工大生のメモ帳

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半分の月がのぼる空2 感想

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます(一巻の感想はこちら→半分の月がのぼる空 感想 - 工大生のメモ帳

謝ったって許さない

情報

作者:橋本紡

イラスト:山本ケイジ

ざっくりあらすじ

彼女に大量のエロ本を持っていることが見つかった。謝りに行っても、一向に許してくれる様子のない彼女との一波乱の幕開け。

感想などなど

一巻(半分の月がのぼる空 感想)では、自分の死期の近さを淡々と語り、死ぬ覚悟のために山に向かうと言っていた里香が、また違う覚悟を抱くきっかけの話でした。一体、主人公である戎崎は、里香に一体どんな言葉をかけたのでしょうか。気になるところではありますが、二巻の感想を書き進めていきましょう。

事件は冒頭から始まっていきます。

一巻で大量のエロ本を譲り受けたこと、覚えておいででしょうか。数百冊にのぼりジャンルも様々であるエロ本の山。通称・戎崎コレクション。

それが里香に見つかるという緊急事態。許してやってくれよ……と言いたいところではありますが、彼女は汚れを知らない病院の乙女。相当なショックだった様子で、大激怒の末、彼が謝罪に伺うも聞くこともせず、あらゆる手を尽くして逃げ出していく。

「エロ本持っててごめんなさい」

なんというか。かなりシュールな謝罪ですが、彼はいたって本気です。これまで通り彼女と過ごしたいがために必死に奮闘しますが、彼も病人なのでした。

 

今回は一癖も二癖もありそうな新キャラが登場します。

里香の主治医であり、数ヶ月の山ごもりの後、ボサボサの頭で登場する二枚目医者・夏目。もうこの時点で突っ込みどころが満載ですが、やはり注目すべきは「里香の主治医である」という点でしょう。

里香の病気は手術しなければ治らず、しても治るかどうかは分からないことは、里香の口から直接語られました。だからこそ、死ぬ覚悟をするために山に行くと言っていたのです。

そんな彼女の発言を裏付けるような夏目の説明。漠然としていた彼女の命のはかなさが、説得力を持って語られます。ときおり挟まれる彼の心情は、里香に対する複雑な思いが見て取れます。

その想いは、「里香と戎崎の仲直りを邪魔する」という行動となって出てきます。亜希子さんにまで最低呼ばわりされる彼の行動は、やはり誰が見ても肯定できるものではないでしょう。

自分だって「は?」て声でちゃいましたし。里香にとって戎崎が何か特別な存在になっていることは明らかです。いつまでも仲違いを続ける二人を見続けるのは、読んでいる自分たち読者にとっても、精神衛生上良いものではありません。

彼は何故そんなことをしたのか? 夏目という人物の全てがそこに詰まっている気がします。

 

さて、一巻で読むように指示された「銀河鉄道の夜」。一度位は読んだことがあるのではないでしょうか。例えなかったとしても、あの結末――カムパネルラの死はネットでちょっと検索すればでてくる時代です。作品内の時代もまぁ、大差ない……のかな。

里香はこの作品が好きだと言いました。復唱できるほどですから、結末も当然知っているはず。

彼女は戎崎にこの本を読んで欲しいがために渡しました。ゆっくりでもいいよと付け加えて。

そこにも彼女の思いが詰まっているのでした。

読み終えた後の何とも言えない読了間。心にぽっかりと穴が空いたような、色々な登場人物の思いが想起され、思い切り泣きたいような気分にさせられます。しかし、これもまだ物語の序盤の序盤。彼らは自分たちの思いにどうやって折り合いを付けていくのか。考えさせられる作品です。