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【漫画】六畳一間の魔女ライフ1 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

新米魔女二人の奮闘ライフ

情報

作者:秋タカ

試し読み:六畳一間の魔女ライフ 1巻

ざっくりあらすじ

新米魔女のマッジとリリカは、六畳一間で二人暮らしをする新米魔女。魔女としてのランクは最低のCランクで、回ってくる仕事は簡単なものばかり……日々の食事もままならないなか、何とかしてランクを上げたい彼女達の奮闘ライフ。

感想などなど

もしも魔女がいたとして、科学が発展した現代でどのように生きていくのか。

本作の世界観は現代日本と似通っているが、魔女がいて、魔法という概念も確かにある。しかし科学の発展に伴い、人々の生活に魔法が根付くことはなく、日陰に追いやられていった魔女達……そんな衰退の一途を辿るしかなかった魔女の中には、派手な魔法や秀でた一芸を武器に、表舞台で活躍する者達も出てきた。

そんな魔女達は、それぞれの素質や成果に応じてランクが割り振られ、Cランクが最低となっている。作中の描写を見るにBランクから世間一般の知名度が上がり始め、Sランクとなるとハリウッド女優級の知名度に実力となるようだ(ちなみにSランクは世界に5人しかいない)。

そんな中、最低のCランクからスタートし、上を目指して二人三脚で奮闘するマッジとリリカを主人公とした物語が、本作『六畳一間の魔女ライフ』である。

マッジは足先まですっぽり覆う黒衣に、大きな黒い三角帽子を目深に被ったザ・魔女といった外見の少女で、調合学と魔方陣が得意な少女だ。そんな彼女に対する周囲の評価は、一貫して地味で古風。室内ですら帽子を取らない徹底して風習を守る姿勢に、仕事で忙しいながらも研究の時間はかかさない真面目さは、個人的に好きだったりする。

そんな彼女とコンビを組んでいるのが、魔女学院をちゃんと卒業したリリカという少女である(マッジは魔女学院に通っていない、実家が魔女家族で家出している)。マッジとは違い、一般的な女子と変わりない服装をしており、スマホを弄っている姿も確認できる。どこか魔女っぽさのない普通の少女だ。

先ほども書いた通り、二人は最低ランクのCのため知名度はないと言って良い。むしろ野菜泥棒と勘違いされるくらいにはくたびれた生活を送っており、任される仕事は「魔力で巨大化したヌートリアの捕獲」「魔力で巨大化したコウモリの捕獲」といったような害獣駆除がほとんど。

その仕事風景は本当に害獣駆除業者にしか見えず、マッジの外見だけが魔女っぽさを取り持っている。なにか便利な魔法を使うのかと思いきや、用水路でヌートリアを抱えて「ゼーゼー」言っている様子は犯罪臭すらする。これはまぁ、野菜泥棒に勘違いされますわと納得感がある。

 

この第一巻ではどこかぎこちなかったマッジとリリカの二人が、徐々に仲良くなっていく過程が丁寧に描かれていく。

そもそも二人は魔女として頑張っていくモチベーションが異なっていた。マッジはわざわざ家出して魔女として奮闘することにしたのだが、その動機は「都会の方がきらびやかな生活ができそう」という安直なものだった。しかし様々な依頼をこなしていく過程で、最初はただ羨望のまなざしを向ける相手でしかなかったSランク魔女への憧れを募らせ、明確な目標が形作られていく。

そんなマッジの相方であるリリカは、魔女学院を卒業してからというもの頑張る理由が存在しなかった。魔女としての伝統? めんどうくさい……そんな彼女に頑張る理由を与えてくれたのが、マッジだった。

扱う魔法もマッジは薬や魔方陣が中心的なのに対し、リリカは強化された力で押し切るような単純なもので、それぞれかなり方向性が違う性格・能力だ。正反対と言って良い。それが良い形で作用していき、地味だった依頼も楽しいものへと変わっていく。

良い百合だった。

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