工大生のメモ帳

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さくら荘のペットな彼女4 感想

【前:第三巻】【第一巻】【次:第五巻】
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※ネタバレをしないように書いています。

やりたいことは何ですか?

情報

作者:鴨志田一

イラスト:溝口ケージ

ざっくりあらすじ

学祭に向けて、さくら荘の豪華メンバーでゲームを作成することになった。しかし、その仕事がそう簡単にスケジュール通りに進むはずもなく。

感想などなど

リタという金髪美少女は、赤坂を好きになるのと同時に、絵を描くことが好きだったことを思い出して、絵描きとしての夢(と赤坂への恋心)を抱いて国へと帰っていった。その別れに際し、空田は椎名に抱きついて「行くな」と囁いたというのだから、ブログ主の脳内では勝手にエンドロールを流していた。

どんなに取り繕ったって、空田が椎名に向けた感情は――特別だった。

それに答えるような形で、椎名も意味深な言葉を呟き、第三巻は終了となった。

さて、第四巻のストーリーとしては『文化祭でのゲームのお披露目』と、『残りの文化祭を楽しむ』と、『文化祭を終えて戻っていく日常』の三部構成となっている。それら三部を通して、空田が椎名に対する ”ぎこちなさ” というものが一貫して存在する。

椎名もそれに合わせて、どこか奇妙な行動を取る。互いに影響し合っているということなのだろう。

それがきちんと言いたいことを伝え合っての結果であれば良いのだが、そう手放しで喜べない状況に変化していくのだから、物語は面白い。

 

冒頭でも書いた通り、物語は大まかに三部構成。まず最初は『文化祭でのゲームのお披露目』である。さくら荘のメンバーを上手い具合に操って、仕事を進めさせる空田という人間は、プロデューサーのような類いに向いているのかもしれない。

毎月のように考えて、企画書を作成していた経験もまた、この場では生かされたという可能性も無きにしも非ず。ゲームはギリギリ……ほんっとうにギリギリにマスターアップ。赤坂による宣伝や、先輩柄のネームバリューのおかげで、ゲームのお披露目には大勢の人達が駆けつける。

改めて、先輩方の凄さというものに気付かされる。ここはそういう冒頭だろう。

第二部『残りの文化祭を楽しむ』では、クラスでの出し物などに、それぞれが参戦していく。ちなみに空田や七海、赤坂のいるクラスではチョコバナナを販売していて、椎名の美術クラスではコスプレしたり喫茶したりという色々をごちゃ混ぜにした滅茶苦茶空間を作り上げている。

さて、七海と椎名と甘酸っぱい青春模様を繰り広げていた空田であったが、美咲先輩と仁先輩はかなり刺激的な恋愛を見せてくれる。これまでも十分過ぎる程に過激であったアプローチが、さらなる過激の一途を辿ることを、この時まで誰にも予想することはできなかったであろう。

これまでの彼女は全くもって本気ではなかったのである。

 

ラストスパート第三部『文化祭を終えて戻っていく日常』では、文化祭の熱というものが段々と冷めていきながら、日常へと戻っていくさくら荘の様子が描かれていく。椎名は抱えた連載のための仕事に明け暮れ……つつも、空田に「料理を作りたい」というお願いをし始める。

掃除すらままならない彼女が、料理をしようとしてできるはずもない。最悪の事態として、彼女の大切な指に傷がついてしまった。漫画家にとっては致命傷。空田は椎名を責めた。

「自覚を持て」「絵を描いていろ」と。

夢を叶えたというのに。出会った頃は、絵を描く以外には意識を向けようトすらしなかった癖に。どうして今になって絵以外のことに興味を持ってやろうとするのか? 空田には理解できずにいる。

第一部、第二部の文化祭での経験は、椎名のみならず登場人物全員の関係性を大きく変えるイベントだったと、これまでの日常と、この部で描かれていく日常を比べてみると分かってしまう。

その変化というものが、この第四巻における醍醐味なのだろう。

そして、この変化によって生まれる物語は、ハッピーエンドに向かっているのか? とふと考えてしまう。どうかみんなに幸せなエンドを。

その答えは神のみぞ知る。

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