工大生のメモ帳

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ダブルブリッドⅩ 感想

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作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

死の恐怖を忘れるなかれ

情報

作者:中村恵里加

イラスト:藤倉和音

ざっくりあらすじ

”怪” と人、二つの血を持つダブルブリッドである片倉優樹の率いる第六課の面々と、片倉晃と関係が深い『Ωサーキット』、鬼斬りに浸蝕された山崎太一朗。全ての結末はどうなるか。

感想などなど

八牧が死んだ第七巻から、第八巻にて太一朗を殺す覚悟を決めた面々。第九巻では虎司と太一朗が殺し合い――という名の殴り合いを行った。怪の姿を晒した虎司を救ったのは、クラスメイトのただの人間である安藤希であった。

第十巻ではいよいよ太一朗を殺すために動き出すことになる訳だ。ここでは、これまでの物語で提示された謎を整理しておく。細かな点を除くと、以下の三つだろう。

一つ目は『優樹の違和感』である。これまでの優樹は太一朗に関する記憶というものが消え失せており、さらには左手が右手になっていて、右目がなかなか復活しない。主が関わっているだろうことは明らかであるが、それは解決せねばなるまい。

二つ目は『片倉晃に関すること』である。体に小さな鬼殺しを宿しており、主に対して過剰なまでに執着する少年。仲間と度々、十年しか生きられないと語っている。そして何度も登場する「Ωサーキット」という単語。不穏な雰囲気が漂う彼の出生、その全てが第十巻で明かされていく。

三つ目は『太一朗の倒し方』である。これまでの話は八牧を殺した太一朗を殺すために作戦を立てる話が描かれていた。そのための弱点として、土や光がない場所で戦わせたり、水(とくに海水)に沈めたり、炎で燃やし尽くしたり、誰か怪を一人殺させたりするなどの方法が提示された。しかし、正攻法で挑んだ八牧は勝てなかった。

では、どのように物語を終わらせるのか。

とりあえず上記三つについては、明確な説明が行われていく。

 

この作品に対する感想は、誰を主人公と考えるか? で、大きく変わっていくように思う。

第十巻を通して太一朗と優樹達との戦いが描かれる。力量差的には太一朗が勝っているが、数的には優樹達が勝っていると言えるだろう。つまりはどっちが勝っても負けてもおかしくない。

物語としてはどっちが勝ったとしてもそれなりの終幕を迎えることができるように思う。太一朗死亡エンド、優樹達全滅エンド、共倒れエンド……「鬱度が高い」「救いがない」と思われるかもしれないが、これまでの物語自体、十分すぎるくらい鬱だった。

一切、救いなんてものはないように思えた世界。少しずつ希望が見えては、絶望的な状況に突き落とされるような感覚。多くの読者が、救いを求めて読み進めていくはずだ。少なくとも自分はそうだった。納得のいく結末が欲しかった。

そして迎えた最終巻。

この物語が迎える結末というものは、そう単純なものではない。誰が勝ったとか、誰が負けたとか、そういう概念で説明できる話ではなかった。

強いていうならば、皆が皆、納得のいく結末を迎えたと言うべきだろうか。最後の最後まで、その身を削って戦っていたし、自分の思いというものを向けるべき相手にぶつけていた。

薄暗い世界でもがく彼・彼女達が迎える結末を、是非とも見て欲しい。心苦しくなりながらも読み進めて欲しい。

今後おそらく忘れることは出来ない結末だった。誰も後悔なんてしない、胸糞の悪い鬱ではない、とだけ最後に言っておこう。

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