工大生のメモ帳

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さくら荘のペットな彼女 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

やりたいことは何ですか?

情報

作者:鴨志田一

イラスト:溝口ケージ

ざっくりあらすじ

捨て猫を勝手に飼っていたことがバレたため、一般寮を追い出され、世間からのはみ出し者が集められたさくら荘の住民となった神田空田。そこでの波乱に満ちた生活の最中、天才画家で生活能力皆無の椎名ましろが住民に加わった。そこで空田は、彼女の世話係に任命され……

感想などなど

凡人が積み重ねた努力を、あっさりと飛び越えていく天才というのは、どの分野においてもいるものだ。スポーツしかり、勉学しかり、芸術しかり。きっと今せこせこと書いているブログに関しても、天才はいるのだと思う。

天才と凡人の差というのは、どのようにして生まれるのかは定かではない。生まれ育った環境か、はたまた遺伝子に刻まれた才能によるものか。できることならば、後天的な要因であって欲しいと願う。

本作では何人もの天才が登場する。それに相対するかのような超凡人が、我らが主人公の神田空田である。

彼は段ボールに入れて捨てられた猫を見ると、迷わず持ち帰ってしまうような人の良い主人公であるが、それ以外ではこれといった特徴がない。何か得意なことがあれば、それについて語ることで、いくらでも字数稼ぎになるのだが(あぁ、彼は突っ込みが上手いよ)。

夢もなければ、先だった目標もない。高校生としては普通といえば普通だ。逆に普通すぎて、語ることでもない気すらしてしまう。

そんな凡人たる男が、天才たちを前にして醜い嫉妬を露わにする様が、本作ではありありと描かれていく。天才に対して抱いてしまう嫉妬心が理解できないというならば、本シリーズは読み進めることは辞めた方が良い。きっとつまらないし、読み進めることが苦痛になるだろう。

やりたいことが明確にあって、そのために努力しているということを、胸を張って言い張れて、神に嘘をついていないと誓える方も読まない方がいい。少なからず、苛立ちを覚えるからだ。

ブログ主はどうなんだって? 愚問である。

 

まぁ、そんなことを語ったが、本作は魅力的な社会不適合者がたくさん登場する。ブログ主はどちらかといえば片付けが苦手で、本棚に本を詰め込みすぎて床にまで積み上げてしまうような人間だが、本作の天才達よりは遙かにマシだった。少し彼らを判明教師にして、掃除に精を出してみるのも悪くないかもしれない。

まぁ、ただの社会不適合者であれば、そのままニートで何も面白みのない寝て起きるだけの物語になってしまう。魅力的と書いたのには、彼らが誰にも代替することはできない才能を持ち合わせていたからこそ、でてきた文言である。

まずエントリーNO1。上井草美咲。さきほど散々ボロクソに語ったが、彼女の生活能力はそれなりにある。なにせ料理スキルはかなり高い。しかし、毎日のように徹夜してアニメーションを書いていた。言動も色々とぶっ飛んでいる。

このブログに来たということは、きっとアニメが好きであろう。嘘はつかなくていい。見ていないという人は、本作のアニメでも見てくれ(ネットの評判は宜しくないが、ブログ主的には面白かったと思う)。そのアニメはキャラでザやらモーションやら中割やら色つけやら、あまり詳しい訳ではないが、多くの人が関わって作られている。

そのアニメができるまでの全行程を、たった一人で、しかもハイクオリティで完成させてしまうのだから、世のアニメーター達は涙目である。正しく天才という名が相応しい。

エントリーNO2。赤坂龍之介。天才プログラマーにしてひきこもり。完全自律型AIというものを一人で構築してしまい、多くの企業からソフトウェアの開発を依頼されて、それを同じく一人でこなしていく。ちなみにさくら荘のネットワークは彼が管理しているため、ネット上でエッチな動画を見ようものなら、その趣味は彼に筒抜けということになる。

ひきこもりであるため、姿や声すら登場しない。もう既に変人である。

エントリーNO3。待ちに待った本作のメインヒロイン。椎名ましろ。彼女は若き天才画家で、海外では個展が開かれるほど。コンクールは彼女を絶賛する声で溢れ、文句なしの金賞をもぎ取っていく。絵の分からない素人の空田ですら、彼女の絵をネット上で初めて見たときは感嘆の息を漏らした。

さて、彼女の生活能力は破綻の極みである。服を着るという常識を持ち合わせていないという一言で、ある程度察していただけたら幸いだ。もっと言うなれば、お金を払って飯を買うという概念が欠如していると言っても分かって貰えるだろうか。

共同生活を営んでいるさくら荘。掃除や料理も一応(ほぼ空田が作ることになるが)当番制ということになっている。しかし、椎名ましろの得意技は周りの仕事を増やすということに特化していた。掃除をすると掃除する箇所が増えるというのは、これ如何に?

 

そんな彼女も才能だけは本物であった。

しかし、その才能だけでは生き残ることのできない業界に脚を踏み入れようとしていた。

なんと漫画業界である。

漫画というのは、イラストが上手ければ面白いという訳ではないということは、何となく皆さん理解できるのではないだろうか。絵は上手いがストーリーはゴミという漫画は世に捨てる程ある。彼女はそんな漫画業界に憧れ、必死こいて毎日のように漫画を描いていた。

空田曰く、彼女の漫画は「つまらない」の一言。何か良くわかんないけど、女子高生が男子高校生に恋をして、何かよく分かんないけど付き合うことになった……物語としての起承転結はおろか、盛り上がる場面すらない。漫画としてはあまりに致命的すぎる。

それでも絵だけはプロ。構図だけは盛り上がるように工夫されているような節がある(だが盛り上がる展開ではない)。

空田はそんな彼女を応援する……そう確実に応援していたはずなのだ。しかし、上手くいかない彼女を見て、ほっとしている自分がいた。

……これこそ主人公が語る醜い嫉妬だ。そんな自らの感情に気付き、向き合っていく。この一連の流れに納得できるかどうかで、本作に対する評価は変わる気がする。とりあえず一巻だけ、読んで見てはいかがだろうか。

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