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【漫画】ストライクウィッチーズ零 1937 扶桑海事変(1) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

一つの国の命運が掛かっている

情報

原作:島田フミカネ&ProjektKagonish

漫画:にんげん

試し読み:ストライクウィッチーズ零 1937 扶桑海事変 (1)

ざっくりあらすじ

若き坂本美緒が体験する扶桑海事変の顛末を描いた「ストライクウィッチーズ」の原点。扶桑に押し寄せる『怪異(=ネウロイ)』の大群、それをどう押しとどめたのか。すべての真実が語られる。

感想などなど

ストライクウィッチーズとは。

『怪異(=ネウロイ)』と呼ばれる謎の飛翔体による侵攻を防ぐため、魔導エンジンを搭載したストライカーユニットを開発。それを唯一操ることのできる魔法力を持った『魔女(=ウィッチ)』を集め軍隊を組織した。こうして始まるネウロイ VS ウィッチの戦いを描き、アニメに漫画、小説と幅広く展開するメディアミックス作品である。

本作『ストライクウィッチーズ零』は、ストライクウィッチーズシリーズの中では最も時系列的には古く、始まりの作品と言える。ただし、軍隊の置かれている状況や、国際情勢、その他の設定がかなり複雑なものとなっている。ストーリーも全体を通してかなりシリアスに描かれており、主人公である坂本美緒が活躍、もとい覚醒するのは二巻からとなっている。

ストライクウィッチーズの導入としては、501部隊の活躍を描いた「ストライクウィッチーズ」は三期+OVA+劇場版とボリュームは十分。502部隊の活躍を描いた「ブレイブウィッチーズ」に、ネウロイで傷ついた人々を癒す活動をする音楽隊の活動を描いた「ルミナスウィッチーズ」などまで多方面に描かれており、素直にアニメを見るべきだろう。

そうしてアニメを見た後に本作を読むと、坂本美緒の意外な過去や幼いころの姿などを見ることができて新鮮だ。アニメでは敵なしで、冷静沈着な戦乙女の少佐になる前には、苦労した時代もあったのだな……と感慨深いものがある。

また、アニメで描かれる時系列では、すでに判明しているネウロイの弱点や特性などが、本作で描かれる時点では判明していなかったりする。それらを多くの犠牲と共に解き明かしていく過程は、心に来る。

 

魔法に関する重要な設定として、ウィッチーズはそれぞれ使い魔(自然界に存在する精霊)と契約しており、その力を借りることで魔法力を駆使した魔法を使うことができる。その使用できる魔法力の量は生まれ持った素質が大きく作用し、ある程度の魔法力を保持していなければストライカーユニットを操作することができない。

また使い魔の種類や特性に応じて、固有魔法というものが使えたり、使えなかったりする。今回の主人公である坂本美緒の場合、遠くまで見渡すことのできる魔眼を有している。アニメではそれを駆使して戦闘を優位に推し進めている。

ただし、幼いころの彼女は魔眼を上手く使うこなすことができなかったようだ。そのために常に右目に眼帯をしており、ウィッチとしての訓練を受けることもできずにいた。アニメで空を飛んで単身でネウロイに挑む勇敢な姿を見た者にとってみれば驚きであろう。

それでもウィッチになることを諦めきれない坂本美緒の胆力が垣間見える第一話。避難しろと言われている最中、水平線の彼方から軍部が発見できていない未確認のネウロイを発見した坂本美緒が、整備不十分なストライカーユニットを装着して情報を伝えに行くストーリーは、どこか宮藤芳香に似ている気がする。

そんな彼女の師匠である北郷章香が、めちゃくちゃかっこいいのだ。

刀を持って三体のネウロイを相手に一人で挑む。彼女の生き様が、坂本美緒の人格形成に大きく関わってきているのだろうと分かる。「私にはネウロイから世界を守るなんてできない」と言い、だからこそ「精々この舞鶴の町と大切なものを守りたい」と語り、そのために使命を全うする。

 

扶桑海事変というサブタイトルがついているが、この第一巻はその事変が起こる前の話となっている。ネウロイからの侵攻をギリギリで食い止めつつ、ストライカーユニットの技術が少しずつ向上していくことができたため、戦況を優位に推し進めていく希望に満ちた日常だった。

ここからどう戦艦長門を含む艦隊33艘による大規模作戦、多くのウィッチの犠牲を生んだ扶桑海事変に繋がっていくのか。不穏なプロローグや語りが、不安を煽ってくる。ストライクウィッチーズの深みに嵌りたいならば必読な一冊であった。

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