まず最初に
「俺を好きなのはお前だけかよ」という長いタイトルの本作がアニメ化されました。タイトルで敬遠される方も、もしかしたらいるかもしれません。
本作を一言で説明すると『ラブコメをメタった作品』でしょうか。ラブコメ作品にありがちなシーンを皮肉り、期待される展開を(良い意味で)裏切ってくれます。原作も前情報も全くないという人は、できれば前情報なしで本作を見て欲しいです。まぁ、用語・人物解説くらいは見ても問題ないように編集しておきますね。
この記事を見に来る人が原作既読済みかどうか定かではありませんが、今後の大きなネタバレはしないように現状を解説し、今後の展開を理解するために必要な情報をまとめました。
用語・人物解説
如月 雨露
- どこにでもいる平凡な高校生。「単純作業が似合う」という理由で生徒会に推薦され、書記として生徒会に所属している。月を抜くと『如雨露(ジョーロ)』と読めるので、あだ名はジョーロ。
- 妙に距離感が近い可愛らしい幼馴染みや、母親らしからぬコミュニケーションを取ってくる母親、学校一の美人とされている生徒会長、図書委員兼ストーカーといった個性豊かな面々につきまとわれる。
- 心の声はかなり毒舌であり、キャラクター達の機微にもめざとく反応する。つまりラブコメキャラにありがちな『鈍感』でも『難聴』でもない。
日向 葵
- ジョーロの幼馴染みで、毎日二人で並んで登校している。
- テニス部のエース、運動神経は抜群。ただし成績は残念。
- 名前を入れ替えると『向日葵(ひまわり)』となるので、ひまわりと呼ばれている。ちなみに向日葵の花言葉は「憧れ」「あなただけを見つめる」。
秋野 桜
- 美人で成績優秀、運動神経も抜群。まさしく完璧超人の生徒会長。
- 人に教えるということや、マニュアルから外れたようなような事態に遭遇することが苦手。
- 野を抜くと『秋桜(コスモス)』と読めるため、通称はコスモス。ちなみにコスモスの花言葉は「調和」「乙女の純真」。
三色院 菫子
- 昼休みいつも図書室にいる少女。可愛い。
- これまで本を読まなかった女子高生におすすめを聞かれ、ドストエフスキーを薦める鬼畜。物語は天才と言われるのも納得だが、文章は読みにくくて仕方がないと思うのは自分だけだろうか。
- 名前を略すと『三色菫(パンジー)』となるため、通称パンジー。花言葉は「もの思い」「私を思って」。
大賀 太陽
- 野球部のエース。ジョーロの中学時代からの親友。
- 昨年の野球部は地区大会の決勝まで勝ち進むも、あと一歩追いつかず甲子園出場を逃す。
- 名前の太陽、明るい性格から、通称はサンちゃん。花の名前を冠するヒロインに対して、空に燦々と輝く太陽かぁ……。
ジキル博士とハイド氏
- ロバート・ルイス・スティーヴンソン著。ジキル博士とその友人の弁護士による独白から構成される作品。名前だけは知っているという人も多いのではなかろうか。
- 二重人格を題材としており、当時としてはかなり批判も多かった。しかし、今も尚語り継がれる本作は名作と言っても良いだろう。
- スティーヴンソンが書いた代表作は『宝島』。
注目すべきポイント
可愛い幼馴染み
平凡だと名乗る高校生は大抵の場合、平凡ではない。どこかしらで平凡ではない点を生み出してキャラクターに個性を出そうと多くの作者は苦心することとなる。では、本作ではどのように個性を出しているのだろうか。
まず普通の高校生には可愛い幼馴染みはいない。しかも毎朝一緒に走って登校する関係性は、もう付き合ってるより付き合ってるだろ! と個人的には思う。皆さんはどう思われるだろうか。
当然だがクラスメイト達も「二人は付き合ってはいないけれども、幼馴染みとして男女の深い関係性を築いている」と思っているらしい。サンの反応や台詞が分かりやすいだろうか。
原作の台詞より抜粋すると、
「でさぁ、お前らっていつから付き合うの?」
「ひゅーひゅーお熱いねぇ!」
「はっはー! 照れることはないんだぜぇひまわり! お前ならジョーロはイ・チ・コ・ロさ!」
というようにかなりド直球に二人の関係性を弄っている。アニメではかなりマイルドになっていると言えるだろう。その他クラスメイトからの認識も大差ない。後々の展開を考えると、ひまわりの心境はかなり複雑だっただろうが、その話は後々。
あぁ、きっと彼女とジョーロの恋愛模様が描かれていくんでしょうね。楽しみです。
美人な生徒会長
美人な生徒会長は都市伝説だと思っている頃が自分にはありました。
紫のようなピンクのような(まぁ、コスモスの色なんでしょうが)髪色をした美人生徒会長が、この学校における生徒会長であるらしい。原作では(ジョーロ好みの)巨乳として描かれ、イラストを見る限りも相当な大きさだが、アニメでは少し大人しくなっている気がする。是非とも原作を買って確認して欲しい。
彼女が教室まで来た理由は『ジョーロを迎えに来る』ため。甲斐甲斐しい彼女かな?
