工大生のメモ帳

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嫌いと向き合う試験勉強

今週のお題「試験の思い出」

受験はブログ主も通った道だ。もう名前が変わってしまったセンター試験を、近くの大学で受けた。思ったよりも成績は芳しくなく、志望していた大学の判定は何とかボーダーに乗ったというところだった。

センター試験の正確な点数なんて覚えていない。今知ろうと思っても、どこをひっくり返しても点数が乗っている書類は出てこないと思う(実家にも多分ない)。ただ化学の点数が当時の平均を下回っていたことだけは明確に覚えている。

高校生の自分は、化学に対する苦手意識が凄まじかったのだ。

当時、化学が異様なまでに得意な同級生がいた。模試で普通に満点を取ってくるような奴で、飄々と「勉強してない」と言ってのけつつ、みんなが勉強一色になる休み時間に寝ているような自我を貫いていた。

そんな彼に化学はどうすれば分かるようになるのか聞いたことがある。すると彼は、「感覚で分かる」というようなことを言っていたように思う。聞いておいてなんだが、全く参考にならないために記憶から抹消した。

別で急激に化学の成績が伸びた奴がいた。彼にもまた同様に化学をどのように勉強すれば良いのか聞いたことがあった。すると彼は「化学は暗記科目だ」と言って、塾でもらったという一冊のテキストブックをわざわざもう一冊用意して持ってきてくれた。

どうやら、この一冊をやり込めば点数は安定するらしい。その実績は友人である彼が、模試の点数をもって証明してくれている。テキストの中には、覚えるべき項目というのが分かりやすくまとめられており、「テストで安定した点数を取ること」に特化した暗記手法によって作られていた。

なるほど、塾はこのような勉強法を教えてくれる場所なのだな……と感心したことを覚えている。親があまり教育に熱心ではなく、田舎すぎて塾が近くになかったことも関係し、完全な自学自習だけで受験を乗り切ろうとしていた自分にとって、この塾の情報を漏洩させてくれる友人は神様だった。

ただ一番点数が伸びて欲しい場面で、最高のパフォーマンスは出せなかったのだが。

 

化学の点数が伸び悩んだ理由を、今になって考えると「化学が好きになれなかった」からだと思う。テキストを貰い、それを覚えることに必死になっているのは、「このテキストの内容を覚えさえすれば化学と向き合わなくて良い」という逃げがあったからだ。

化学式の羅列を見て、何か良く分からないけど結合されていく関係性を見て、その試験問題と向き合う際に、「見たくない」という心理的障壁が無駄に一枚噛んでくる。好きだった数学と物理にはなかった困難が、化学を自分から遠ざけさせる大きな要因となっていた。

当時に戻れるならば言いたい。化学を好きになるところから、地道に進むべきと。

大学生になると自分で取りたい単位を選んで、時間割を作ることができる。自分の好きの融通を利かせることができるシステムは魅力的だった。

ただそんな好きを見つめ直す過程で、どうしても嫌いを見なければならない時もやって来る。必須単位という取らなければならない単位の中に化学があって泣きを見た……というのもあるが、それよりも物理の中に化学が、工学の授業の中に化学が現れた時に、苦々しい顔をしてしまう。

そんな悩みを打ち砕いてくれたのが、大学で出会った化学好きの友人だ。彼の化学好きはかなりのもので、自分は社会に出て働いてしまったが、彼は院へと進み化学分野の研究をしている。

その彼が語ってくれる化学の魅力は、化学が嫌いだった自分を化学の世界へと引きずり込んだ。過去の科学者達の功績から始まり、今、講義を受けている受講内容と繋がっていく物語……思わず笑ってしまうような化学エピソードの数々。その友人の話を聞いているだけで、高校で学んできた化学知識が一つの線として繋がっていく過程は感動だった。

今となっては化学は嫌いではない。むしろ好きな部類かもしれない。

何かを勉強する時、まずはそれを好きになるところから……面倒な回り道と笑うかもしれないが、勉強で邪魔になるのは心理的な障壁だ。それを取っ払うことから始めるべきではないだろうか。

人は好きを語る時、とても生き生きとしているものだ。その話は聞いているだけでも、いつしか自分もその道に引きずり込まれる。そうすれば、その好きを語った誰かも、引きずり込まれた自分も勝ち。誰も敗者のいないWIN WINの舞台が出来上がる。

とりあえずブログ主の好きな作品に関しては1000記事くらい書いているので、見て行かれては如何だろうか。