工大生のメモ帳

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【漫画】ダークギャザリング8 感想

【前:第七巻 】【第一巻】【次:第九巻】

※ネタバレをしないように書いています。

ゴースト・スタンド・バトル

情報

作者:近藤憲一

試し読み:ダークギャザリング 8

ざっくりあらすじ

母親への恨みを振りまく少年の霊に対抗すべく、卒業生『魄啜繚乱弟切花魁』を呼び出した。危険度Sランク『旧I水門』での戦いの行方は……。

感想などなど

危険度Sランク『旧I水門』で現れる霊は、スケッチブック片手に抱え、タッパーに詰められた肉団子を食べている少年でした。

抱えられたスケッチブックには、彼が母親に虐待されていること、母親が父親を殺害し ”肉団子” にしたこと。父親だけでなく、叔父さんも殺され、怖くなって逃げた少年ですら、追い詰められた水門で刺し殺され、彼もまた ”肉団子” に……。

そんな少年は母親に対する憎しみに囚われ、母親を肉団子に変えて食べてしまった。そこで彼の復讐は止まらず、目に見える人間の全てが母親に見えてしまうようになってしまったため、ただひたすらに人間を肉団子に変える悪霊に変わってしまったという訳だ。

「純粋で、無差別な憎悪の発露――」という台詞が作中にあるが、これこそが少年の呪いの元になっている。いわゆる終わりがないのだ。とっくに復讐は果たしているし、既に死んでいる彼の空腹は満たされることもないのだ。

そんな少年は敵としてあまりに厄介過ぎる。彼はスケッチブックに対象の人間の絵を描くことでストックし、肉団子にいつでもすることができるようになる。夜宵たちは第七巻でスケッチブックに描かれてしまっているので、ストックが尽き次第、肉団子にされてしまう。

夜宵たちが勝つためにはスケッチブックを奪う必要があって、そのギリギリの戦いを制した第七巻。少年の分霊による風呂場での惨殺ショー、見えない手によって川に沈められての溺死……多彩な攻撃の数々に翻弄される戦いは、第七巻を読んで確認して欲しい。

第八巻からは卒業生『魄啜繚乱弟切花魁』による反撃が始まる!

 

卒業生『魄啜繚乱弟切花魁』とは、第六巻にてラブホから回収した花魁の霊である。これまで霊同士の相性を考えて卒業生を召喚してきたが、今回も例外ではない。周囲にいる霊を吸収し回復・強化される霊への特攻を持つ花魁の能力は、吸収である。

彼女が踊れば美しい蝶が羽ばたいていく。その蝶に触れた者は、精気を根こそぎ吸い取られ、それを糧に花魁は強化されていく。腕を潰されようが、頭を潰されようが、瞬時に回復して何事もなかったように立ち上がる花魁。

彼女の能力はそれだけでは終わらない。蝶に力を吸われた者は、彼女が生前に罹患していた病に冒されることとなる。体中に瘤ができ、頭痛・発熱・嘔吐の症状が出て、正常な思考が奪われる。

これだけでも十二分に強すぎるのだが、さらに第三の力まで振るわれる。その発動条件はあまりに切なく、かつてはその美しさで多くの男達を魅了した花魁にとっては辛いものである。

少年の過去や、花魁の過去を始めとして、思わず「悪霊になっても仕方ないな」と思ってしまうような背景を持つ者が増えてきた。この世界では良い人が悪い人に人生を潰されると、その復讐の過程で悪霊に身をやつす。

復讐によってこの世への未練は果たされたように思うが、人の心というものはそう単純ではないのだろう。少年 VS 花魁の戦いの決着は、霊に対しても善性を期待してしまう。

まぁ、そんな気持ちは第八巻の後半で叩き潰されるのだが。

 

これまでたくさんの悪霊と出会ってきた。人は霊になる過程で死という手順を踏む。それによって生前の生き様や思想は、死ぬ程度では変わらないようであった。死に至るまでの過程で歪められたものは、そう簡単には戻らないようだが……少年を見ていると霊にも救いを与えたくなるのはブログ主だけではないと信じたい。

そんな霊達には、霊特有の社会が形成されているように見え、そこには弱者は喰われ、強者が支配する単純明快な暗黙のルールが存在していた。

忘れそうになるが最終目標は、夜宵の母親を喰らった空亡であるのだが、彼女達が挑むのはそんな霊社会における裏ボス。まだまだ彼女達の戦いは先が長そうである。

それにしても、花魁の過去編しかり、旧I水門に一件落着後の後始末の惨事しかり、夜宵の学校で過去に起きた事件しかり。胸くそ度が高い巻であった。

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