工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

インフィニット・デンドログラム 2.不死の獣たち 感想

【前:第一巻】【第一巻】【次:第三巻】

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

この世界をゲームだと思っていない

情報

作者:海道左近

イラスト:タイキ

ざっくりあらすじ

《Infinite Dendrogram》の世界にも漸く慣れてきたレイは、聖騎士として装備やスキルを整えるべく動き回る。そんな最中、子供達が誘拐される事件の話を耳にする。その時に出会ったユーゴーと共に基地へと殴り込みに向かった。

感想などなど

【ガルドランダ】と呼ばれる懸賞金100万リル(日本円にして1000万円)もの強敵を倒し、レベルも上がり、【瘴焔手甲 ガルドランダ】という防具も手に入れ、ゲームを始めて数日も経たない内に、熟練者もびっくりの功績を上げたようです。

しかし、レベルはまだまだ。騎士としての過程をすっ飛ばして聖騎士という上級職になったせいで、基本的スキルが全く埋まっていないという何とも不格好な状況。まるで課金者がいきなり強いキャラクターだけゲットして使いこなせないような感じです。まぁ、彼らのいるゲームでは課金要素がないようですが。

ひとまずレイは【瘴焔手甲 ガルドランダ】の効果を確認したり、手に入れた懸賞金の分配分で必要なものを買いそろえたりと、忙しそうにひた走ります。

まぁ、お金の受け取りで揉めたり、必要なものを買おうとしてガチャに金を払ったりしますが、その辺りの小さなゴタゴタは読んで貰いましょう。今、読み返してみるよ伏線もチラホラ散りばめられていました。

 

本作は冒頭が衝撃的です。「あれ、本間違えたかな?」と思いましたが、そういう訳でもないようで、冒頭が終わると打って変わったかのように平和な世界が広がっています。

何が描かれていたかと言えば「食人」。しかも幼い子供が悲鳴を上げながら、バリボリと喰われていく様子が描かれています。どうやらゲーム世界のNPCがNPCを食べているようです。

ゲーム世界では現実とはまた違った残酷な世界が広がっているのでした。

……しかし、これはあくまでゲームの世界です。つまりはデータ上の存在が、同じくデータ上の存在を喰っている描写がデータ上で描かれているに過ぎません。気分が悪くなるといっても、結局「ゲームじゃん」の一言で流されてしまうことでしょう。

喰われていった子供達は ”命” ではないのですから。当たり前ですよね。

「だってゲームじゃん」

「主人公が死ねば、現実世界でも死ぬ」とか「ゲームで死ぬと二度とリスポーンできない」とかならばまだしも、時間経過で復活ということも、子供達の死がプレイヤーには大して響かないことに繋がっているのかも知れません。

しかし、子供達の死をゲームとは思えず、怒りを覚え助けに行こうとしているプレイヤーがいました。

……そう、主人公のレイです。彼はただ命を助けるために、ゲーム世界のイベントに挑むのでした。

 

今回敵となる獣は二人【剛闘士】ゴゥズ ・【大死霊】メイズ。

もう名前からしてヤバそうな雰囲気が漂いますが、子供をさらい、身代金として金を手に入れ、怪しげな研究(?)をしているような描写が時折見て取れます。金を払えなければ(最悪、払って無くても)バリボリと子供が食べられていきます。

果たして彼らの目的は何なのでしょうか。

金? ……まぁ、結果として彼らは大金を入手していますし、間違いではないのでしょう。では、その金を一体何に使っているのか? そこが本作における問題となります。

そして途中まで読んだ人は、一つ疑問に思うことがあるはずです。

「タイトルの不死の獣 ”たち” って誰なんだ?」

 

全体的にゲームのようなステータスだったり、スキルだったりの横文字が多い文章です。ゲーム知識がゼロだったりすると、感覚が理解できなかったり、システムなども分からなくなってしまうことが多いでしょう。幸い、自分は人並みにゲームをする男なので、楽しむことができていますが、合わない人には徹底的に合わない作品のように思います。

不死の獣たちの正体と、ネメシスとレイの二人が協力して戦う戦闘は、かなり読み応えがあります。ラストバトルの主人公の策略には、色々な意味で度肝を抜かれました。

【前:第一巻】【第一巻】【次:第三巻】