まず最初に
中国に降り立ち、何やら様子のおかしいライノに追いかけ回され、始まるアニマ同士の最終決戦。ザイについての情報が大分明かされ、超重要な伏線が最終話に明かされるという怒濤の展開。二期フラグ……な訳ないですよね。悲しいなぁ。
原作は無事完結いたしました。ザイの正体を知り、目的を知り、滅ぼし方を知り……自らの運命と最後の最後まであがいた慧と全てのアニマ達の物語は終わり、少しばかりの喪失感に襲われながら、この記事を書いております。
最後の締め、第十二話の感想・解説を書いていきましょう。
用語・人物解説
鳴谷 慧
- 銃撃を避けながら、冷静にグリペンを助けるために走った男の中の男。
- 彼は今後もグリペンと共に戦うこととなる。
- 相当鍛えられ、がたいが良くなっていることがアニメ全体を通して伺える。
ライノ
- 米軍によって、プログラムを用いて性格が弄られていた。彼女の本当の性格は、もう誰も知ることはできない。
- 彼女にとって人類は特段守りたい存在ではなかったのだろうか……悲しい。
- ザイの素材で作られたアニマは全て、彼女と同じ運命を辿る可能性があることは覚えておかなければいけない。
グリペン
- 未来のために戦うことを誓ったアニマ。
- 今後も慧と共にザイと戦うことを誓い、彼の翼となりたいと願っている。
- 可愛い。
ザイ
- ザイの本来(?)の姿。ガラスのようである。
- これまで時折聞こえた砂やガラスの音の正体は、ザイが繁殖(?)している音だった。
- 第五~八話にて、魚釣島を占拠していたザイの色と同じ。また、空戦で戦っているザイも同様の色である。
注目すべきポイント
朝
朝、目を覚ました慧は奇妙な音がどこからともなく聞こえてきてきていることに気がつく。原作では、一度グリペンと共に外に出た後、睡魔に沈もうとしているグリペンを抱えて戻り、奇妙な音に気がつき警戒するという流れになっている。
シャリッ という正体不明の音に怯えながら、扉外の気配に気付く慧。アニメでは素手の状態で外に出ているが、原作ではスタンドランプを武器として持って出ている。
そして、外にいたのは――
何かおかしいライノ
ライノのどこか影を感じる表情や演出が意味をなしてきます。結論から言ってしまえば、『彼女はザイに飲み込まれてしまったのです』。そのことを踏まえて、彼女の行動などを理解していきましょう。
- 『空港内全てを探して見つからなかった燃料を見つけてきた』
アニメで描かれているタンクローリーを見る限り、かなりの大きさであることが分かります。また、『中华航油(中国航空オイル)』と書かれているので、見たけど気付かなかったとも考えられません。三人で空港中を探したとされる昨日に見つからなかったということは、やはりおかしいです。
その理由(「どこにあったのか?」)を尋ねられたライノは「そういうのはね、どうにでもなっちゃうんだよ」と答え、自身のドーターを修復した(アニメオリジナル演出)。この世界ではライノ(ザイ)の思ったようにどうとでもなってしまうようだ。
- 『銃を突きつけて脅迫』
ライノの要求は「グリペン、ライノ、慧の三人で暮らすこと」である。銃を突きつけてはいるものの、まだ話し合いという穏便(?)な方法を取ろうとしていることも伺える。
また、このシーンを見た(読んだ)印象は原作とアニメで少しばかり変わってくるように思う。アニメでは『ライノが人を憎んでいる』ように、原作では『人に対して無関心』のように感じられる(あくまで自分の主観だが)。
この件に関して、アニメでは省略された原作のシーンを用いて言及しよう。まず歓迎パーティを楽しんでいた理由を、ライノは慧に訊ねられ「アニマに会えたから」と答えている。さらに「人と違って裏表のないから、歩み寄りやすい」と続けている。彼女の発言には「人を守る」というアニマとしては大切な意思が、著しく欠如していることが分かって貰えるだろうか。
人である慧を仲間に引き入れようとしている理由はおそらく、グリペンと共に行動して戦っている彼をアニマと重ねて考えたためだろう。彼女ははっきりと「人じゃないみたい」と慧に向かって言っている。
グリペンの元へ向かう慧
ライノが油断したすきにホースを投げつけて牽制、グリペンの元へ急ぐ慧。ザイ側についたライノを見て、グリペンと共に逃げ出すことを考えての行動である。道中、壁や床からガラスのような物(ザイ)が生えてきて、増殖していることが分かる。
魚釣島があっという間にザイに占拠された理由もこれで分かるだろう。何かしら準備や制限があるのかもしれないが、何もない場所から勝手に生えてきて増えてくるのだから、気付くことは難しい。
そんなザイに道を制限されつつ、銃撃を避けながらグリペンのいる部屋へ辿り付く。オートロックで閉じられた扉を壊し、ザイに囲われたグリペンを発見する。
グリペンの回想
不思議空間(アンフィジカルレイヤー)内でこれまでの記憶を見ているグリペン。アニメオリジナル展開である。原作最終回まで見た上で見ると、全てに納得がいくシーンとなっている。
