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【漫画】GROUNDLESS:1 ―隻眼の狙撃兵― 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

銃は別に好きじゃなかった。

情報

作者:影待蛍太

出版:双葉社

ざっくりあらすじ

五年程前、「腸腐れ」という疫病が発生し、約二十万人が死亡した島国アリストリア。それを重く受け止めた大陸政府は、アリストリアとの貿易・外交を軍事的に強制的に遮断。ワクチンが作られ、疫病が沈静化したあとも遮断は継続され、物資不足となってしまった島内は暴動や略奪が相次ぐ不安定な情勢となってしまった。

感想などなど

戦争により得をする者は誰かと聞かれれば、まず最初に武器商人が思い浮かぶのではないだろうか。戦争特需により、一時的に大きな潤いを得て、発展を遂げたことのある日本にとっては理解しやすい話であろうと思う。

本作で舞台となっているアリストリアは、あらすじでも示した通り、暴動や略奪の相次ぐ一種の紛争状態。島国の政府である中央合議会に対して、高まる不安により『アリストリア解放市民軍』なるものが現れ、軍部の弾薬やら物資やらを強奪する暴動なども頻発していた。

さて、そんな環境における主人公・ソフィアの立ち位置は、兵士ではなく武器を裁く武器商人ルーベンス……その妻であった。狙撃兵は? という方はもう少し待って欲しい。冒頭では武器を決して好きになれなかった彼女が、隻眼の狙撃兵として戦地に赴くまでの話を描いている。

 

武器商人の仕事は、その名の通り武器を卸すことだ。ルーベンスはその中でも、かなりやり手であるように思われる。事実、グレゴリオ大佐というゲスな顔をした偉そうな男(大佐というくらいだから、やはりかなり偉い)がやって来て、かなり大量の依頼を持ち込んできた。それに対して、真摯に応え依頼をこなしていく。

その日も、その通りに行くはずだった。

軍に反旗を翻そうとしている市民軍にとって、軍に武器を配備する商人というのは敵に他ならない。そんなことは想像するまでもなく、ルーベンスにとっても分かりきったことであった。だからこそマットという専属の守衛をつけて貰っていたし、最悪な時には自警団が瞬時にやって来てくれるという手配までしてあった。

慢心もなかった。

ただ敵は市民軍だけではなかったということを、気付くべきだったのだ。

運命の日には、マットという専属の守衛が来なかった。天気は曇っている。大佐からの依頼にしては、いつもよりも発注された量がかなり多かった。妻であるソフィアは、どこか見張られているような嫌な予感を覚えていた。不安の種だけは膨らみ続ける。

そしてそういった不安というものは、大抵、最悪な形で的中する。

解放市民軍がやって来る。裏で手を引いていたのはグレゴリオ大佐。夫は銃撃され、妻は片目を失った。大切な赤ん坊は大佐に連れて行かれてしまう。

そんな妻に大佐は、自らの屋敷の召使いになるように命じた。召使いなどという言葉で着飾ってはいるが、それは事実上の奴隷であろう。汚い口で宣う「キレ-なおべべ着せて可愛がってもやるぞ」という言葉がそれを物語る。

そんな言葉を小さな声で断るソフィア。そんな彼女を無理矢理にでも連行しなかったのは、せめてもの救いか。ただそんな彼女への捨て台詞として、赤ん坊は育てて女衒にでも回すと告げた。

そうしてソフィアは狙撃銃を手に取り、隻眼の狙撃兵が誕生する。

 

タイトルに隻眼の狙撃兵と名を冠してはいるが、彼女以外の人物にも焦点を当てている。例えば狙撃兵というのは、相棒としてスポッターの役割を担う人物と行動することとなる。

スポッターというのは別名・観測手と呼ばれ、標的までの距離や角度、風速や湿度といった情報を集め、狙撃手に伝える役割を担う。あまり状況の軍隊の育成が進んでいない環境であるため、スポッターをすることになる男・モンドは、正直言うと優秀とは言い難いが憎めない男であった。

また、戦争は一人で行うものではない。まず前提として敵が居るし、さらに軍隊全体に指揮する司令官もいる。それぞれにスポットが当たる会話やシーンがあり、それぞれが抱えているものや性格といったものが分かるようになっている。

そして人の死も珍しいものではない。ソフィアは女性だが、人を殺すという行為に対して躊躇いというものは感じられなかった。市民解放軍に夫を殺され、その裏で手を引いていたのは軍部の大佐という境遇の彼女にとって、人の死は慣れなければならないもの……いや、勝手に慣れてしまうものだったのかもしれない。

戦争物は設定や話が難しくなることが多いが、この漫画はかなり戦況というものがシンプルで分かりやすかった。今後は難しくなりそうな予感があるが、それは面白さでカバーしていただきたいものだ。

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