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嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 幸せの背景は不幸 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

幸せのために迎える不幸

情報

作者:入間人間

イラスト:左

ざっくりあらすじ

御園マユ。クラスメイトで、聡明で、とても美人さんで、すごく大切なひと。彼女と一緒に見ているテレビでは、街で起こった誘拐事件の概要が流れている。今度時間があるときに質問してみよう、「まーちゃん、キミは何で、あの子達を誘拐したんですか」って。

感想などなど

誘拐は言うまでもなく犯罪である。それと同様に、殺人というものも犯罪だ。その犯した罪によって、誰かが理不尽な不幸に苦しむこととなり、逆に誰かが幸せになる。

例えば。

銀行強盗により銀行は甚大な被害を受けることになる。強盗側は莫大な財産を手に入れることができる。分かりやすく不幸と幸せが分類できている。

例えば。

虐めにより虐められた側は一生忘れることのできない心の傷を受けることになり、虐めた側というものは、その一時の快感や楽しさのために虐めているのだろう。罪悪感を覚えるほどの想像力があるならば、虐めなんてしないはずだ。

さて、本作では大きく三つの犯罪が描かれる。一つが『過去の誘拐』、二つに『現在の誘拐』、最後に『連続殺人事件』である。その三つともに関わりを持ち、首を突っ込むことになるのが、我らが主人公であるみーくんであった。

ちなみに名前は登場しない。ずっとみーくんと呼ばれている。本名で呼ばれることを嫌っている、というよりはトラウマであると言うべきだろう。

 

『過去の誘拐』事件にて、とある少女と少年が誘拐され、一年もの長きにわたって暴力を受け続けた。その二人こそ、タイトルにもなっているみーくんとまーちゃんである。

結果として嘘つきとなってしまったみーくん、彼の価値観と視点により描かれる物語は、数多くの嘘が混じり、読者を混乱へと誘う。本作を一度読んだだけで、本当の意味で理解できる人間はいないだろう。なにせ彼は嘘つきなのだから。

対してぶっ壊れてしまったまーちゃん。あらすじでも示した通り、彼女はうっかり二人の少年・少女を誘拐してしまう。まーちゃん自身も理由を尋ねられても困ってしまうようだ。

この誘拐こそが『現在の誘拐』事件であり、テレビでは何度も報道される程度には話題になっていた。そんなニュースを物騒だねぇと適当な感じで受け流すまーちゃん。このエピソードだけでも壊れているということは分かって貰えるだろうが、彼女のぶっ壊れエピソードはそれだけに留まらない。

まず、彼女はみーくんという存在を××しているのだ。そのため、みーくんが知らない女性と一緒にいる場面を見かけてしまうと、思わず殺そうとしてしまう程には妬いてくれる。というか、一歩間違えればみーくんは本作で二度ほどまーちゃんに殺されてしまっている。ブログ主ならきっと死んでる。

さらに夜になると、発狂して周囲の人を傷つける。みーくんも例外ではない。まーちゃんの意識が戻った頃には、みーくんの体は傷付き、まーちゃんは「どうして傷ついているの?」と可愛く首を傾げる。

そんな二人の住む街では『連続殺人事件』というものが発生していた。まったく、誘拐事件や殺人事件と、ぶっそうな世の中である。まぁ、その内の片方はまーちゃんが起こしている訳だが、彼女の家に誘拐された二人が生活している訳だが。

本作は一応、『連続殺人事件』の犯人をみーくんが追っているミステリと言えるだろう。まぁ、ずっとみーくんとまーちゃんがいちゃいちゃしているだけのように見えたり、誘拐事件の犯人が目の前にいるため、どうにも『連続殺人事件』に対する印象が薄いような気がしてしまう。

とはいっても『連続殺人事件』の概要はかなりえげつない。なんと死体が全て解体されているのである。眼球を抉られたり、耳に切り込みが入れてあったりと、まるで死体を欠損させることを目的のように、死体で遊んでいるかのように……。

この事件の犯人もぶっ壊れている。そう、みーくんやまーちゃんのように。

 

本作のサブタイトルは「幸せの背景は不幸」である。読んだ後、これを見ると色々と感慨深いものがある。

みーくんとまーちゃんは壮絶な過去により、価値観がぶっ壊れている。当然、幸せと感じる場面というものも、我々読者とは大きくかけ離れている。不幸も同様に感じ方が異なっていく。

最初の方に、犯罪は誰かが幸せになると書いた。

では本作で描かれる犯罪により、誰が幸せになるのだろう? その答えを分かってしまうみーくん、さて、その犯罪にどのように向き合うのか。その点も大きな見所となっている。

壊れた者達にも幸せが訪れることを望む。できれば周囲も幸せにして欲しいが、それは望みすぎだろうか。

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