工大生のメモ帳

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タタの魔法使い3 感想

【前:第二巻】【第一巻】【次:第四巻】

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

夢は一種の呪いであって……

情報

作者:うーぱー

イラスト:佐藤ショウジ

ざっくりあらすじ

1000名を越える死傷者を出した私立折口大学付属高校の転移事件は解決したかに見えた。しかし、異世界に取り残された45名の生徒達は、校舎崩壊前に生徒会が立てていた計画に従い、タタに会いに向かうべく『将来の夢』を武器にサバイバルを続けていた。

感想などなど

第二巻では校舎ごと異世界の地中に転移して、薄暗く閉鎖された校舎内でのサバイバルが描かれていた。本作では、その校舎からギリギリで外に出ることが叶った生徒達によるサバイバルが描かれている。つまりは二巻のサイドストーリーである。ボリュームや内容的にはサイドには収まらないものとなっているが。

物語としての描き方はこれまでと同じように、生き残り日本に戻ってきた人達への取材形式であり、その独特な形態と情報量の多さは顕在。

登場人物はかなり多く、それぞれの叶えたい夢と関係性をきちんと理解しなければいけない。まぁ、1も2も同じ感じだし、ここまで読んできた人ならば問題はないだろう。

一つ厄介なことを上げるとすれば、生徒の内の二人がFPSゲームのキャラクターになること(正確に言うと違うが)を『将来の夢』として書いていた。ブログ主はFPSを触ったことがないため、イマイチ設定を掴みにくい部分があった(キルストロークとか言われても知らなかった)。

そして、1や2と比較してもシリアスな要素が多かったように思う。醜い虐めや生き別れの姉弟による禁断の恋愛、教師に振られた男子生徒と、(吊り橋効果もあるだろうが)生徒に恋心を抱いた教師、一度振られてもなお恋心を抱き続けた生徒……それらの重たいバックボーンを抱えた生徒達によるサバイバルが上手く行くわけがない。

 

その上、とある生徒の夢である『人狼ゲーム』や異世界の人々による呪いが、サバイバルだけでも大変な彼らに暗い影を落とす。

人狼ゲームとは、村人と狼に別れて行う騙し合いのゲームであり、1日に1人、狼が村人を殺していくことを村人が阻止するゲームである。色々な役職がいたりと、細々としたルールはGoogle先生に聞いて貰いたい。

……つまりは彼らには命を賭けた騙し会いゲームが課せられるわけだ。これが非常に厄介で、ただでさえ協力しなければいけないというのに、互いに疑う最悪な状況となる。本作においては登場人物が死なないということは通用しない(まぁ、生き残った人は分かっているので、誰が死ぬのかは予測できるが)。死ぬキャラは皆、かなり悲惨な最後を遂げることが多い。

騙され殺され、嫉妬で殺され、異世界人に殺され、絶望して死んで……心の安まる時というものがない。そこに良い人だとか、悪い人だとかはあまり関係ない。

極限状態で生き残るのは、運が良い奴か、要領が良い奴と相場が決まっている。本作を読んでいる仮定で「この人好きだな」とか「死んで欲しくないな」という人が出てくることだろう。さて、その人はどんな結末を迎えるのだろうか?

 

ブログ主の場合、二巻と三巻を読むまでの間でかなりの時間が空いてしまった。自分のような被害者を生まないためにも、二巻をしっかりと読み終えた後に三巻を読み進めることをお勧めしたい。一応、一巻も読み進めて欲しい。

なんと一巻と二巻のキャラが重要な立ち位置で登場する。「……誰だっけ?」と首を傾げてしまえば、驚きや感動も半減だろう。

そして、本編はおそらく完結編だろう(続けようと思えば続けられる気もするが)。後書きでは、『当初の構想通り』だと作者は言っている。続けるにしても全てが蛇足となってしまう。これらの作品は青木海が書き始め、青木海が書き終えなければいけない。そういう意味で、これ以上ない終わらせ方だった。一応、四巻のリンクを貼れるように準備しておくが、四巻が出てからの評判が良くない限り感想を書くことはないだろう。

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