そして生徒会室での仕事に勤しむことになる訳だが、アニメではかなり多くのシーンが省かれている。今後の展開に繋がる伏線や、パンジーとの毒舌合戦、予算を決定するための『部活の視察』と称して、野球部やテニス部、サッカー部の活動場所へと足を運ぶ会長とジョーロ……というように。
その一連のシーンによって、パンジーの性格やイメージ、『コスモスとひまわりの中が悪い』ということが描かれている。省かれてもストーリー上の問題はないが、驚きは少しばかり軽減される。
一応、アニメでも『ジョーロを迎えに来たと言っているコスモスを威嚇するひまわり』という形で『コスモスとひまわりの中が悪い』ということは描かれている。
ノートにジョーロとのお出かけ計画をまとめているコスモス。どうやら前々からジョーロを誘うことは計画していたようだ。
さて、このノートはジョーロのために作られたノートなのでしょうか。そう考えると、わざわざクラスにまで迎えに行ったことにも説明がつきます。
……あぁ、きっと彼女との甘酸っぱい恋愛が描かれていくんだろうなぁ。
二人からのデートのお誘い
『数学Ⅱ+Bのカバーがかけられた本』を前に予習を敢行しようとするジョーロ。学校でも随一の美人にデートに誘われようとも浮かれようとせず、学生としての本分を忘れようとしない立派な男ですね。
そうしている間に、日曜日の予定もひまわりとのデートで埋まってしまった模様。モテる男は辛いです。
ハーレムラブコメかぁ……嫌いやないで。
土曜日
この一連の物語の運び方は原作と大きく異なっている。
まず原作では『部活の視察』と称して訪れた野球部のグラウンドで、飛んできた流れ弾からコスモス会長をジョーロが庇った。その際に壊れたジョーロのスマホケースを弁償するために、コスモス会長がジョーロを買い物に誘うという流れだった。助けられたコスモス会長が頬を赤らめるシーンは可愛らしい(アニメで見たかった)。
つまり、原作では二人がデートをすることになったのは偶然である。いずれコスモス会長がジョーロを誘ったかもしれないが。
アニメではコスモス会長が少しばかり積極的になっているということなのだろうか。いいですね。
しばし、幸せそうな二人のデートシーンが続く。一人の男のために弁当を作り、ノートに計画までまとめ、楽しそうに笑顔を浮かべるコスモス先輩は理想の彼女と言えるだろう。
さて……
ベンチ1
楽しいデートも終わり、帰路へ着くわけだが。どうやら話があるらしいコスモス先輩。
紅く美しい夕陽に照らされ、紅く色づく頬。緊張に意味もなく動く手。ごくりと唾を飲む込み、言われるがままベンチに座るジョーロ。手は軽く力を込めて膝の上、自然と背筋も伸びきり、今か今かと彼女の言葉を待つ。
……これは? もしかして?
ラブコメにおけるラストスパート、一番盛り上がるシーン、これまでのシーンが走馬灯のように思い出され、すれ違っていたこれまでの思いが通じ合う……
「君の親友の大賀太陽君が、好きなんだ!」
回想1
昨年の夏の高校野球。地区大会の決勝まで駒を進めるも、あえなく敗北。皆が涙を流す中、明るく振る舞い皆を鼓舞した大賀太陽。
しかし、彼は裏で泣いていた。そんな姿をコスモス先輩は東口から見ていたらしい。
その時、酷く心を打たれ、恋をしてしまったらしい。会長権限を用いて行われた『部活の視察』は野球部のサンを見るため。『ジョーロを迎えに来る』ために教室にわざわざ来たのは、サンに会うため。ジョーロを遊びに誘ったのは、ジョーロにサンとの仲を取り持って貰うため。
つまりコスモス会長という女は、好きでもない男を遊びに誘い、わざわざお弁当を作ることで、男子高校生の純情を弄ぶことも厭わないアバズレということですね!
日曜日
『ミートワールド チキン王国』という腹が減りそうな映画を見に来たひまわりとジョーロ。何やら様子がおかしいジョーロを心配して、抱きついてあげる(?)ひまわり。下手なカップルでもしないようなことをしているが、二人は付き合っていない。自分の体の変化に疎い女子は兵器であるということを、この作品で学びました。
もうこれは間違いありません、二人はいずれ男女を意識するようになって、少し距離が離れながらも何だかんだで惹かれ合ったりするのでしょう。幼馴染みが不遇な扱いを受けることが多い古今東西ですが、本作ではきっと……きっと報われてくれるでしょう。
ちなみにジョーロはブロッコリーが好きだとヒロイン達に思われています。理由はよく分かりません。
ベンチ2
楽しいデートも終わり、帰路へ着くわけだが。どうやら話があるらしいひまわり。
紅く美しい夕陽に照らされ、紅く色づく頬。緊張に意味もなく動く手。ごくりと唾を飲む込み、言われるがままベンチに座るジョーロ。手は軽く力を込めて膝の上、自然と背筋も伸びきり、今か今かと彼女の言葉を待つ。
……これは? もしかして?
