルヴィン。
冒険者ランクAに上がったのはあっという間。おそらく彼に勝てる者は、少なくとも今居る街にはいない。周辺のモンスターも大したことはない。そんな彼が次の標的にしたのは、A級冒険者クリストフ一行が率いる盗賊団『黒風』であった。
冒険者が率いる盗賊団と聞くと気色悪いが、そういう表現をせざるを得ないのには少々込み入った理由がある。
かつて猛威を振るった盗賊団『黒風』というのは、たしかに実在した。悪逆の限りを尽くした厄介な盗賊団であり、その扱いには手を焼いていた。それらを一網打尽にし潰した冒険者が、クリストフ達である。
しかし、実際は盗賊団の頭がクリストフ達にすり替わり、名前も変わっただけで存在は残り続け、未だに各地で略奪を繰り返していた。その美味い汁をクリストフは吸いつつ、冒険者としての地位を確立。本当の悪とはこういった輩のことを言うのだろう。新人冒険者を潰していた一巻の敵が可愛らしく見えてきた(あっちも相当悪だが)。
そんな奴らにたまたま絡まれたケルヴィン達。まぁ、負ける訳がない。逆に相手を引っ捕らえ拷問し、黒幕はクリストフ達であるということが分かった。歴然とした証拠はないが、あとは乗り込んで潰すだけという段階だが、そう簡単にはいかない。
盗賊団『黒風』を潰したという功績により、国に祭り上げられ英雄とまで呼ばれている現在。彼らを告白し潰すことは、国のメンツに関わると言い出したのだ……このまま放置し続ける方が国のメンツに関わる気がするが。
そこでケルヴィンは自身の戦いたいという欲求を叶えつつ、盗賊団をぶっ潰す作戦を立てた。それに巻き込まれることになるのが、不幸な勇者達一行である。
結論から言うと、盗賊団に先に乗り込んでぶっ潰して置き、その最深部で「俺たちがボスですよ」みたいな顔をして居座る。遅れて乗り込んできた勇者達と戦って、何となくいなしたあとで「俺たちが先に乗り込んでいた冒険者ですよ」と説明する。勇者の勘違いで攻撃されたということで、その罪滅ぼしとしてクリストフ達の悪事を勇者に暴露して貰う。
一介の冒険者に過ぎないケルヴィン達が告発した程度では握りつぶされる可能性がある。勇者の言葉であれば、国も無視することはできないという寸法だ。まぁ、そんなことは建前で勇者と戦いたいという欲求の方が強い気がするのは、決して気のせいではないだろう。
彼のお望み通り、ケルヴィン達と勇者達は戦うことになる。
その戦闘において、読者はどんな結末を期待するだろうか?
ケルヴィン達が勇者達をボコボコにするか。勇者達がケルヴィン達をボコボコにするか。色々と想像を膨らませつつ期待して読み進めて欲しい。
第一巻で説明されているが、勇者達は転移させられてきた元学生達である。超強力なスキルを渡され、国の庇護のもとで修行を積んだ、それなりに強者だ。しかし元学生であるという点はどうしようもなく、大きな足枷となる。
誰もが戦闘をするのは怖い。しかもいきなり強い力を得たとて、その使い方を間違えれば毒にも薬にもなる。
彼らは勇者だ。この世界を守るには彼らに頑張って貰うしかない。
それだというのにケルヴィンにあっさり負けるようで良いのか? いや、良くない。この程度で負けるようでは勇者の風上にもおけない。だからといって勇者達を責めるのは筋違いというものだ。元日本人がそう簡単に戦闘慣れして、戦闘を楽しめることなど極々まれな事象なのである。
ケルヴィンの異様さが際立つ第二巻であった。