※ネタバレをしないように書いています。
精霊が憑いている
情報
作者:北山結莉
イラスト:Riv
ざっくりあらすじ
父であるゼンの故郷の村にたどり着いたリオ。しばしそこでの平和な時間を過ごすが、従兄弟に当たるルリに夜這いを仕掛けようとする者が現れたり、王都で女性を攫おうとする悪漢に遭遇したりと様々な事件に巻き込まれつつ、自身の意外なルーツを知ることになる。
感想などなど
これまで、両親の故郷を求めて旅をしてきた。だが、到着したからといって終わりではない。故郷に行く理由を、彼は母との約束だったと語っている。母親を殺したという男への復讐が、彼にとってメインであろう。
しかし、少し思い出してほしい。彼が復讐を願う男のことが、これまで語られたことがあっただろうか、と。
この第三巻では、謎に包まれたリオの過去に焦点が当てられていき、予想外の事実と歴史が明らかにされていく。それと同時に、現地妻フラグも元気に立っていくことは言うまでもないだろう。
例えば。
辿り付いた故郷にて、リオは王都の学校で学んだ知識や、前世での知識を総動員して、村の発展に貢献していく。高価であるという石けんの作り方や、狩りをする際のハンドシグナル、農具の使い方など、その知識量は膨大であった。
そのため村民達――とくに女性陣から多くの尊敬を集めた。つまりモテた。顔も良くて、強くて、頭も良いのだから、モテない理由がない。
それが村の男達連中の中で面白くないと感じる者もいた。だが助けて貰っているのは実情で、強気に言えない。ここでリオの性格が横暴だったりと悪ければ良かったのだが、生憎そんなことはない。
そんなある日、身の毛もよだつような男が村にやって来た。
その男は隣村の村長の息子であるらしい。
王都まで荷物を運ぶために移動しているらしかった。しかし移動手段である馬車が壊れたため、一日だけでも村に泊めて欲しい、と願い出てきた。隣村の偉い人であるし、馬車が壊れているのは確かだった。泊めるくらいは別に……ということになったが、それが甘かった。
視点はその男へと移り、リオの従兄弟であるルリに夜這いを仕掛けようとしていることが描かれる。ただルリが可愛いということもあるだろうが、彼としては彼女を犯して妻として迎えようとしているらしい。
……おそらくリオがいなければ、彼らの目的は達成されたことであろう。彼らがか弱い女性達を犯すために立てた計画は、単純が故に成功する確率も高かった。
彼らのその後は言うまでもない。落ちるところまで落ちてゆくが良い。
さらにリオは王都でも似たような犯罪に巻き込まれる。目の前で悪漢に担がれて攫われていく少女、なすすべもなく見ていることしかできない人々。男に立ち向かっていく者は、リオただ一人であった。
こうして認められていくリオであったが、彼は復讐のために村を出る。何だろう、水戸黄門的な、勧善懲悪的な心地よさすらある。犯罪者も多いけれど、それと同じくらい良い人もいる世界で良かった。