ラブコメにおけるラストスパート、一番盛り上がるシーン、これまでのシーンが走馬灯のように思い出され、すれ違っていたこれまでの思いが通じ合う……あれ、この展開はさっきも見た……
「ジョーロの親友のサンちゃんが、好きなの!」
回想2
昨年の夏の高校野球。地区大会の決勝まで駒を進めるも、あえなく敗北。皆が涙を流す中、明るく振る舞い皆を鼓舞した大賀太陽。
しかし、彼は裏で泣いていた。そんな姿をひまわりは西口から見ていたらしい。
その時、酷く心を打たれ、恋をしてしまったらしい。『ジョーロを迎えに来たと言っているコスモスを威嚇するひまわり』はサンちゃんに近づこうとする女狐に対する警戒。『コスモスとひまわりの中が悪い』のは同じ男を好きになってしまったことで仲良く出来ないだけのこと。日曜日にジョーロを誘ったのは、自分とサンちゃんの仲を取り持って貰うため。
つまりひまわりという女は、好きでもない男に胸を押しつけ、異常とも思えるほどの距離感で近づいていく男の敵もといビッチということですね!
苦悩するジョーロ
『数学Ⅱ+Bのカバーがかけられた本』で予習しようとしていたのは、数学ではなく恋愛だったのですね。やり方はどうであれ、彼女を作り、青春を過ごそうと努力していた訳です。
そんな彼にとって、この二日は地獄だったでしょう。なにせ明らかにカップルの距離感で近づいてくる幼馴染みは自分を男性として見ておらず、自分のことを迎えに来ていると思っていた生徒会長は自分の隣の親友を見ていたのですから。誤解していたことによる恥ずかしさ、気付くことのできなかった自分の無能さ。
まぁ、原作を読んでいた自分も最初は騙されたのですから……タイトルで「……まさかな」と二人にデートに誘われた時点で察してしまいましたけど。
とりあえずジョーロは二人に協力し、振られた片方の女子高生と良い関係になろうと画策することに。良い性格していますね。
恋する二人
とりあえず二人とサンちゃんに繋がりを持たせようとする訳だが、二人は想像以上に無能で上がり症であるらしい。この展開は『とらドラ!』を思い浮かべてしまいました。涙よりも拳が出る方が早い大河の方がはるかにヤバいですが。
ジョーロの用意した台本を間違え、彼女の間違いを修正しつつ、擁護するジョーロの努力を無駄にしようとするひまわり。
ジョーロの用意した台本の中盤をすっ飛ばして最後だけ言ってしまい、ジョーロの助け船に大げさに喜ぶコスモス。
無理難題にも臨機応変に応えているにもかかわらず、感謝の一言すらない二人。良い性格してますね。昼休みに逃げ出したくなるのも分かるでしょう。
昼休み
パンジーが巣くう図書室にやって来たジョーロ。人なんて滅多に来ない場所であるため、静かに過ごしたいジョーロにとっては憩いの場所(?)。
しかし、今日はゆっくり過ごせない模様。どうやらパンジーは『ジョーロがひまわり、コスモスの恋路を応援すべく行動している』という状況を理解しているようです。当然ですが、ジョーロはそのことを誰にも話していません。
では何故、パンジーはそのことを知っていたのか?
それを理解するために、以下の画像を参照して貰いたい。
お分かりいただけただろうか。そう、これまでのシーンの至る所でパンジーが登場していたのである。
つまり彼女は……
ベンチ3
昼休み、二人きりの空間。どうやら話があるらしいパンジー。
まだ陽の昇っている屋外。窓から差し込む柔らかな光に包まれる。緊張に意味もなく動く手。ごくりと唾を飲む込み、言われるがままベンチに座るジョーロ。手は軽く力を込めて膝の上、自然と背筋も伸びきり、今か今かと彼女の言葉を待つ。
……これは? もしかして?
ラブコメにおけるラストスパート、一番盛り上がるシーン、これまでのシーンが走馬灯のように思い出され、すれ違っていたこれまでの思いが通じ合う……あれ、この展開はさっきも見た……いや、待て。ということは彼女もサンちゃんが好きなんだろう。そうだ、そうに違いない。
「ジョーロ君が好きなの」
俺を好きなのはお前だけかよ
ちなみに
外で手帳を持って走り回っているポニーテールの彼女は、二巻で登場する翌桧ちゃんですね。
最後に
かなり駆け足でしたが、アニメは尺に限りがあるので仕方がないでしょう。ラブコメということで解説するようなこともないかなと思いましたが、いざ書いて見ると書けるものですね。アニメを見ていない人はアニメを見ましょう。
原作の方が主人公の毒舌が楽しめるので、おすすめです。文体としては『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』が近いでしょうか。本が好きなパンジーとの絡みでは古典小説のネタが時折挟まれているため、その手のネタが好きな人にはたまりません。
スクショで失敗して全ての画像に黒い帯が入ってしまっていますが、次回から解消していきます。ではまた次にお会いしましょう。
アニメを見るなら
「俺を好きなのはお前だけかよ」一巻の感想はこちら