工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

コップクラフト6 感想

【前:第五巻】【第一巻】【次:第七巻】
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

二つの世界と二つの正義

情報

作者:賀東招二

イラスト:村田蓮爾

ざっくりあらすじ 

市長選挙の最中、市長候補の一人が射殺される事件が起こる。その事件を境にこれまで以上に対立を深めていく地球人とセマーニ人。混沌がサンテレサ市を襲い、ティラナとマトバの溝が深まっていく。

感想などなど

これまでセマーニ人と地球人、それぞれの正義や文化、これまでの因縁が入り乱れる事件の数々を、ケイとティラナの二人が協力することで解決してきました。本当に色々なことがありましたね。

最初は仲が悪かった二人も、互いのことを考えて行動できるようになっています。信頼関係を築けていると言っていいでしょう。

そんな二人に、今後のセマーニ人と地球人の関係性を変えてしまうような大事件が襲いかかります。どんな事件なのか? 何が問題なのか? をまとめていきましょう。

 

事件の概要はあらすじに示した通り『サンテレサ市長候補の一人が射殺された』というもの。

射殺された候補者の名前はネイサン・カーンズ。政治的には中道左派(穏健的な左派思想)であり、ケイ曰く「他よりマシ」。そんな彼が、セマーニ人の男に殺される事件が起きたのだ。この事件はテレビで中継されている演説中に行われたため、犯人はすぐに特定し、射殺された。これでめでたし、めでたし……といって解決するような単純な話ではない。

この事件の問題はたくさんあるが、特筆すべきは『犯人の動機が分からない』ことと『銃の入手経路が分からない』ということだろう。政治的にどのような思想を持っていたか調べても、犯人はこれといって過激な思想を持っていたような節はない。また、拳銃を入手できるような経路が何一つ暴き出せなかった。

そこでケイは考える。「もしや……ゼラーダ?」と。

ゼラーダは第一巻にてジャック・ロスと協力し、妖精爆弾を用いたテロを画策した魔術師であり、死人操りの術と呼ばれる高度な魔法を操る老人のことである。思い出していただけただろうか?

ティラナに調べて貰うと、どうやら犯人からは死人の匂い……つまりゼラーダに操られた痕跡が認められた。どうやらゼラーダが裏で暗躍していることは間違いないようだ。

ではゼラーダの目的は一体なんなのだろうか?

 

ここで他二人の市長候補について説明しておこう。

まず一人目はモダ・ノーバム。第三巻にて登場した神官で、ケイにティラナを殺させようとした男で、薬物中毒の末にやり捨てられ殺された娘の死すらも利用した父親である。思い出していただけただろうか。

政治的な立場としては「左派」、一言で言うならば「セマーニ人にも人権を」。これは分かりやすいはずだ。元々はセマーニ人の人権派として名を上げた人物であるのだから、左派として政治の舞台に上がってきたのは当然と言えよう。

そして二人目はドミンゴ・トゥルテ。この男は初登場だろうか(もし出てたら、ごめんなさい)。政治的な立ち位置としては「極右派」、一言で言うなれば「宇宙人は宇宙に帰れ」。

さて「中道左派」の候補者が死んだことにより、「右派」と「左派」の両極端な派閥が残ってしまった。決して悪いとは言わないが、セマーニ人と地球人が共存しているこの市で大小含め争いが起こることは避けられないだろう。

ケイ達はカーンズ殺害の犯人として、対立候補の二人を疑う。「殺人が起きて、一番特をするのは誰か?」ということを考えれば当然の疑いだろう。一市民である有権者ですら、この状況では対立候補者を疑うのではなかろうか。

そんな中、モダ・ノーバムが第二の被害者となってしまう。容疑者の一人だっただけに、ケイ達は困惑する。さらに犯人の男はどうやら地球人であるらしい。

サンテレサ市に住民達からしてみると、「中道左派」の人間をセマーニ人が殺し、「左派」の人間を地球人が殺しているという状況に見える。もはや地球人とセマーニ人の戦いに見えないだろうか。

事件はさらに複雑となり、市全体を巻き込む大事件へと発展していく。正義とは何か? セマーニ人と地球人は共存ができるのか? 数々の難題を投げかけてくる事件であり、色々なことを考えさせられるストーリーでした。

【前:第五巻】【第一巻】【次:第七巻】
作品リスト