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【漫画】ダークギャザリング7 感想

【前:第六巻】【第一巻】【次:第八巻】

※ネタバレをしないように書いています。

ゴースト・スタンド・バトル

情報

作者:近藤憲一

試し読み:ダークギャザリング 7

ざっくりあらすじ

危険度Sランク『旧I水門』に挑むため、廃ラブホテルにて卒業生を回収することにした夜宵たち。その卒業生は花魁の霊であるらしく、男性である螢多朗が単身で乗り込むが……。

感想などなど

夜宵は自身の主戦力である卒業生と呼ぶ霊達を、それぞれ方々に散らせて管理していた。『H城址』で猛威を振るった『邪経文大僧正』はお経を聞いた者を問答無用で殺害し、『旧旧Fトンネル』で殺人鬼を鏖殺した『殉国禁獄鬼軍曹』は死ぬ姿が想像できないぐらいにタフだ。

これまでの戦いで卒業生の強さというのは理解できたつもりである。それぞれが持つ特異な能力は、敵として現れればクソゲーと愚痴を言いたくなるくらいに厄介だ。それが味方になっていると思えば、実に心強い。

とはいえ、どれも所詮は悪霊である。

『邪経文大僧正』のお経は敵味方の区別がない無差別攻撃であるし、『殉国禁獄鬼軍曹』もまた周囲にいた者の体力の全てを奪っていく。さて、危険度Sランク『旧I水門』に挑むために回収する霊は、どうやら元花魁であるようだ。

花魁。吉原遊郭の中で位の高い遊女のことを指す。

彼女はとてもプライドが高く、夜宵に封印されて使役されている状況をよしとはしていない。かつてヤクザにもてあそばれた挙げ句に殺された女性達の霊が彷徨う廃ラブホテルの中で、特殊なルートを通らないと辿り着けない秘密の部屋にて、夜宵を立ち入らせない領域を作り出していたようだ。

そんな部屋に入れる可能性があるとすれば、男である螢多朗くらいではないか……ということで単身乗り込んでいく。しかし、これがまぁ大変なのだ。相手は男を手玉に取るプロである。

螢多朗から詠子への愛がなかったらヤバかった。ある意味、愛を試される戦いであった。

 

さて、いよいよ危険度Sランク『旧I水門』へと挑むことになる。ここで語られる曰くは下記の通り。

①水の上に浮く黒い影の噂

②水面にバラバラの人の手足が浮かんで見える

③水門の上に立つ女性の霊

④水門が出来てから首吊り自殺が起こるようになった

⑤近くの水没者供養の地蔵の首が落ちる

……ふむ、どうにも曰くの裏にある物語が見えてこない。『H城址』や『旧旧Fトンネル』はそこで何が起こったのか事件が語られるのが常だったにも関わらず、ここは全てが漠然としている。

実際、危険地帯に近づいただけで色々と察する螢多朗が、ここにはあまり何も感じなかった。ここが危険度Sランクとなった原因である霊に、かなり近づいてもなんとも思っていなかった。

そういった一見すると何でもない場所が、その裏に抱えた牙を一気にむいた時が一番怖い。それと拮抗しうる花魁の卒業生の強さ、美しさにも期待して欲しい。最高の引きで幕引きとなる第七巻であった。

 

……と、ここで記事を終えても良いが、ここから先のダークギャザリングの展開を決めると言っても良いホラーが、この第七巻から展開していく。霊の成り代わりである。

廃ラブホテルにおいて、螢多朗は女性の霊に成り代わられかけた。女性の霊の力が弱かったために事なきを得たが、もう少しでも霊が強ければ、あっさりと成り代わられていたことだろう。

螢多朗の姿をしているのに中身は悪霊。悪霊が本気で螢多朗として生きていこうとすれば出来てしまうということが、はっきりと突きつけられた訳だ。ここから先、螢多朗は勿論のこと、詠子も夜宵も霊と成り代わられたとしてもおかしくはない。

読者は神様視点だから分かるが、多くの霊が人間社会のしかもそこそこの立場の人間に成り代わっているということが明らかにされてしまった。これは下手なホラーよりも怖いのではないだろうか。

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