まず最初に
「ガーリー・エアフォース」第一話が放映され、”グリペン” がトレンドに入っていたらしい……おかしい、まだまともに言葉を発していないはずなのだが……。まぁ、可愛いから仕方ないか。
原作ファンとしては「まだ何とも言えない」というのが正直なところだ。
戦闘シーンの作画はすごく良いのに、日常シーンの作画が安定していない。まだ物語の展開としては、日常が多めになるはずなのだから、少しばかり不安だ。戦闘シーンで燃え尽きたりしないで貰いたい。
そして、ストーリーはどこまでやるのだろうか?
キャストを見る限り、登場するアニマは「グリペン」「イーグル」「ファントム」の三人。一巻ごとに新しいアニマが一人登場するので(基本的に)、単純計算だと三巻で終了ということになる。個人的には四巻の内容をアニメで見たかったのだが、その夢は叶いそうにない。
それはさておき。
友人に「この作品はハーレム物なのか?」と聞かれた。
結論から言ってしまえば、「主人公は一途だし、登場するヒロイン全員が主人公を好きになるような展開はない」。主人公に対して抱く感情としては信頼どまりが多く、主人公ではない別の男が好きなアニマもいるし、ストーリー上で死んでいくアニマも存在する。
セカイ系のSF作品として純粋に楽しんで貰えれば、と個人的に思う。
用語・人物解説
鳴谷 慧
- 父親の転勤の都合で、小学生の頃から9年間を中国で過ごす。
- 7歳の頃、母親に連れられ飛行機を操縦した。ただ乗ったのではない。”操縦した”。それ以来、飛行機に乗ることに憧れを抱くようになる。
- 父親は仕事で全世界を飛び回っており、今どこにいるんだか……。
宋 明華
- 生まれは神戸。貿易商の父が中華街で働いているときに産まれた。日本語が話せたため、中国に来てすぐの慧を助けて欲しいと、慧の父に頼まれた。どうやら彼女の両親と、慧の両親は知り合いであるらしい。
- そんな約束を未だに守り続けている律儀な奴……と慧は思っている。
- 結構モテるらしい。家事もできて、可愛いともなれば当然だろう。
八代通 遙
- ほぼ一人で、アニマを作り上げたヤベー奴。いわばグリペン達のお父さん。
- アニマ達に人格を与えたのも彼(正確に言うと奪わないでいる)。
- 研究だけでなく、指揮する立場としてもかなり優秀。ラノベにしては珍しく上層部が最善手を打ってくれるのは、個人的にかなり嬉しい。
グリペン
- 可愛いアニマ。
- 可愛いピンク髪。
- 可愛いメインヒロイン。
アニマ
- 強力な自動操縦装置を搭載した戦闘機(ドーター)を操縦するために作られた、自動操縦機構のことを指す。
- グリペンのように見た目は美しい少女であるが、端的に言ってしまえば人間ではない。作られた存在であり、人格もある程度弄れるらしい。成功するかは知らないが。
- 何故かは知らないが、みんな可愛い。
ザイ
- 突如として現れる飛行体。何故現れたのか? 何処からやって来るのか? など第一話の段階では分かっていない。原作ではこれらの謎は解き明かされ、最終章に突入している(2018/1/12 十巻最新刊時点)。
- 中国で最初に出現し、その後世界各地……特に人口が密集していて、軍隊のあるような場所を的確に狙ってきた。
- HiMATとEPCMという二つの武器に加え、膨大な数を有する。更には、こちらに合わせて進化もするらしい。
HiMAT
- Highly Maneuverable Aircraft Techology の略。
- もともとはアメリカの実験機で使われていた用語であり、有人では実現できない動きを可能にした高機動性能のこと。
- パイロットの耐えられる荷重9Gを、軽々と上回る急旋回・急加速を実現している。
EPCM
- Electronic and Perceptnal Counter Measures の略。
- 戦闘機内の機器(例えばGPSなど)を狂わせる怪電波のようなもの。これのせいで無人機も役に立たない。
- ヒトの感覚さえも狂わせる。だからこそ、有人機が機器を使わず戦おうとしても無意味。
注目すべきポイント
船でザイに襲われる冒頭
中国でザイの襲撃を受けた慧と明華は、日本行きのタンカーに乗り込み、逃げ出すことになる。そこに突如として現れたザイ数機。それに対抗するために戦闘機がやって来るが呆気なくやられていく。……。
この辺り、原作とは少し違っている。
まず原作では戦闘機がやって来ることはなく、いきなりグリペンがやって来てザイを倒している。おそらく、HiMATやEPCMの説明をしやすくするために犠牲になって貰ったのだろう。急降下して水面スレスレを飛行するシーンや、直撃するはずのミサイルがフラフラと落ちていくシーンなどが分かりやすい。
次に、原作第一巻冒頭のシーン……ザイが一番最初に登場するシーンが省かれて説明不足気味になっている。ストーリーを語る上で重要であり、精神的ショックも大きいシーンなので、おそらく二話以降に出てくると思うのだが。
震える明華の手
ザイに攻撃されている最中、明華に「慧は絶対あたしが守るから」と慧の手を握るシーンで、明華の手が震えている。
かなり怖いはずなのに、慧のために勇気を振り絞ったのだろう。それに気がついた慧も、黙って彼女に従っている。明華の性格が出ている良いシーンだった。
初めてのキス
ザイを落とした紅い戦闘機が落下し、慧が泳いで助けに行くと、コックピットが開かれ、戦闘機には似つかわしくない美しい少女が現れる。……。
グリペンと慧の出会いのシーンだ。唐突なキスシーンには驚かされた人もいるだろう。かく言う自分も原作を読んだときは、何が何だか分からなかった。
そしてキスをした後、グリペンは意味深な言葉を残している。原作通りならば……
「ノヴァ(新たな)……エラ(時代を)」
……この辺りの伏線がアニメで回収されることはないだろう。是非とも原作を読んで貰いたい。
まともに動けないグリペン
拉致された慧の前に現れる八代通は、グリペンが正常に動けるように協力して欲しいと頼まれる。……。
アニマがドーターを動かすためには、それぞれの電波が同調する必要がある。もう少しかみ砕くと、アニマとドーターの意思や動きが一体化する必要がある……ということだ。この同調が、グリペンの場合上手くいっていないらしい。
その原因が分かっておらず、困っていた八代通の前に現れたのが、もう動けないはずのグリペンの前に颯爽と現れ(アニメ冒頭、グリペンが海に落ちた時)、再起動させてしまった(あげくキスまでした)鳴谷慧である。彼が何かしらの鍵を握っていることは間違いない。
八代通からしてみれば、慧は救世主のようなものなのだ。このまま慧が現れなければ、まともに戦うことのできないグリペンは、上層部の命令で処分されるところだった。娘のように大切にしているグリペンを失わずに済んだのは、慧のおかげなのである。
最後に
作画……本当に頑張って欲しい。空戦シーンはかなり満足なので、当分続く日常をしっかりと描いて貰いたい。
この作品の魅力の一つは、慧の成長だろう。それを示す一つの要素として、幼馴染みの明華の存在が大きい。「私が守ってあげる」と口にする彼女との関係性の変遷に注目してみると面白いかも知れない。
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