※ネタバレをしないように書いています。
精霊が憑いている
情報
作者:北山結莉
イラスト:Riv
ざっくりあらすじ
バスの事故に巻き込まれて死んだ春人は、ベルトラム王国の王都にあるスラム街に暮らす孤児・リオになっていた。ある男に復讐するという強烈なリオの記憶と、高度に科学が発展した春人の記憶、二つを持ち合わせたリオは、スラムで一人の少女を救ったことから国王に褒美として学校に通わせて貰えることとなった。
感想などなど
普通に食事ができて、清潔な環境で、他人に恐れることなく生活できる現状に満足したことはあるだろうか。人の欲望に終わりはなく、今ある環境に慣れてしまえば、さらなる上の環境を求めてしまうものだ。そんな向上心を否定することはできないが、その欲望に恐ろしさすら覚えてしまう。
それは例え異世界であろうとも変わらない。
この物語は両親をとある男に殺されたリオという少年が、成り上がっていく過程で、様々な因縁に巻き込まれていくも、前世で培った知識や経験を生かしてくぐり抜けていくものとなっている。
春人が転生した世界には、高度な科学技術がない代わりに魔法が存在していた。しかし、魔法の利用の可否に関しては血筋の影響を色濃く受けるらしく、貴族のような地位のようなものでしか扱えないとされていた。
当然だがスラム街で生きるしがない少年・リオは、魔法を扱うことなどできなかった。スラムで暮らしてきたため、文字の読み書きや数字も分からない。まぁ、前世では大学に通っていたこともあり、算数の計算程度ならば問題なくできるようだが。
そんな彼に転機が訪れた。
スラム街に王家の少女が捕らえられたらしい。しかも、その少女はリオの住んでいたオンボロ家に、袋に詰められた状態で運び込まれた。とはいっても少年にとって、王家の少女がどうなろうが知ったことではない。むしろ王家の面々に、犯罪者としてマークされる方が厄介だ。
春人は裕福な生活を送った前世の記憶と同時に、スラムで犯罪に手を染め続けた記憶も持ち合わせている。他人の死というものにどこか冷めた感情を持ち合わせていた。それでも日本人としての善意だとか、甘いと言われそうな優しさが、彼の心を揺らす。
結局、彼は彼女を助けることにした。それと同時に、精霊がその身に宿り魔法が使えるようになったことは、彼にとって良かったことか、悪かったことかは、そこから先の物語を読まないと何とも言えない。
こうして春人は城へと連れて行かれ、最初は誘拐犯と間違われて拷問も受けたりしたが、最終的には国王の有り難き御言葉により、貴族が通うような学校へと通うことが許された。
彼はこの世界のことを何も知らない。精霊のことも、魔法のことも、政治のことも。
この第一巻はそんな世界のことを春人と一緒に知って行くような導入的な色が強い。大学に出ていたこともあり、学校で学ぶ計算程度ならば難なくこなし、武術の経験があったことで実技もかなりの成績を修める。
テストで学年一位を取るくらいには。
スラム出身者に負けたことでプライドがズタズタにされた貴族達の目の敵にされたことは、想像するまでもない。不穏のタネばかり振りまいて、ついでにハーレムの兆しを匂わせて第一巻は幕を閉じていく。
第一巻で気に入ったという方は言うまでもないが、とりあえず第二巻まで読むことをお勧めしたい。物語の始まりと目的が定まるのは、第二巻からと言っても過言ではないからである。