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【アニメ】「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」第五話【感想・解説】

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2020春アニメ化リスト

 

まず最初に

乙女ゲームの主人公であるマリアと無難な出会いをはたし、互いに互いをおとしあうという展開を見せてくれた第四話。第五話ではいよいよ本格的にマリアを攻略しにかかります。まぁ、完全に無意識ではあるのですが。その辺りの過程において、アニメオリジナルの演出が差し込まれるなど、制作陣の原作に対する理解度の高さが伺える第五話の感想・解説に進んでいきましょう。

用語・人物解説

カタリナ・クラエス

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© 山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
  • 商家の娘の格好をして、農民が作った農地を見学しに行く公爵家の娘。
  • 元々街にはお菓子などを食べるために、身分を隠して遊びに行くことが多かった。当然だが他の貴族はそのようなことはしない。
  • 学園内に畑を作っているということを隠しているつもりだが、全く隠すことができていないため、畑が作られているということは噂になっている。「貴族令嬢がそんなことをするはずがないから、平民の誰かが作っているのだろう」と語られているが、カタリナの母が実行犯に気付かないはずもない。
シリウス・ディーク

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© 山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
  • 成績は学年一位にして、ファンクラブのメンバー数もニコルを超えるとまでされている生徒会長。
  • ニコルとは一応幼馴染みではあるが、十歳の頃に顔を合わせてから十五歳になり学園で一緒になるまで、言葉を交わすことは一切なかった。十歳の頃には物寂しそうにしている目を見て親近感を覚えていた、と後にシリウスは語る。
  • 侯爵家の子息ということもあり、婚約を求める女性はたくさんいるが、その誰とも関係性を持ったことはないらしい。
マリア・キャンベル

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© 山口悟・一迅社/はめふら製作委員会
  • 平民でありながら光の魔力を持った乙女ゲームの主人公。
  • 平民では持つことが稀である魔力をその身に宿し、しかもその魔力が世にも珍しい光の魔力であったことから、同級生達からは忌避され、大人達からは『特別な子』として扱われ、父は母の浮気を疑い家を飛び出した。
  • 元のようにみんなで仲良くしたい、私のことをちゃんと見て欲しいという願いから、お菓子作りに励むことになったが上手くいかなかった過去を持つ。そんな彼女の努力を見て、お菓子を美味しいと口いっぱいに頬張って、彼女のためにいじめっ子達の前に立ち塞がってくれるカタリナに恋心を抱いてしまうのも無理はないだろう。

注目すべいポイント

カタリナとシリウス

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© 山口悟・一迅社/はめふら製作委員会

マリアとカタリナがいちゃいちゃするシーンから第五話は始まっていく。マリアの努力をさり気なく褒める辺り、カタリナの人間タラシ度の高さが伺える。また、当然のようにお菓子を作ってくるマリアの行動もポイントが高い。こうして二人が互いに互いを落とし合うことになる。

そして生徒会長とも親睦を深めていく。元々物怖じせずに話しかけていくことができる程度の、徹夜で乙女ゲームに興じるオタクとは思えないようなコミュ力を備え持つ野猿なので、それなりに誰とでも仲良くなれる。原作もだが、あまりクラスメイトとの話は描かれないが、かなり慕われていると思われる描写は多数存在する。

アニメでもシリウスに紅茶を淹れて貰ったことに対して、

「会長の淹れてくれたお茶はとても優しい味がしますね」

と言っている。ただ「美味しい」と言うのではなく、「優しい」と表現する辺り、メタ的な読み方をすると、とても重要なキーワードであるような気がしてしまう。実際、シリウスがハッとするような表情を見せ、カタリナの背を追うような目線を向けているシーンが挟まれ、意味深な印象を想起させる演出がなされている。

マリアと仲良くしたい!

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© 山口悟・一迅社/はめふら製作委員会

カタリナが辿る破滅フラグというものは、マリアの行動によるゲームのイベントによって変動していく。その破滅フラグの発生条件というものが、マリアの迎えるエンディングがハッピーエンドだろうがバットエンドだろうが関係ないという点が問題である。

またカタリナが虐めていないにも関わらず、マリアは裏で虐められていたというゲームとしての強制力があるということも解決すべき問題としてあげられるだろう。ゲームではマリアを虐めていた主犯格としてカタリナの名があがり、国外追放されたという背景がある。

もしかすると、(虐めいてないが)カタリナが虐めの主犯とされてしまうかもしれない。腹黒皇子であるジオルドはその程度のことしてしまいそうだし(実際はカタリナにベタ惚れだが)、その他どうようなことが起こるかは判別できない。

