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ログ・ホライズン10 ノウアスフィアの開墾 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

ゲームみたいな異世界

情報

作者:橙乃ままれ

イラスト:ハラカズヒロ

試し読み:ログ・ホライズン 10 ノウアスフィアの開墾

ざっくりあらすじ

自らを〈航海種〉と呼び、シロエの妹であると語るロエ2から手紙が届いた。〈典災〉というモンスターが大地人を襲っていた。アキバの街に激しい貧富の差が生まれていた。次々と考えるべき問題が舞い込む中、次へと繋げていくために「月」との交信を試みるシロエ達は、大規模戦闘シブヤダンジョンに挑むこととなる。

感想などなど

第十巻は、謎の手紙で始まる。いきなり自分の妹を名乗る知らない女性から手紙が来たとして、冷静な気持ちで読むことができる自信がない。親の不貞を疑うか、送り先の不備を疑うか。そこに育ちの差が出てくる気がする。「姉でもある」と言われてしまえば、さらに困惑しかない。名前がロエ2という、カタカナ+数字という斬新さも奇怪さを際立たせる。

とはいっても、シロエ達がいる空間は不思議しかないゲームの中の世界である。この世界を巡る金を管理するダンジョン最深部、プレイヤーキルができないようにプレイヤーよりも強い甲冑を着た大地人の存在……ゲームならではのシステムが上手い具合に落とし込まれた世界では、自分の妹が知らぬ間に出来ていてもおかしくないのかもしれない。

その手紙を読み込んでみると、ロエ2は『物理的な形状や形状データを持たない種族』なのだという。なるほど、分からん。

続いて『私の現在の肉体は、月にて保管されているあなたのものであり』と書かれている。ここでいうあなたが指すのは、手紙の宛先であるシロエに他ならないであろう。ここで一つの衝撃に襲われる。

月? シロエの肉体? んんん?

頭を抱えるシロエの脳裏には、アキバの街で起こっている諸問題が浮かんでは消えているのだろう。

 

アキバの街の問題は、これまで一通り解決したではないか。

という考えは甘い。問題は解決した傍から発生するのだ。

例えば。

貧富の差がアキバの街では広がりつつあった。第二巻くらいで、初心者をこき使って搾取していたギルドを覚えているだろうか。大地人を狩って奴隷のように扱っていたギルドを覚えているだろうか。

アレらは全て解体し、そういったギルドは活動できないクリーンな街になっている。さらに味がしない食事問題も解消され、現代であったようなアイテムが次々と開発されていく昨今。人々の暮らしは改善の一途を辿り、日本で暮らしていた頃と変わりない不自由ない生活を送れているといっても言い過ぎではないだろう。

だが、その不自由ない生活は金がないとできないというのは、現代の貨幣経済と変わりない。働かない者は食うべからず精神は、ゲームの中でも根付いている。

手早く手広く開発をした者、稼ぎ場で物資や金を稼ぎまくった者、そういった者は裕福な生活を送っている。一方、そういった波に乗り遅れた者は貧乏なその日暮らしを送っていた。

なんということだろう、ゲームの中でもこういった差が生まれるとは。

……いや、これはゲームではない。もう一つ確かにある現実であった。

 

そんな風にアキバの街は大変な問題に直面している一方、大地人たちも大変な目に遭っていた。〈典災〉と呼ばれるモンスターの襲来である。しかもただのモンスターではない。

蛾のような姿をし、大量の群れをなして街の上を飛んでくる。そして光の鱗粉を降り注ぎ、それを浴びた者達を眠りにつかせる。無論、大地人は意識を失い、目覚めることはなかった。

冒険者たちは立ちくらみ程度で済んだ。が、その巨大な蛾は見た目がよろしくない。そして街に真っ直ぐ飛翔してくるというのも、大地人を狙っているという特性があることが想定された。

しかも冒険者の中にも倒れてしまう者が現れた。

そのモンスターの名前は〈常蛾〉。以前は存在しなかったはずである。

そこで脳裏に浮かんでくるのは「ノウアスフィアの開墾」。

これはシロエ達が遊んでいたMMORPG「エルダー・テイル」の12番目のアップデート、これを適応させた時、シロエ達はこの世界に飛ばされた。この〈常蛾〉は、このアップデートにより追加されるはずだったモンスターなのではないか?

……まぁ、それは一先ず置いておこう。

どうやらこの〈常蛾〉。大地人や冒険者のMPを喰らっているらしい。つまりはMP枯渇故の昏睡ということだ。この眠りから醒める手段を、シロエ達は分からずにいた。〈常蛾〉が襲来してくるのは月が昇った頃。それまでに何とかしなくては、このままでは全員が眠ってしまう。

そんな中、〈常蛾〉の巣が見つかった。その場所はシブヤ。新たなダンジョンとして、シロエたちの前に立ち塞がった。

ここから大規模戦闘シブヤダンジョンでの死闘が始まる。

 

これまで長らく、この世界で大地人と共に生きていく術を模索し、よりよい関係を築いてきた。つまりはこの世界で生きていくという覚悟を決めていた。

だが、そんな彼らは次に、元の世界へと戻るための覚悟も決めなくてはいけなくなってきた。元の世界へ戻るか、世界で生きていくか。その二択を迫られた時、シロエ達はどちらを選ぶのだろう。

そんな疑問の答えは、本作を読み進めて欲しい。彼らはとても強欲なのだ、ということだけ言っておこう。

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