※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
プロム
情報
作者:渡 航
イラスト:ぽんかん⑧
ざっくりあらすじ
海浜高校とのダミーのプロム計画を進めることで、無事に生徒会主導のプロムを開催できる運びとなり、勝負としては雪ノ下の勝ちという形式で終わりを迎えた。しかし、三人の関係性と願いに関しては、何一つ解決していなくて……
感想などなど
第十四巻を読んだ感想を一言で言うなれば、『遠回しすぎる告白だった』という他ない。というか、第十二巻にて、雪ノ下を助けるために、責任だとか勝負だとか散々な言い訳を取って付けてから助けるという行動をとった八幡の言動からして、もはや八幡の思いというものは明確で確定的ではあったが。
雪ノ下と比企谷という互いに捻くれて、思いを直接言葉にすることを避け続け、本物というおそらく二人とも共通した見解を持ち得ていないだろう何かを求めている似た者同士は、第十四巻を通して描かれる告白のような形でしか一緒になることはできないのだろう。
……あ。さらりと言ってしまったが、八幡の好きな相手は雪ノ下である。
ラブコメというジャンルにおいて、「主人公と誰が付き合うのか?」という問いに対する答えが、シリーズを通してのオチとなることが多い。ネット上ではヒロイン論争が巻き起こり、自分の押しキャラの魅力をキ……早口に語る人物も少なくない。
しかし本シリーズにおいては比較的早い段階で(ブログ主の主観として確定したのは十二巻だが)、「主人公の好きな相手」というのは決定していた。最初にも書いた通り、色々な言い訳を、小町の力も借りずに並べ立てて、あちこちを走り回っていた八幡の感情の向かう先には必ず雪ノ下がいた。これで実は「由比ヶ浜が好きだったんだ!」とでも言われたら驚きである。由比ヶ浜自身びっくりだろう。
しかし好きだから付き合うという単純なことができないからこそ、比企谷という人間は捻くれ者であり、そんな彼のことを待たずに自分から向かって行くほど真っ直ぐな人間ではない雪ノ下だからこそ、第十四巻のようなややこしい話になってしまった。
二人が清きお付き合いをするために立ち塞がる壁――いや、まぁ、二人が勝手に作っているだけなのだが――は二つほどある。一つは『奉仕部の存在』であり、もう一つは『二人が捻くれすぎている』ということである。
『奉仕部の存在』は三人にとって思い出の地であり、いつも一緒にいた居心地のいい場所である。第十一巻、意地悪な女の子である由比ヶ浜は全てを求め、八幡は本物を求めた。雪ノ下も由比ヶ浜も八幡の願いが叶うことを望んだ。
そんな一度は互いに思いを言葉にしあった関係性も、陽乃さんには共依存だと指摘された。
しかし三人の関係性というものは、そんな一言で言い表せるほどに単純なのだろうか。「いつか、きっと助けてね」と微笑みながら言った雪ノ下から八幡に向けられた感情は依存で、責任をとるとして必死に策を編みだして行動していた八幡の思いも依存と言っていいのだろうか。
第十四巻では八幡が追い求めていた本物としての、一つの答えを掴んだのだ……そう言っていいだろう。誰かのことを思い、悩み、悔やむことができる感情を、言い表す上手い言葉を、彼が口にできる日を願うほかない。
もう一度書くが、第十四巻は『遠回しな告白』だ。『二人が捻くれすぎている』からこそ成立する物語である。
そこに加わる一色いろはや、由比ヶ浜結衣という魅力的なヒロイン達。由比ヶ浜がこれまで流した涙も、一色いろはが本物を求めるためにした葉山への告白も、全てが無駄ではなかった。恋愛は間違えることがあったとしても、最後に笑顔で終わる形でしたいと心の底から思う。
そして形も色も様々に変えて、恋愛は一生終わらない。
みんながみんな、もがいて積み上げた青い春であるけれど、やはり彼・彼女の恋愛ラブコメはまちがっている。