※ネタバレをしないように書いています。
『物語』は感染する
情報
作者:甲田学人
イラスト:翠川しん、花邑まい
試し読み:Missing 2 呪いの物語
ざっくりあらすじ
文藝部員、木戸野亜紀の元に一枚のファックスが届き、それは都市伝説にある『呪いのファックス』ではないかという話になった。そして、その日を境にして、学校では不可思議な現象が起こるようになって……
感想などなど
まず最初に断っておきたいことがある。今回、自分が購入したのは昔に出版されたものをリメイクした「新装版」のMissingだ。あらすじなど調べる限り、昔の物と内容に差はないようだが、表紙などは現代風の絵柄に変わっている。
しかし、第一巻だけは古い版のものを読んで既に感想を上げてしまっている。こちらも内容に差異はないと思うのだが、一応は報告だけしておく。
という前置きはさておいて。本作の感想に入っていこう。
本シリーズの特徴として、あっさりと人が死ぬということが上げられる。しかもその死の描写を、かなりしっかりと描いてくれる。今回、文芸部が巻き込まれる事件の顛末は、世間一般では野犬によるものとして片付けられることになるのだが(言うまでもなく実体は違うのだが)、野犬のような存在に食い殺される人の描写が克明に描かれていく。
人の腕が落ちることもあり、首を噛み千切られることもある。
そういった血生臭さに加え、蛆が湧き、腐臭漂う室内の描写にまで力が入っている。その上手さはかなりのもので、しかしながらそういったホラー描写の裏に伏線が張られていたりと油断できない。
事件の始まりは奇妙な文字が羅列された紙がファックスされてくるというのも、絶妙に現実身があって恐怖を掻き立てる。現在、ファックスは淘汰されつつあるが、作品が描かれた時代も同じようにファックスが減りつつあり、「私、ファックスなんて初めて見た」という子もいるような感じが今と差異がないように感じさせられる。
題材となっている都市伝説『呪いのファックス』は下記のような内容だ。
夜中の二時に読めないファックスが来たら、それは呪いのファックスだ。最初の送信を受けとったあと、七夜のあいだ続いたら間違いない。最後の七夜めのファックスを受けとったら、次の日から同じ時間、同じ手順で、だれかにそのファックスを送らなければならない。もし送らなかったり、手順をひとつでも間違えれば、呪いが発動してあなたはしぬ。
一時期、ネット界隈で流行したチェーンメールのファックス版と考えればよい。そう考えると恐くないかもしれないが、ファックスから不気味な文字の羅列が書かれた紙が、音を立ててゆっくりと一行ずつ出てくるのは、ただただ恐怖でしかない。その紙を、恐いと思いながらも目で追ってしまう登場人物達を責める者はいないだろう。
そんな事件に文芸部員である木戸野亜紀が巻き込まれ、彼女を救うために空目を筆頭にして動いていく。
まず最初、実際に届いたファックスの文書を見て、空目は悪魔召喚の儀式の存在を告げる。一見すると適当な文章の羅列が、悪魔やエクソシストの伝承に繋がっていく。こじつけのように思えても、深夜に届くという事実や、その後次々と起こる怪事件が、彼の語る悪魔を裏付けていく。
しかし、空目はどこか違和感を覚えているらしい。
そもそも誰が彼女に呪いをかけようとしているのか? 彼女がそもそもファックスを持っていることを知らなければ、このようなことはできないはずだ。
それに木戸野亜紀に恨みを持っているにしたって、空目の語る知識は誰もが持っているものではない。相当に悪魔に関する知識を持っていなければ、こんなことはできない。
空目が語るに、七夜目までファックスを送り続けることで悪魔召喚の儀は完成となる。一日、二日でそこまで劇的な変化が起きるのだろうか?
そして七日目までファックスが送られてきてしまった時、一体なにが起こるのか?
実際に人が死ぬまで呪いが発展した時、空目にその事件を解決することはできるのだろうか。最後は熱い展開が待っていた。綺麗に構成され、恐怖と友情と熱量のバランスがいい作品だった。