※ネタバレをしないように書いています。
精霊が憑いている
情報
作者:北山結莉
イラスト:Riv
ざっくりあらすじ
実地学習で貴族を崖下に突き落とそうとしたという疑惑をかけられ、逃げるような形で学校を去って行くリオ。奴隷にして獣人のラティーファは主人に命令され、彼を殺すために後を追っていることも知らずに。
感想などなど
スラム育ちであるというだけで、どんなに品行方正で真面目で優秀であろうとも下に見られる。差別してもいい対象として扱われ、スラム育ちだから仕方ないと見捨てられる。位が上の貴族には逆らわず黙って従うというのが、この世界に立ちこめる暗黙のルールだった。
だからこそ、リオがどんなに優秀な成績を修めようとも、「ズルをしたんだろ」と証拠がなくともまず疑われる。なにせスラム育ちだから。まぁ、数年前まで字も読めなかったし、犯罪にいとも容易く手を染める悪人だったことは否定できないが。
そんな彼がユグノー公爵家の嫡男スティアードを突き落とそうとして、それに巻き込まれたフローラが崖に落ちそうになった……という疑惑をかけられた時、表だって味方してくれる者は一人もいなかった。
第一巻最後のリオはかなり頑張っていたと思う。崖下に落ちそうになったフローラを助け、その後すぐに現れたミノタウロスを倒した。フローラとしては命の恩人、感謝してもしきれない。
しかし、貴族社会に立ちこめる暗黙のルールは、彼女がリオに恩返しする道を閉ざした。フローラの父は諦めなさい、と優しく娘を諭した。恩師のセリアも、彼を助けることなど叶わなかった。
結局、遅かれ早かれ、リオは学校を一人立ちする運命だったのだろう。第一巻の最後は、両親の故郷であるヤグモ地方へと向かう旅立ちで終わった。第二巻では、その旅の道中を描いている。
貴族を殺そうとしたとか適当な疑惑をふっかけて指名手配されていたようだが、国を出てしまえばそれらの追っ手からは逃れられたのが、大した準備も出来ぬまま外に出ることになった不幸中の幸いか。他国間とそういった指名手配の情報共有はなされていないらしい。
魔法も使える。
計算も出来る。
それなりに戦える。
ということもあり、全く危なげなく旅を続けていく。道中で先輩冒険者に絡まれたりするが、魔法が使えるリオの敵ではない。傷ついても治癒できるというのは大きな強みであるし、学校で剣術を専門に学んだということも大きな意味を持つ。やっぱ良い師匠がついた方が、成長速度は段違いなんだな……。
そんな中、獣人ラティーファが主人であるユグノー公爵家の嫡男に指示され、リオを殺しにやって来た。最初はフードを被って道ばたに倒れ、行き倒れた危険のない少女を演出。油断したリオに毒付きの吹き矢で攻撃し、脅威の素早さで翻弄。
魔法が使えて解毒できなければ、死んでいた。
そんなラティーファナを押さえ込み、彼女を奴隷たらしめていた隷属の首輪(対象者が主人の命令に逆らえなくなる)を破壊して、ついでに一緒に旅をすることになるが、これもラノベ主人公特有の人タラシ力がなせる技なのだろうか。
第一巻でもそんな予兆はあったが、この第二巻では現地妻を各地に作っていく。ちょっとだけ泊まった宿屋とか、ラティーファナの故郷にいた獣人達とかを虜にしていく。ハーレム化である。この作品の方向性が分かってきました。