だったらマリアが虐められないようにしよう、という訳である。

しかし実際のカタリナはそんな難しい、ゲームの攻略のようなことは考えていないだろう。純粋にマリアを助けてあげたい、一緒にいたいという思いの表れが、マリアを虐めから守ってあげる手法を考えるに至り、しかし頭が足りないのでキースに相談する。キースの行動はある意味、ライバルを増やすということになるが、誰であろうと優しさを振りまく彼女のことを好きになったのだから、これはある種の宿命ということなのかもしれない。

イベントを奪うカタリナ

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© 山口悟・一迅社/はめふら製作委員会

炎の魔力をまでぶつけてくるという悪意の塊のような虐めを受けるマリアを助けたのは、悪役令嬢カタリナ・クラエスだった。土ボコという「土をボコッとさせる」だけの魔法だが十分に役立ってくれた。元々はキースの役割だったということだが、まぁ、キースは別にマリアに惚れてないし。今のキースは誰かの教育によって女性には優しくするようになっているため、魔法を使わず笑顔で彼女達を黙らせて遠ざけあしらっているだろう。

そこでカタリナが口にした言葉の数々は、これまでマリアが求めてきた言葉そのものであった。

簡単に説明すると、『マリアの努力を見ていたということ』『特別な子扱いしなかったということ』『友達としてマリアと呼んでくれたこと』の三つだろうか。これらに関しては改めて後々描かれる回想シーンと交えて説明していく。

マリアの街へ

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© 山口悟・一迅社/はめふら製作委員会

国外追放されても農民として生きていくために、農民が作った本格的な畑を見に行くカタリナ。公爵令嬢とはバレないように商家の娘として身分を隠しての行動である。しかし彼女は結構な有名人なので(侯爵家の娘、ジオルド皇子の婚約者、平民にも分け隔てなく接する etc)、バレている様な気もするが。

その過程でマリアの故郷を立ち寄ることになる。アポイントはなし(とりようもないのだが)の突撃訪問、家の場所すら知らないという状況だが、『特別な子』として有名なマリアの家は街の人は誰もが知っているらしかった。ひそひそと影で噂する様子を察するキースの有能さにも注目である。

ここでのポイントは『特別な子』として扱われるという意味である。マリアの場合には、愛されるという意味での『特別な子』扱いではなく、腫れ物を扱うかのような『特別な子』扱いであった。誰も彼女自身の性格や努力を評価しようとはせず、光の魔力を扱えるという彼女の努力とは関係のない場所しか見ようとしていないのだ。

学園でマリアを虐めていた女性達など分かりやすい。「光の魔力が扱えるから評価されてるんだ」「生徒会の人達も光の魔力が扱えるから仕方なく接しているんだ」というように常に光の魔力という言葉が、彼女の評価について回っていることが分かっていただけるだろう。おそらく街で言われ慣れている言葉の羅列、原作ではマリアがそういう言葉には慣れている、といった描写がある。

マリアの過去

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© 山口悟・一迅社/はめふら製作委員会

木から落ちてしまった友人を、光の魔力を用いて治癒したことで、魔力を、しかも光の魔力という特別な力を持っているということが判明したマリア。治癒された友人の怯えたような表情からも、魔力を持った平民に対する平民からの評価というものが伺いしれる。

この事件からマリアの周辺の状況というものは一変する。

まずは街での孤立。貴族との隠し子という噂もその孤立を加速させ、唯一の救いの場であるべき家庭ですら父親がいなくなったことにより崩壊。母親は娘に対してすら心を閉ざしてしまう。

光の魔力による『特別な子』としてではなく、自分というものを評価して欲しい、『努力を見て欲しい』という彼女の思いをあざ笑うかのように、彼女の作ったお菓子から逃げていくクラスメイト達。彼女にソッと手を差し伸べてくれる『友達』が一人でもいれば、状況は変わっていたかもしれない。

そんな彼女の抱える心の闇を解消し、救ってくれた人物は十五歳になってから現れる。そう、悪役令嬢カタリナ・クラエスである。

アニメ独自

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© 山口悟・一迅社/はめふら製作委員会

カタリナの母親周りの演出や心の声は、アニメで捕捉された独自の演出である。彼女が持ち出してきた型抜きや、カタリナが帰っていく中で娘と心を通わせて見せた笑顔など、原作を深く理解していなければできない演出が、違和感なく散りばめられており、アニメ制作陣に恵まれた作品であるということを実感させられる。

それにしても母親も美人である。

最後に

ラノベ原作をアニメ化した場合、多かれ少なかれ批判が出てくるものですが、本作においては個人的にないに等しいですね。やはり原作に対する理解度が高さと成功率は比例するような気がします。今後の展開にも期待がもてます。

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