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【漫画】その着せ替え人形は恋をする14 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

コスプレ・スクールライフ

情報

作者:福田晋一

試し読み:その着せ替え人形は恋をする 14巻

ざっくりあらすじ

冬コミで魅せたハニエルのコスプレが大いに反響を呼び、原作者にまで認知される始末。しかし、五条新菜の表情は暗く……。

感想などなど

恋愛漫画のギスギス展開は心がキューと締め付けられるけど読んでしまう。冬コミは誰からどう見ても大成功だったけれど、そこにスッと下りてきた暗い影は、こちらが思っているよりも深そうだった。

五条君が冬コミで脚光を浴びる海夢を見て何を感じたのか。そのドロドロとした何かは明確にされておらず、読者としても、海夢としても予想するしかない。そもそも自己開示が苦手なようであるし、自分の欲望を曝け出すことを恥ずかしいという感情を通り越して、悪いことと感じているように思う。

そんな状況で五条君の前に現れたのが、第一巻の冒頭にて「男の子のくせに女の子のお人形好きなのよ!」「気持ち悪い!」と強いトラウマを植え付けた少女・のんちゃんである。

忘れている方は第一巻の冒頭をチラッと見てほしい。五条君が雛人形の頭師になるという夢をひた隠しにするようになった原因であり、そのシンプルで強烈な「気持ち悪い!」というワードは、無意識に彼を雁字搦めにしていた。

その言葉がのんちゃんの口から出てくるまでの背景が、この第十四巻では描かれていく。

 

そもそも五条新菜の人生はかなり壮絶だ。彼は幼い頃に両親を亡くしている。まだ幼い子供にとって、その事の重大さは分かるだろう。彼は長いこと一人で引き籠もり、一言も口を利こうとはしなかった。

のんちゃんはそんな彼を何とか助けたいと思っていた。

律儀に毎日のように彼の家に行き、絵本を読み聞かせしていた。彼女は彼女なりに、彼を助けようとしているのが分かる。その彼女の行動は、少しずつ新菜の荒んだ心を、きっと癒やしていた。

そんな彼女の努力の一切を横目に通り過ぎて、彼に生きる意味を与えたのは、おじいちゃんの作った雛人形だった。彼は引き籠もっていた部屋を出て、頭師になるという立派な夢が出来た。

のんちゃんは、そのことが納得できなかったのだ。だからこそ飛び出した言葉が「気持ち悪い!」だった。

子供だからこそ言える残酷な言葉を、とっさに吐いてしまった彼女の後悔はかなりのものだったようだ。高校生になっても忘れられない。これはある種の呪いだ。

その呪いを共に受けた新菜は、そのことを宇佐見さんに相談する。「宇佐見さんって誰?」という方は、布とかについて色々と相談に乗ってくれた眼鏡の爺さんを思い出して上げてほしい。

宇佐見さんは、「被服の道に進みたかったが父に反対されて諦めた」という過去を語ってくれた。そこそこ年月を経た今だからこそ分かったことを彼は語ってくれる。

今思えば駄目なら駄目でよかった

これは歳を取ったからこそ言える言葉だったと思う。先の見えなかった当時の自分では、絶対に言えない言葉だった。そんな宇佐見さんが後悔していることは次のこと、たった一つ。

被服の道へ進まなかった事よりもあの時父親「それでもやりたい」と自分の思いをきちんとぶつけなかった事だ

自分の想いを告げる時が来たぞ、と読者も覚悟を決める時が来た。

 

あぁ、どんだけ好きなんだよ。知ってたけども。

好きな相手に好きなだけ好きだと伝えても良いと分かって、これまでの想いが溢れた乙女は強い。何というか可愛いとかいう感情を通り越して強い。喜多川海夢という乙女は最強なのかもしれない。

五条君には頑張って欲しい。

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