工大生のメモ帳

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弱キャラ友崎くん LV.2 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

人生はクソゲー

情報

作者:屋久ユウキ

イラスト:フライ

ざっくりあらすじ

生徒会選挙の時期となり、人生最強プレイヤーの日南が立候補するのは当然として、七海みなみこと、みみみも出るのだという。彼女のサポートをすることになった友崎は、これまでの経験をもとに日南に挑むが……。

感想などなど

生徒会選挙というのは、要は人気投票だ。可愛い女の子と、冴えない男であれば、可愛い女の子の方が有利である。例え優れた公約を掲げたと言えど、生徒会長には大した権限はないので期待もされない。結局のところ、教師の指示に従って動くしかないというのが、生徒会という組織のあり方であろう。教師に楯突き、絶対の権力を持つ生徒会というのは、創作の世界でしかあり得ない。

本作における生徒会の実態も、現実世界とは変わりない。

そんな生徒会に日南葵が立候補した。自らを人生の最強プレイヤーと名乗り、全生徒の頂点に君臨したことを意味する生徒会長の座に座ろうとすることには、誰も異論を挟まない。

クラスメイト達も、「やっぱりな」という面持ちで彼女を見つめる。その眼差しには羨望だったり、期待だったりが入り交じっているのだろう。そして、それらに応えるだけの実力が、日南葵にはあるのだ。

そこに七海みないこと通称みなみも生徒会長に立候補した。クラスにおける立ち位置は、葵に次いでNO2と言って良いだろう。陸上部としての活躍も申し分なし、ルックスもさることながら、彼女の明るい性格は敵を作らない。

しかし、第一巻における七海みなみという人物について思い出して欲しい……きっと思い出せない。少なくともブログ主はそうだった。

これは作品を通して言える所だが、ヒロイン達に分かりやすい属性付けがない。日南葵は人生最強プレイヤー、菊池さんには本好きというように例外はいる。最初のページに書かれた人物紹介の七海みなみの欄には、ムードメーカーと書かれているが、それは果たして本当なのだろうか。

残念だが日南葵も十分すぎるほどにムードメーカーだ。むしろ七海みなみは見劣りする。はっきり言ってしまえば印象が薄かった。

第二巻ではそんな七海みなみに関して掘り下げていくエピソードとなっている。

 

ということで本作の評価というものは、この七海みなみに対する印象というもので変わっていく。彼女の考えや生き様を嫌う――あまりいるとは思えないが――ような人であれば、きっとそれは「第二巻が嫌い」ということを意味する。その逆もしかり、だ。

七海みなみという人物を理解する上で注目すべきポイントは二つ。『生徒会長に立候補した理由』と『日南葵との関係性』だ。

彼女が立候補を宣言するより前に、日南葵が立候補し、クラスメイト達に華々しく大いに歓迎されている光景を目の当たりにしている。理屈で考えてみれば、彼女との人気投票において勝つ手段など存在しない。ただの負け戦、出来レース……立候補した後に直接そのように言う者はいなかったが、そのような空気は少なくとも流れていた。

それでも『生徒会長に立候補した理由』は何故か?

みなみは終始、笑顔の絶えない明るい表情だ。そのため理由について深く考えていないような印象を受ける。「負けてもいい」という楽観とも取る方もいるだろう。そんな彼女の心に抱えた『理由』というものに、友崎が踏み込んでいくことで物語は大きな進展を遂げていく。

そんな彼女の印象と共に押さえておくべきは、葵との関係性である。一言で言ってしまえば、クラスのツートップ同士で仲の良い友人同士。セクハラしあえる程度の気兼ねなさがあり、互いに信頼し合っているとも取れる。

しかし、物語を読み進めていくに連れて、そんな光景もまた違った見え方をしてくる。そこが本作の面白い点だと言えよう。

 

ストーリー展開としては、日南葵と七海みなみによる生徒会選挙だが、その実態は違う。人生における生徒会選挙にて行われる、NanasiとNONAMEの一騎打ちである。もう少し噛み砕くと、NONAMEという強キャラに対して、七海みなみという強キャラを操作することで勝とうとするNanasiだと言える。

七海みなみは持ち前のコミュ力や性格で、友崎の指示通りに動いていくことで、「もしかすると日南葵に生徒会選挙で勝てるのでは?」という期待が、読者の心の中で募っていく。

しかし、ブログ主はここで考えてしまう。

「もしも友崎がいなかったら、この場面の七海みなみはどうなっていただろう?」と。優秀として描写される七海みなみだが、「どうにも抜けすぎている点が多すぎるのではないか?」と。

やはり、いろいろな意味で、七海みなみというキャラクターに対する印象により本作に対する評価は決定される気がする。ストーリーの根幹を握っているという意味で、それは仕方のないことなのだが。

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