※ネタバレをしないように書いています。
艦娘+洋酒のマリアージュ
情報
作者:森永ミキ
試し読み:艦隊これくしょん -艦これ- 今宵もサルーテ! (2)
ざっくりあらすじ
ガンビア・ベイ、コマンダン・テスト、タシュケントの三人が、鎮守府にかつてあったとされる《伝説のバー》を復活させるために奮闘する日常。
感想などなど
艦これのゲームをプレイしなくなって久しいが、艦これのキャラクター達は好きなのだろう。記憶の奥底で眠っていたキャラクター像が呼び起こされる。
季節グラ(ゲーム内のキャラクターは季節やイベントごとに切り替わる、夏なら水着。秋なら芋を食べてたり)豊富な瑞穂に、大艇ちゃん大好きな秋津洲。千枚通しを提供してくれた和服美人・大和。クールビューティーなお姉様・アークロイヤル。世話焼き戦艦・金剛などなど。
そんなキャラクター達の絵が可愛いこともさることながら、鎮守府でそれぞれの生活がある背景が感じられるような、想像を膨らませられるような描かれ方をしている。
瑞穂が作ったコロッケをサミュエルや秋津洲が食べに来ていたり、金剛のお茶会に、最近になって配属されてきたばかりのジャーヴィスが招待されていたり、作戦会議の進行を進めているのが駆逐艦・朝潮だったりと、「瑞穂はいつもこういう風に作っているんだろうな」とか「金剛は海外艦が派遣されてきた時に、いつも気にかけているんだろうな」とか描かれていない延長にある生活が、色々と考えられる。
深海棲艦という敵対勢力と戦っている絶賛戦争中の状況であり、海上で警戒任務に当たっているシーンも描かれているが、それにしたって殺伐さの感じられない平和な世界である。
そんな第一巻はアークロイヤルやリシュリー、千歳ら三人が、影ながら三人の成長を見守っていたら、いつしかアークロイヤルがガンビアベイら三人の教育係となっていた……という内容になっている。
格好いいバーテン服に身を包み、颯爽とカクテルを作り出す手際の良さまでも完成された彼女に、バーで酒を提供できるレベルにまで成長させてもらうべく、色々なことを教えて貰う。ついでに読者もお酒の勉強になるので一石何鳥にもなるお得感がたまらない。
そんなアークロイヤルにカクテルのいろはを初歩の初歩から学んでいく。カクテルは氷の歴史とも呼ばれ、製氷技術の発展と共に成長を遂げてきた文化。氷が溶けて水っぽくなる前に完成させること、そのために練習を重ねて素早く正確に酒を混ぜることの重要性……などなど。
そんなアークロイヤルに最初の課題として、カクテルの女王・マンハッタンを作って、アークロイヤル(やリシュリー)を満足させるように指示が出された。そしてそれをこなすことができれば、バーが廃業になった経緯を教えてくれるのだという。
バーの設備の整い具合、アークロイヤルやリシュリーの練度の高さなどを鑑みるに、かなり本気でバーの経営に動いていたことが伺える。いつ頃になって廃業になったか定かではないが、未だに練度の衰えていないことを見るに、バーに対する熱意はまだ残っているように思えた。
それでも廃業せざるを得なかった理由……是非とも知りたいところだ。
その裏では「絶対に教える訳にはいかない」と、リシュリーは絶対に満足しないと固く誓っている。その誓いが破られてデレる姿を楽しみにしつつ、今日も平和な鎮守府の一風景を見ていこう。
全ページに癒やしが散りばめられているのだが、イタリア艦を中心として催された鎮守府そばの海岸の海水浴がお気に入りだ。泳ぎたい人は水着を着て、イタリア料理と美味しいお酒が並ぶ。
レモンの皮を漬けた酒・リモンチェッロに、サラトガ特製のレモンパイとターキーサラダサンドに、コマンダン・テスト特製のウィークエンド・シトロンといった横文字が大量に並んでいる。それらを美味しそうに食べる駆逐艦達の微笑ましさ。とにかく彼女達にたくさん食べさせようとする大人達の気持ちが良く分かる。
そうこうしている間にも、マンハッタン試験の日が近づいてくる。リシュリーとアークロイヤルを満足させられるマンハッタンを作るべく、練習を重ね、どのような工夫ができるかを考える日々。そのヒントは日常生活の中に散りばめられていた。
ひたすらに優しい世界観と、可愛いが詰まった物語。やっぱりアニメで動いているところが見たい。