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【漫画】止まり木の鎮守府2 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

艦娘達の止まり木

情報

原作:C2機関

作者:ヒロイチ

試し読み:艦隊これくしょん -艦これ- 止まり木の鎮守府 2

ざっくりあらすじ

秘書官・阿賀野の発案で艦娘文化祭が開催されることに。深海棲艦の現れない海域で、訓練の合間に準備を進めていく艦娘達であったが、霞の様子がどこかおかしくなっていて……。

感想などなど

深海棲艦との戦闘のない、訓練ばかりの日々を過ごす艦娘達。鈴谷と熊野が胸中に抱えている闇が明かされ、解放されるには、まだまだ時間がかかりそうだ。そんな中、阿武隈は別の鎮守府に配属されることが決まった。

彼女は艦娘として、深海棲艦との戦いに駆り出されることになるのだろう。そのことを喜ぶべきか否か……難しいところだが、艦娘として生きるということを考えると、海で戦っている方が正しいといえるかもしれない。

その考えを抱いているのは、どうやらブログ主だけではないらしい。阿武隈が鎮守府を出たことを皮切りに、霞はこれまで以上に訓練に打ち込むようになる。出撃できないことに対する焦りか、艦娘としての魂がそうさせるのかは定かではない。

それにしたって、霞の訓練に対する過度な打ち込み具合は異常で、それはこの第二巻で際立って描かれていく。

 

第一巻の最後に開催が発表された第一回・艦娘文化祭。阿武隈が去ったことで暗い空気となっている鎮守府を明るくするために開催される運びとなったらしく、最初はどこか納得していない雰囲気があったが、全員が徐々に本気で文化祭に打ち込み始める様が描かれていく。

そんな中、「そんなことをしている余裕はない」と自主訓練に励む霞。彼女の胸中は穏やかではない。

駆逐艦・霞は朝潮型 10番艦  駆逐艦であり、同じ朝潮型の9番艦・霰、陽炎型・陽炎と不知火と共に、第十八駆逐隊を編成。華々しい戦果を上げていた。しかしながらミッドウェー海戦をきっかけにし、第十八駆逐隊ちりぢりとなり、一度は不知火と合流するも、自分だけが生き残る形でかつての仲間全員を失うこととなる。彼女の最期は大和最期の戦いであり天一号作戦……彼女の目の前で大和は沈み、自身も空襲により大破し砲撃処分を受けている。

数々の歴戦をくぐり抜けた猛者であり、仲間を目の前で失ってきた艦娘でもある。彼女はそのような過去を払拭し、もう二度と仲間を失わないために強くならなければいけないと、訓練に撃ち込んでいたのだ。

「護りたい時に護れなくて誰かを失うのは もうたくさんなのよ」という霞の台詞が全てなのだろう。しかしその覚悟は、霞一人が抱えるべきものなのだろうか。彼女の前で散っていった者達は、その覚悟はなかったのだろうか。

霞が決めるべき覚悟とは何か……そんな彼女のために覚悟を決める姉妹達の行動が最高であり格好いい。とても良いエピソードである。

 

霞以外にも覚悟を決める艦娘がいた。それは鈴谷である。

今回の文化祭はグループごとに別れてそれぞれが出し物をするという内容である。グループメンバーを決めたのは秘書官・阿賀野で、何を思ってか仲良しこよし姉妹・鈴谷と熊野を別々にしている。

その新しい環境に素早く適応したのは意外にも、鈴谷よりも熊野であった。グループ名はチューリップ組、メンバーは熊野・青葉・大潮・荒潮・朝潮・満潮の計六名。読み進めていくと分かるが、かなり相性が良い構成になっている(さすが阿賀野姉)。

意気消沈、溜息多数の鈴谷は妹・熊野のところに通うが、想像以上に場に馴染み頑張っている彼女の姿を見て、どこか寂しげな表情をするのである。姉離れする妹、妹離れできない姉とでもいうべきか。

そんな彼女を叱って立たせてくれるのは、世話焼き姉さん的ポジションの摩耶であり、そんな彼女の背中を押したのは戦艦大和であった。艦娘全員が一丸となって自らの過去や運命に抗っていく感じが、本作の魅力なのかもしれない。

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