耐G服を着た慧と一緒に空を飛ぶグリペン、防空壕跡で慧と言葉を交わすグリペン、ラーメンを一緒に食べるグリペン、編み物をするグリペン、口づけを交わすグリペン……それら全てが慧に関する記憶となっている。
そして最後、第二話にて呑んだことがないはずなのに呑んだ記憶があった『ヨーグルト』を渡してくる『大人びた慧らしき男』の記憶が。
ここで思い出して欲しいのは、『アンフィジカルレイヤー内でしかグリペンは記憶を取り戻せない』という情報である……ここで語りすぎても原作を読む楽しみがなくなるので、ここまでにしておこう。
この一連の演出は、アンフィジカルレイヤーの最深部までグリペンが辿りつきつつあったこと、を示しているのだと思われる。そこを慧による声かけによって救われ、目を醒ました。ここから二人による脱出劇が幕を開ける。
追いかけて来るライノ(=ザイ)と洗脳されるグリペン
中国から逃げ出そうとするグリペン達を、追いかけるザイとライノ。ミサイルだけでなく、姑息な精神攻撃を仕掛けてくる。目を赤くして、ザイに則られそうになっている彼女を救ったのは、パートナーであり、これまで一緒に戦ってきた慧だった。
「そもそも誰のせいで俺が空を飛ぶことになったと思ってるんだ。どこかのポンコツ『みんなの役に立ちたい』、『人間を守りたい』とか言うからだろう。」
このグリペンに対する慧の台詞こそが、ライノとグリペンの大きな差だと言える。ではその差はどこで生まれたか? 彼女はライノに対して、
「私は慧と飛ぶために産まれてきた」
と告げている。アンフィジカルレイヤーで見た彼女の記憶はほとんどが慧に関するものだった。人につくか、ザイにつくか、選択を迫られたグリペンは人を選択し、迫ってくるザイと戦うこととなる。
ライノ VS グリペン
戦闘機の性能としては勝ち目がない訳ではない。問題は、
- 一つ目『位置関係』
逃げる側のグリペンと、追いかける側のライノの位置関係は、自然とグリペンが後ろを取られる形となる。さらに多数のザイが攻めてきているため、同じ場所に留まって背中を取り合うという戦いは行えない。
最高速で逃げながらライノを倒すという作戦が必要となる。
- 二つ目『武器の少なさ』
ライノは望むだけで傷を修復できた。ならばミサイルの補充なども行えただろう。
一方グリペンに残された武器は『ミサイル二つと機関砲弾』のみ。ミサイルを当てるためには距離を近づける必要があるが、誘導ミサイルを防ぐためのフレアがなく、背後を取られているため、ほぼ一方的に狙われて落とされることとなる。機関砲弾も同様である。
そんな状況で慧が考えた作戦は、
- 急上昇し『グリペンの速度が落ちる』という形で、自然と距離を詰める。
- ミサイルを自然落下させ、ライノに隙を生じさせる。
- ロックオンしてミサイルを当てる。
慧は作戦を成功させ、ライノを落としアンフィジカルレイヤーから脱出させることに成功した。
作戦は……
元の世界に戻ると、作戦はまだ遂行中であり、時間も三時間程度しか経ってないようである。久々のファントムにイーグル、秘密兵器バイパーゼロも出動という楽しい状況である。
ここでアンフィジカルレイヤー内では時間の流れがめちゃくちゃであることが判明する。また原作の後々話で場所(空間の繋がり)も複雑になっていることが判明する。
病院にて
入院している慧の元にやって来た八代通遙。彼から『ライノはプログラムで人格を弄られていた』ことが明かされる。言うならば、無理矢理に人類のために戦うように強制されていたのである。兵器は兵器として扱う合理主義のアメリカらしいとも言える。
そんなアメリカの行動に対して、遙は苦言を呈し、アニマに「人間を守りたい」「人間を好きになって貰う」ことが必要だと、彼は持論を展開する。
『プログラムで強制された』ライノはザイに取り込まれ、『慧のために飛びたい』グリペンはザイに取り込まれなかった。分かりやすい対比だ。絆とは非科学的かも知れないが、何よりも大切なものなのかもしれない。
屋上にて、改めてパートナーとして互いの意思を固め合った慧とグリペン。二人の戦いはこの先も続いていく。
最後に
ガーリー・エアフォースはアニメ、原作共に完結しました。二人の戦いの結末を見た自分としては嬉しいシーンが多かったアニメでした。前半は不安に覚えることが多いアニメ化でしたが、全体的に見れば、動くシーンが見たかったキャラやシーンを見ることができたので良かったと思います。空戦シーンの作画も迫力がありました。
しかし、アニメを見た人と原作を読んだ人でかなり印象が変わる作品だなと思います。例えば明華に対するイメージなんて、全く違うと思います。是非とも原作も読んで欲しいなと思います。理系の作家(「なれる!SE」という小説を書いています)ということもあり、理論立てて丁寧に説明された設定や物語……まだ見てみたいと思える作品でした。
「ガーリー・エアフォース」第一巻の感想はこちら
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