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【漫画】さんかく窓の外側は夜1 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

霊感サスペンス・ミステリ

情報

作者:ヤマシタトモコ

試し読み:さんかく窓の外側は夜 1

ざっくりあらすじ

昔から霊が見えていた書店員の三角は、除霊師の冷川にその才覚を認められ、勝手に相棒として契約させられてしまう。空気の読めない彼と共に、霊が関わる事件の解決に乗り出していく、そんなある日、殺人事件の死体捜索を刑事から依頼される。

感想などなど

残念なことと言うべきか、はたまた幸運とでも喜ぶべきか?

自分は霊的な存在を見たことがない。霊的な不思議な現象に遭遇したこともない。恐い映画や小説を読むのは好きなのだが、結局は霊よりも人が恐いという、ゾンビ映画のありきたりな展開と同じ感想を抱いている。

そんな霊と日常的に接している者達が、霊を払う……というよりはぶん投げることで生計を立てているサスペンスホラーミステリーが本作である。

ミステリーと銘打ってはみたものの、霊という存在に対して理屈はあまり通用しない。そもそも存在が一般人には見えず、作中にもある通り、霊的な存在かと思えばストーカーだったという事件もある。霊的な事件の裏に、人が絡んで呪いを掛けていたという事案も珍しくなかった。

結局、人が恐いのか……いや、やっぱり霊が恐い。でも、やっぱり人か……? そんな二転三転する展開を見せる「さんかく窓の外側は夜」という独特なネーミングの漫画の感想を書いていこうと思う。

 

主人公である三角は、メガネをかけた長身の青年だ。メガネをかけているとは言ったものの、 ”何か” を注意深く見る必要に迫られた場合には、そのメガネを外している。その ”何か” というのは、言わずもがな霊体のことである。

彼の芳しくない視力では、周囲がぼやけて見えた。だが、霊だけは、その視力とは関係なくはっきりと見えるのだ。漫画の1ページ目が分かりやすい。メガネを外した主人公のぼやけた視界の中で、一人の女性だけが、はっきりとした濃い線で描かれている。その女性こそが霊である。

メガネ越しに見ただけでは霊と人の境界が分からないくらい、はっきりと彼には霊が見えている。しかも昼とか夜とか人混みとか関係なく、どこかに霊が紛れている。正しく、霊が日常にいるということだ。

そんな彼の前に突如として現れた男・冷川理人は、その霊がはっきりと見える才能を知り、物件鑑定・特殊清掃という名の除霊を請け負うCOOLEANの従業員として引き入れた。

この除霊方法がまた独特なのだ。

やり方としては冷川が三角の魂の核心に触れる。その魂の核心越しに、払いたい霊を掴んで投げ飛ばすというもの。この時に三角と冷川が覚える感覚を、それぞれこのように語っている。

「気持ちいいはず 私はすごくいい」「あー きみ本当……すごいですよ」

「む む 夢精に似てる……」「除霊ってこんなにエロくていいの?」「き、気持ちよかっ……た」

そういった除霊シーンだけ切り取れば、長身の優男二人によるそっち系の漫画に見えなくもない。コマのどこかに写っている霊を許容できればの話だが。まぁ、大抵の場合は無視できないくらいデカデカと自己主張してくるのだが。

除霊の前には自家発電やお酒、お肉を控えるのだという。除霊でこんだけ気持ちよくなれるなら、そういった欲求の捌け口は必要ないのかもしれない。

 

そういった除霊の仕事の合間に舞い込んで来たのが、まさかの警察からの死体捜索の依頼だ。

一年ほど前に発生した三人のバラバラ殺人事件。犯人はすでに捕まっていた。三人の誰とも面識のない、冴えないコンビニ店員だった。自宅の風呂場で作業しており、証拠だけはずらりと揃っており、自供もしている。だが動機だけは釈然としない。

しかもバラバラにした部品の中で見つかっていないもの――合わせてちょうど一人分の遺体が、一年も見つかっていないというのだから、何とも気味の悪く、もやもやばかりが残る事件だ。その見つかっていない遺体を捜して欲しいというのが、刑事・半澤日路輝からの依頼だった。

こんなの除霊じゃねーじゃんと嫌がる三角に対し、警察に媚びを売っておくことは悪くないと語る冷川。遺体捜索にも乗り気であって、三角もその遺体を意外にもあっさりと見つけてしまう。

それくらい彼の見える力は凄まじいのか、はたまた死んだ人間の呪いによる作用か。

そして見つけた遺体は、バラバラにされた部品が組み合わされて、それが繋ぎ合わせられていた。そのおぞましさ、理不尽さは吐き気を催すほどの気色悪さだ。それを見て冷静に分析し、それを道具と言い切った冷川は、正気か、狂気か。

その真相は読み進めないと分からない。

 

日浦英莉可。

この名前が作中で何度も登場する。不吉な呪いの周囲には、この名前が登場することが多いのだという。冷川以外にも、霊的な存在を知覚している占い師・迎系多も、彼女の呪いの被害者と思われる人物に遭遇したことがあると語った。

「呪いらしきモンがこう体中に食い込んでる感じ」

「……呪いを引っぺがしても放っといても死ぬと思ったから諦めた」

彼女の呪いは相当強力で、しかも比較的ありふれている。

そんな呪いの描き方、心を抉り、相手を狂わせていく演出が上手い。顔にぽっかりと穴が空いた人間、複数人のバラバラ死体の一部を繋ぎ合わせて新しい一人分の死体を作る、机にぽっかりと空いた穴……漫画だからこそできる表現手法も使われており、とても見応えがある。

日常と延長線上にある霊と呪い。それを追いかける二人の青年のミステリーはまだ始まったばかりだ。

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