工大生のメモ帳

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”文学少女”と死にたがりの道化 感想

※ネタバレをしないように書いています。

恥の多い生涯を送ってきました。

情報

作者:野村美月

イラスト:竹岡美穂

ざっくりあらすじ

物語をむしゃむしゃと食べちゃうくらい愛している ”文学少女” 天野遠子と平穏と平凡を愛する元天才美少女作家である男子高校生、井上心葉。二人の過ごす文芸部に突然舞い込んだ、恋文代筆の依頼。

ただ恋文を書くだけで終わりのはずが、それは人の心が分からない悲しき ”お化け” の嘆きと絶望の物語だった。

感想などなど

アマゾンにて全巻を購入して読んでおります。何故買ったのか? などなど、それら前置きは書くと長くなるので省略して、早速この作品の魅力について書いていこうと思う。

まず主人公は元天才美少女作家である男子高校生、井上心葉。この一文で大きな矛盾をはらんでいるが、皆さんの心に抱いているだろう疑問は、大したことではないので無視していい。

問題は ”元” という部分にある。つまりは今は書いていないということだ。

そんな彼は過去に何かがあって文章を書けなくなってしまったが、文芸部に入って物語を書いているらしい。

……あれ、また一行で矛盾してしまった。嘘は書いてないんだけどなぁ……。

そんな彼を文芸部に勧誘し、物語を書かせている人間が、物語を食べるほど好きな ”文学少女” 天野遠子である。

何、物語を食べるというのは比喩的表現ではない。文字通りそのままの意味だ。

冒頭で彼女はギャリコというニューヨーク生まれの作家の本を破り、食べている。何度も言うが、比喩ではない。文字通り破ったページの一枚を口に運び、咀嚼している。

簡単に説明すると「彼女の主食は物語」ということになる。ちなみに普通の食事を食べても味は感じないらしい。

そんな二人の文藝部の優雅な日常……と思いきや、物語はまさかのミステリー的展開を見せる。ただトリックを魅せるというよりは、人の心の移ろいや闇の部分を描き出した、サスペンス的ミステリーだ。

 

度々太宰治の「人間失格」が登場する。

誰しもが国語で一度は見たことがあるでしょう。「恥の多い生涯を送ってきました。」の一文はあまりに有名だ。

太宰治の作品の中では、「走れメロス」と並んで有名な作品だと思いますが、この「人間失格」を最初から最後まで読んだことのある人は、この日本にどれほどいるでしょうか。ちなみに自分は読んだことがなかったので、急いで青空文庫を使って読みました。

といっても、読まずとも「人間失格」の説明は、本作内でしっかりとされているので理解自体はできるのです。ストーリーも問題なく読み進められるでしょう。しかし断言します。

絶対に本作を最後まで読んだら、太宰治の作品を読みたくなってしまう……と。

 

タイトルを思い出して貰いたい。

「”文学少女”と死にたがりの道化」

ここで登場する死にたがりの道化とは一体何を指しているのだろうか。

死にたがっている道化? ピエロ?

本作に度々登場する「人間失格」は、道化を演じている主人公の生涯を綴った物語です。本作でも道化を演じている人間の苦悩が書き連ねられた手記が度々登場します。

その手記の書き手とは誰なのか?

道化とは誰なのか?

数多の伏線と謎が回収されて行く終盤は圧巻の一言。きれいで、ほんの少しほろ苦い、そんな物語でした。

“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)

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