工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

アサシンズプライド6 暗殺教師と夜界航路 感想

【前:第五巻】【第一巻】【次:第七巻
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

知る覚悟はできたか?

情報

作者:天城ケイ

イラスト:ニノモトニノ

ざっくりあらすじ 

夏休み、少女達の水着姿がまぶしいプライベートビーチ。しかし、彼らの目的地はそこではなく、その先にある夜界からの進行を防ぐために設けられた『城』だった。何者かに占拠されたその『城』を奪還すべく集められた身分階級の頂点に立つ者達……その任務は苛烈を極めた。

感想などなど

さて聖フリーデスウィーデ女学院も夏休みへと突入。平和なビーチにて、それはそれは美しい水着姿の女性達が楽しく戯れる冒頭……あぁ、三百ページずっとこれでも良いよ……と考えるのも束の間、クーファを含めた精鋭達が夜界へと乗り込んでいく。

本作の戦いを一言で言うなれば『総力戦』だろうか。

上位位階の面々、竜騎士や魔騎士、聖騎士達の家長達が勢揃いし、巨大な生物が跋扈するという夜界へと、大きな気球へと乗って向かって行く序盤はワクワクが止まらない。「どんな敵がいるのだろう?」「精鋭達が苦労するような戦いが待っているのだろう?」と妄想が膨らむ。

こういった予想を決して裏切らず、細部にわたって作り込まれた設定が「これでもかっ!」と書き込まれた物語……さっそく見ていこう。

 

上位位階であるアンジェル家にシグザール家にラ・モール家、《一代侯爵》のロゼッティにクーファなど壮々たる面子が集められた。理由はあらすじにて示した通り、夜界からの敵の侵攻を食い止めるために作られた『城』が何者かに占拠されたための調査・奪還任務である。

夜界にほど近いということもあり、当たり前ではあるがマナ能力者しか侵入不可。近づくことすら困難な上、占拠ともなると目的も実力も測定不能。ともなると相当な実力者を集めるしかない。それに夜界からの敵の侵攻を食い止めている『城』が、もしもなくなりでもしようものなら、フランドールがこのまま平穏でいられる保証はないため、失敗など絶対に許されない。

……ふむ、なるほど。実力者が集められたことにも納得がいく。

しかし、敵はそういった《上位位階》の面々を集めるために、このような策略をとったことなど誰も想像だにしなかったようだ。

 

さて、一連の事件の黒幕を紹介しよう。

《女王》と呼ばれるレイシー=ラ・モール……名前の通り、ラ・モール家の御先祖様であり、三百年前という大昔に、若くして亡くなった娘を生き返らせるために夜界へと旅立ち二度と戻ってこなかった騎士なのだという。

ここで考えるべきは『三百年もどうやって生き残った?』という点と、『何のために今更現れたのか?』という計二点だろうか。

まず一つ目『三百年もどうやって生き残った?』という点について。簡潔に言ってしまえば不老不死になる術を見つけてしまったようである。ただその方法を説明するためには『錬金術』という新たな概念についての理解と、ちょっとしたネタバレをしなければいけないため、ここでは説明を省かせていただきたい。

一番問題視すべきは『何のために今更現れたのか?』という点である。これもまた簡潔に言ってしまうと、娘を生き返らせるために《上位位階》の血を引き継いだ肉体と血が必要だと分かってしまったためである。つまり、任務を達成させるために万全を期して集められた《上位位階》は、《女王》にとっては飛んで火に入る夏の虫という訳だ。

しかし、そうはいっても《上位位階》。実力は相当なもの。

「《女王》を倒せばいいやんけ!」とお思いの方も多いことだろう。残念ながらそう簡単ではない。彼女が無策で待ち受けていたはずなどあり得ないのだ。なにせ三百年、途方もない準備期間が彼女にはあったのだ。

ラ・モール家の騎士として持つ戦闘力もさることながら、『城』の各所に散りばめられた作られた兵隊達に最強とも呼ぶべき人造人間、そして心臓を抜き取られ人質とされてしまったエリーゼ様とサラシャ様……用意された罠の数まで挙げていくとキリがない。

勝ち目はあるのか? クーファも苦戦を強いられる。

「《吸血鬼》としての力を見せてやれ!」とお思いの方、少し待っていただきたい。彼の周囲には発言力を持つ《上位位階》の面々が勢揃い。彼らにランカンスロープとしての姿をさらそうものなら、彼も討伐対象リストに名を連ねることになるだろう。また、そのことを知っていたメリダ様もただではすまない。

 

これまで何度か《上位位階》の面々が戦っているシーンは見ることができた。しかし、おそらくそれらは全力ではなかったのだろう。今回、ようやく本気というものを見ることができた気がする。

そしてこれまで漠然としか描かれていなかったそれぞれの能力というものがはっきりと描かれていた。設定大好きマンとしては有り難い限りである。

【前:第五巻】【第一巻】【次:第七巻
作品リスト