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【漫画】その着せ替え人形は恋をする1 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

コスプレ・スクールライフ

情報

作者:福田晋一

試し読み:その着せ替え人形は恋をする 1巻

ざっくりあらすじ

五条新菜は雛人形の頭師を目指し、放課後に被服室で作業をしていると、いつもクラスの中心にいるギャル系美少女・喜多川海夢に「コス衣装を作ってくれないかな……?」と依頼される。

感想などなど

皆さんにはどんな趣味があるだろうか。

かくいうブログ主は、このブログそのものが趣味であり、かれこれ四年近く続けている。これから先も出来れば続けたいと思っているが、社会人になってからというもの、この趣味について誰かに話したことはない。

「休日何してるの?」というのは、話のネタに困った時の常套句であるが、その返答には毎回のように困ってしまう。ブログで漫画やラノベの感想を書いています……いや、言えない。

そんな好きを語ることができないストレスが、ブログという形になって表れているのではとさえ思っている。自分の好きを思うがままに発揮できる環境というのは、何よりも代えがたい宝であるように感じる。

その宝を手にする障害は、自分自身が抱える好きに対する ”気恥ずかしさ” であったり、周囲の人達と円満な関係性を築く社会性の現れだったりする。そんな言い知れぬ重荷を抱えた者達にとって、本作のヒロインである喜多川海夢、主人公である五条新菜は愛すべきキャラだった。

 

主人公である五条新菜は雛人形の頭師を志す高校生である。頭師というのは、雛人形の顔を作る職人のことだ。この漫画を読むまで知らなかったのだが、雛人形の製作工程は完全分業制で、「頭だけ」を描く職人もおり、彼はそれになりたいのだ。

その憧れの出発点は、子供の時に見た美しい雛人形を見て、一目惚れしたから。彼にとって美しさとは、その時見た雛人形が基準となっている。彼にとっての美とは特別なものなのだ。

だからこそ憧れ、他の人に一目惚れしてもらえるような人形を作ること――それが人生における一つの目標だと言えよう。

対する喜多川海夢は、クラスでも人気の高いギャル系美人で、友達のいない五条とは住む世界の違う人間だった。話したことは当然ない。しかし、その実態はエロゲやアニメ、漫画を愛するオタクだった。

しかもただのエロゲではない。〇辱系のわりかしえげつない作品を、未成年の女子高生がプレイし感動、挙げ句の果てにはその中のキャラクターのコスプレをしたいとまで願った。そのために、書籍を買ってコスプレ衣装を自作しようとまでする行動力がある。

その好きに対する真摯で迷いない行動に、五条も読者も心打たれる。読者としてはただ眺めることしかできないが、五条は彼女のためにコスプレ衣装を作ってあげるために行動を開始する。

この時の五条君が紳士なのだ。些か距離が近すぎるギャル・喜多川さんにドギマギしつつ、彼女の好きの願いを叶えるために、自分の時間や体力を削って作り出した作品の見事さは、一見の価値がある。

 

喜多川さんの五条君の抱えた悩みをド直球に解決するストレートな言葉が好きだ。それに対して、きっちり応える五条君の行動が見所であり、物語としての面白さを生んでいる。

互いに互いを、無意識に攻略していくような流れはラブコメに通じるところがあるが、それと同時に二人共が成長していく物語の側面もある。もっと早くに出会いたい作品だった。

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